・《メイド喫茶は採用ですか!?》- 4.5 -



「………もしもし?こちら財団。一応、のぞむは捕獲した後、店長に引き渡した。」


「もしもしじゃ。ご苦労じゃったの財団。見事な腕前じゃ。」


「……それにしても、まさか本当にメイドをやらされることになってるなんて、つくづくツイてないな望は…。」


「ワシの言った通りじゃったろ?正直、ワシらが直接手を下さぬとも、結果的に『モフィ☆』でメイドをやることになっていたじゃろうし」


「……その可能性は否定できない。ワタシの情報に偽りはなかった。『モフィ☆』の店長から、望の捕獲命令が通達されたのは驚いたが…。」


「ワシも正直、ここまで上手くノゾムが流されるとは思ってなかったのじゃ…。あやつはやはり、天性の才能があるのじゃろうな…。」


「……運が悪い上に、『男難の相』…。男の望にはつくづく要らないステータスばかりだ…。」


「もはやノゾムは奇跡じゃよ。そして一見女の子のようなあの見た目。家事と料理がピカイチで、まさに―――…。」


「……まさに、理想のメイド…。」


「そうじゃ。きっと彼なら、このメイド界を変える逸材になれる。ワシはそう信じておる。」


「………規模が大きくなっているぞ、教授。」


「夢は大きくじゃよ。して、報酬の件なのじゃが?」


「………ワタシの変声機付き紙袋の新調をお願いしたい。今回の報酬はそれだけでいい。」


「む?それだけで良いのか?それならすぐに作れるが…。」


「……残りの報酬は、望のメイド姿を見ること…。正直、ものすごく気になっている。」


「ノゾムの見た目じゃと、物凄く良く似合いそうじゃの…。ワシも楽しみで仕方がないわい。まあしかし、罪悪感もあるがのう…。」


「……罪悪感?」


「うむ、まあ結果が同じになるとはいえ、『モフィ☆』に行くよう勧めたのはワシじゃからのう。今度、ノゾムには何かさりげなくお礼をしなければなるまい。ワシはノゾムが嫌いなわけではないからのう。」


「……教授はどうして、そこまで『モフィ☆』を伸ばそうと思うんだ?」


「簡単じゃよ。あのお店は居心地がいい。店長がああ見えてしっかりしておるし、店員もみんな楽しそうに働いておる。だから応援したいし、もっと人気になってもらいたいのじゃ。」


「……そうか。まあワタシもあのお店は好きだから、分からなくもないな。」


「あそこはメイドとして働いてる人が楽しく働ける職場という、従業員に目を向けた職場じゃからな。お触り禁止や、メイドさんが不快に思うことはルール違反。そこら辺がしっかりしていることで、皆が笑顔で働けているのじゃ。」


「……望も馴染むだろうか?腐ってもあいつは男だし…。」


「そこは分からんが、なし崩し的にやりそうじゃな、あやつなら。」


「……たしかに。」


「んじゃ、そろそろ切るぞい?他に用事はないかの?」


「……あ、そういえば…。篤志が1年の女の子に呼び出されて…。」


「詳しく聞かせるのじゃ。今、毒殺の準備をしておく。」


「……教授が言うとリアリティが凄いな…。」



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