・《初のバイトは女装ですか!?》- 3.5 -


「そうそう、女子更衣室の前に表札がかかってるから、更衣室を使うときは『使用中』って書いてある面にひっくり返してから使うワンよ。誰か入ってきちゃうと困るワンからね。」


「わかりました。」


「そんなわけで、ここが女子更衣室だワン。」


「正直、人生で合法的に女子更衣室に入る機会があるなんて思いませんでしたよ…。」


「合法的、なのかはよくわからないワンね…。どちらかと言うとグレーゾーンだワン。」


「まあそりゃ嫌ですよね。自分たちが着替えてる場所に男が入るわけですし。」


「いや、別に嫌ってわけじゃないワン?のぞみんなら別にいいかなって…。」


「え、なにその反応。好きになっちゃう。」


「たしかにのぞみんは男の子だけど、かなり特殊だワン。私も、店長に言われるまで女の子にしか見えなかったし…。」


「そんなに僕、女顔ですかね?」


「バッチリ女の子だワン。髪型と制服でなんとか男の子として視認できるレベルだと思うワン。女装メイドでも、一線を張れる見た目だと思うワンよ?」


「先輩!僕、初めて褒められたのに嬉しくないです!」


「正直、立場を考えると同情するワン。」


「僕も、まさか知り合って二日目の先輩に同情されるとは思いませんでしたよ…。」


「どれをとっても神がかって不遇だから、さすがの私でも同情くらいするワン。のぞみんは『財団』さんが言ってたとおり、いろんな方向で運が悪すぎるワン。」


「僕はその『財団』にハメられて、ここにいる訳なんですけどね。」


「まあとりあえず、つべこべ言ってても始まらないワン!女は度胸!まずはメイド服に着替えてくることが君の初仕事だワン!」


「いや、男ですし・・・。まあたしかにその通りですよね。もう後戻りもできなさそうですし、ちゃちゃっと着替えてきます。」


「のぞみんのロッカーはたしか私のロッカーのとなりにあったハズだワン。あっ、もし私の服とか諸々が気になっても、盗んじゃダメだワン?お姉ちゃん、そんな子に育てた覚えはないワン!」


「いや盗まないし、盗むつもりも無いですよ!というか何で、先輩のロッカーを覗くことが確定してるんですか!?」


「いやほら、見た目は女の子でも、のぞみんは年頃の男の子だし?そりゃ女の子のロッカーがあったら、ついつい我慢出来なくなっちゃうかなー?って思っただけだワン。『うほぉ!かなで先輩の制服ー!うほぉ!』って。」


「なにそのモノマネ!?それ僕のつもりですか!?というか、普通に我慢できますし!自制心だってありますから!!……って、何その疑いの目!?さては信じてないですね!?」


「男はみんな、ケモノだワン!」


「先輩も今はケモノでしょ!!」


「その返しはちょっと上手いと思ってしまったワン…。」


「と、とにかく!これに着替えてくればいいんですね?」


「そうだワン。のぞみんの初メイド服姿、期待してるワン!」


「いや、期待してなくていいですから。じゃあさっさと行ってきます…。」


「行ってらっしゃいだワーン!」







柊木ひいらぎくんは…私には興味無いのかな?」(ボソッ)


「なんか言いましたかー?先輩?」


「な、なななななな、なんでもないワン!早く着替えてくるワン!」


「…?は、はぁ。分かりましたー。」


「こーゆー時だけは無駄に聞こえるのって反則だと思うワン…。」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る