・《メイド喫茶は採用ですか!?》- 6 -


「いろいろあったけど、柊木ひいらぎくん。君は有無も言わさず採用よ♡」


嬉しそうにつぶやく店長。

僕の履歴書に採用と書かれたスタンプを押し、大きなファイルにしまっていた。


「採用されたくない上に早く帰りたいです…。あと、有無も言わせてください!」


「まあまあそう言わないで。うちには優しい先輩も、かわいい女の子も沢山いるわよ?」


「優しさがあるのなら僕を女装させずに普通にキッチンをやらせて下さいよ!」


「無理よ♡」


「なんでだああああああああ!!!」


なんで!なんで僕がこんな目に!

それもこれも篤志と財団のせいだ!


「とりあえず今日のところは、制服を作るためのサイズを図ったら帰宅していいわよん♡いつからシフトは入れそうなの?」


もう僕は働くこと決定なのか…。

でも時給2000円プラス別途ボーナスだし、背に腹は変えれないよなぁ。

もうなんか、全部どうでもよくなってきた…。


「えっと明日からでも入ろうと思えば入れますよ。お金には困っていますし…。」


事実、お金には困っている。

妹に不自由をさせるわけにもいかないし、兄としてここは覚悟を決める時だ…(諦め)


「分かったわ。とりあえずウチもメイドには人手が足りてないの。すぐに働いてくれる女の子がいて嬉しいわぁ♡」


「いや、僕は男なんですけど。」



そんな馬鹿みたいなやりとりの後、全身のサイズを念入りに図られた僕は、何事もなく帰宅となった。

店長も思いのほか優しそうではあったが、メジャーを取り出してから計測までの間、異常なまでに鼻息が荒く身の危険を感じた。


制服はこれから店長が徹夜で作るそうだが、まさか全部オーダーメイドであのオッサンが作っているのか?それはそれですごいな…。


変な関心をしながら、僕はまた騒がしい秋葉原から帰路につくのだった。


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