・《優しい先輩はワケ有りですか!?》- 4.5 -


「……篤志あつし、野球部の件だが…。」


「財団か…何か動きがあったのか?」


「……隠蔽された暴行事件、部員が何人か先輩に暴力を振るわれてやめたってやつ。」


「ああ、犯人に目星は付いてるぞ。」


「……その犯人が、確定した。」


「野球部部長、2年1組の伴野ばんの しげるで当たりか?」


「……なんだ、知っていたのか?」


「まあ予想くらいならな。二年の学年次席で野球部の四番エース。実力至上主義の運動部で、二年生の部長。まあ、うちのセンコー達が持ち上げてるやつらの一人だ。」


「……暴行の内容は、一年同士に殴り合いを強制したり、服を脱がせて外にほうり投げたりといったものだったらしい。」


「あいつら…あのバカ校長に気に入られてるからって調子に乗りすぎだろう。校内じゃ散々持ち上げられて、あいつら天狗状態だ。あのいけ好かない鼻をへし折ってやりてえ…。」


「……証言した元野球部員によると、なんでも同じクラスの女子に告白して振られたとか何とか。」


「その腹いせに後輩いじめってか?随分腐ったスポーツマンシップだなあおい。」


「……伴野は噂じゃかなりやばい奴のようだ。昔付き合った女には振られた後執拗なまでにストーカー行為を繰り返していたようで…。」


「おいおいおい、完全にキメちゃってるじゃねえか、病院ぶち込めよ…。」


「……伴野といえば、大手建設会社『伴野グループ』の社長の一人息子。相当甘やかされて育ったようだな。校長にも、伴野グループの手が回ってるなんて噂がある。」


「理事長は何やってんだ?この学校のトップは理事長だろ?」


「……現状確認はできないが、こうしてみてみると理事長の耳まで届く前に校長が隠蔽してるとしか思えない。」


「なら、次に危ないのは伴野を振った女の子ってわけか?」


「……そうなるな。二年の情報屋に今聞いているところだ……おっ!?返信が…。」


「な…なあ財団、お前のほかに情報屋っているのか?てっきり俺はお前ひとりだと…。」


「……学年に一人はいる…。情報を確認するから待ってくれ…――――――ッ!?これは!?」


「なんだ…?何か分かったのか…?」


「……伴野を振った相手は……はあ…なんてこった…。」


「どれどれ…?白沢しらさわかなで…?随分と綺麗な娘だな…。っておい、どうした財団?顔色…ならぬ紙袋色が悪いぞ?」


「……物凄く…いやな予感がするのは…気のせいであってほしい…。」


「…?ま、まあとにかくだ。他になにか新しい情報はないか?」


「……ああ、一応伴野の家庭情報やもろもろなんだが…まあそこはあまり関係ないだろう…。特に報告はないな。」


「そうか。また何かあったら頼むな。俺はこの後、買い出しに行かないとならないから早めに帰るぞ。」


「……お前も大変だな。頑張れよ、篤志。」


「ああ、またな財団。」


「…………。この資料…。伴野という男も、なかなか難儀なんだな…。」

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