第四章、告白

「エマ?外人なんだ・・・そりゃどう見ても日本人じゃないしな。」

 誠は冷静に相手の容姿を分析した。髪の色も黒くなければむしろ薄い青と灰を混ぜた風であり顔立ちも西洋風に切れた趣がある。

「先日からお前の行動はずっと見ていた。単刀直入に言う、石狩誠。我らの機関へ来るのだ。」

「はあ?」

 誠には一言しか出せなかった。過程や主題諸々を放置しすぎた彼女の言い草は理解の範囲を逸脱して余りあったのだから。

「いいから、来るのだ。」

 剣を構えてる誠に躊躇いもせずつかつかと歩み寄るエマ、誠も日本語を話す人間とあって剣を振るうに至ることができなかった。するとエマは強引に彼の手首を掴み引っ張ろうとする。

「な、何すんだよ。」

 意味も分からずに相手のペースに引き込まれまいと抵抗する誠だったが、エマの腕力は華奢げな外見からは到底予想し辛い剛力を放ち、誠の抵抗など全く意に介さなかった。

「お、おい、エマ、待て!だからお前は言葉足らずなんだって。」

 誠の手を引くエマの腕を慌てて掴み押し留めたのは彼女と共に現れていた青年の方であった。やはり彼も目鼻立ちに洋風の香りを感じる。

「ふん・・・」

 青年に指摘を受けて彼女は誠の手を放した。危うく何処で何をされるか分かったものでない誠は解放に安堵したが、彼女に握られた手がじんじんとするので手首を振って痛みを緩和させようとする。

「いきなり手荒な真似をしてすまなかったな、誠。この子は腕は立つんだが、いかんせん人付き合いってのが苦手なんでいつもこうなんだ、許してくれ。」

 エマの代わりに前に出た青年は彼女とは打って変わって饒舌に、慣れた日本語を公開する。

「まあいいよ・・・だけどあんた達は何者なんだ?どう見てもこの辺の人間じゃあないけどさ。」

 観光名所の市場などなら多少は発見できるが、住宅が立ち並び地元住民以外には日本人すらほぼ目にしない誠宅の周辺となると外国人などは森の中で郵便ポストを見つける程の希少さを有する。

「ああ、俺達はちょっとした国際機関の回し者ってところかな。」

「怪しい言い方だな。」

 再度剣を構え直す誠、魔物ではないのだろうという予想だが怪しい人間であることは間違いない確証が彼を突き動かす。

「おいおい、取り敢えず剣は収めてくれよ、何もお前を取って食いに来たってわけじゃあないんだ。」

 青年は肩の高さまで手を上げ、欧米人によく見られる困ったときの降参の格好をしてみせた。

「じゃあ何だよ、夜中にこんな所に来て俺のことを知ってる外人が怪しいわけないだろ・・・って、この剣が見えるのか?」

 目前の男が、そして女もと思われるが彼らが自分の剣を視覚的に認識して物申していることに気付いた誠は改めて剣に問うた。

「おい、結界ってのはどうした?」

「無論、あの日高という娘にも見えぬ程度に強力なものを張っておるが、どうも彼奴らにはいくら強力な結界も効果はないようだな。」

 剣は彼らの特異性を肌で感じとっていた。

「そりゃあそうさ、なんたって俺達は同類なんだからな。」

 青年は暗がりに隠れていた左手の先を闇から取り出した。その中には天叢雲剣と同様に鮮やかな装飾が施された鞘に収められた剣が握りしめられている。装飾は世の文化圏を異にするように、天叢雲剣とはまるで様式の異なる、それより華美に近い型に見える。

「それは、これと同じようなものなのか、えっと、あ・・・名前なんだっけ?」

「おっと、俺はまだ名乗ってもいなかったな。俺の名はアーサー=マクスウェル、この聖剣エクスカリバーの『依代(フェオード)』さ。よろしくな、同類!」

 誠を同類と呼んだアーサーは、彼に右手を差し出し握手を求めてきた。その手を見た誠は当初怪しみはしたが、相手が人であり、結構なフランクさを醸していた安心感も手伝い、恐る恐るこちらからも右手を差し出し、握手を交わした。

「そうかそうか、よろしくな。」

「よ、よろしく。」

 握手一つで己をすべて受け入れられてもらえたと思い込んだようにアーサーはフランクさを増してくる。

「じゃあ何でも聞いてくれ、分からないことだらけだろ。勿論俺たちにも守秘義務ってのがはあるが、それ以外なら何でも答えてやるぞ。」

「アーサー、気が早い。」

「何言ってんだ、もう彼は同志だろ。ならば分からないことには答えてやるのが先輩としての道理ってものだぞ。いいな、エマ。」

「そういうものなの・・・?」

「ああ、そういうものだ。」

 勢いで捲し上げた感はあるが、アーサーが論破してこのまま会話は継続可能となった。

「とにかく、あんた達日本語が上手いよなあ。」

「ああ、なんいせ全世界を股にかける機関の人間だからな、語学は堪能なもんさ。俺は五ヶ国語くらいペラペラだぞ。」

「私は十二ヶ国語。」

「うっ・・・」

 歴然たる差をエマに晒されたアーサーは言葉に詰まった。

「エマ、この際だ少し黙っていようか。オホン!で、だ。俺達は同じく神器の依代となった君を迎えに来たってわけだ。さあ一緒に世界平和を目指そうじゃないか、同志よ!」

 同類呼ばわりが同志呼ばわりに進化していたが、誠の注意を引いたのはその点ではなかった。

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ。いきなり世界平和だなんて言われても何のことだよ。神器って、何?これの事か?」

 誠は天叢雲剣を翳して彼に問う。

「それに依代って何のことだよ?」

 矢継ぎ早に問われる誠の質問をアーサーは笑顔で迎えた。

「うんうん、もっともな質問ばかりだ。だいたい君はそのKUSANAGIから何も聞いてないのか?」

「え、クサナギって何だ?」

 聞いたこともない単語の波状攻撃に更に追い打ちをかけられた誠にはどれ一つとして意味が分からなかった。

「それ、それさ、君が持ってる剣だよ。ア、アマノム・・なんたらって言うんだろうけど、俺達の方ではもう一つの名、KUSANAGIってコードネームで呼んでるんだ。」

「お前、名前がいっぱいあるのか。」

「知らぬ、我がこの世にい出た時に持っていた名は『天叢雲剣』という名だけである。他の呼び名は人間が勝手に付けた名で我の預かり知ったことではない。」

 別に自分の意志で名付けられたものではない、と剣は矜持も高らかに己を主張した。

「まあ俺達も海に沈んで行方知れずのアンタに許可を貰ってるわけじゃないからな。そこはお互い様だ。」

「知らぬ、人が勝手に名を変えて呼び、人が勝手に我を海の底へと沈めたのだ。どちらと問えば責任の所在はお主達の側にあるのは明白であろう。」

「やれやれ、頭が硬そうな奴だと思っていたら案の定、お硬い奴だぜ。」

 アーサーとは違う、軽い乗りの声がどこかから聞こえた。何処からか?と辺りを見回す誠と、やはり声の出処を掴めていない天叢雲剣に向かって声は続けた。

「俺だよ俺、アーサーの手元の俺だよ。」

「手元って、剣か?また剣が喋るのか?」

「当たり前だっぜ。何も神器はそこのKUSANAGIだけじゃねえんだ。で、神器ってのは須らく口がきけるんだぜぃ。」

 語尾に音符でも付けたくなるような陽気な声の出処は確かにアーサーの持つエクスカリバーであった。

 エクスカリバー、それは西洋のアーサー王伝説に登場する聖剣であり異界で作られ眩い輝きを発すると言われる。但し今彼らと会話するエクスカリバーは鞘の中にあるせいか自発的に輝きを制御できるのか、夜の闇の中で自己を際立たせることもなく口だけを動かしている。

「神器ってのはな、俺達みたいに神の力を宿した神話上の武器の総称のことなんだぜ。」

「しっかしこの剣、神の力って割にはやけに軽い口叩くよなあ。」

「うむ・・・あまり我と同類に思われたくはない。」

 誠と天叢雲剣は息を合わせてエクスカリバーとやらに距離を置きたい心境に包まれた。

「シット!お前みたいな頭まで水に浸かって錆びついた奴も俺は同類と思われたくないぜ。」

「し、失敬な!我は錆など付いておらんわ。」

「ヘヘーッ、錆びてるんだって。錆びてるから硬い頭になって融通の一つも利かないんだな。無駄に年を取ったいい標本だっぜ。」

「巫山戯おって!許さんぞ!」

「おい、いい加減にしろ、話が先に進まん。」

「お前も売り言葉に買い言葉って何だよ、それが神様のすることか?」

 人間に注意を受けて二振りの神器は黙りこくった。人と同じで神器というものの中でも相性は存在するらしい。

「バカバカしい。」

「ぐっ。」

「ううっ。」

 エマにまで辛辣な一言を食らい、ますます神という名の沽券に関わる二振りであった。

「それでだな、神器についてはまあ分かったことだと思う。」

「ああ、この天叢雲剣やそのエクスカリバーみたいに『喋る武器』のことだな。」

「ああ。」

「ああ、っておいアーサー、もう少し言い方ってモノがあるんじゃないか?俺ってば仮にも相棒だぜ?」

「恥の上塗りにならない内に黙ってろ。」

 アーサーの一言にエクスカリバーは反論を封じられた。とにかく天叢雲剣の前では下手なことを言うと自分たちに自滅を誘発するだけでありそうな内は黙っておくのが得策であった。

「さて、改めて聞くが、KUSANAGIからは何か聞いていないのか?」

「まあ大昔に海の底に沈んでからずっと寝ていたこの国の宝剣だ。って、位かな。」

「ノーっ!」

 思わず天を仰いだアーサーは母国語で嘆いた。誠の有する情報量の極端な少なさに嘆きたくもなってしまったのだ。

「何も知らないのと同じじゃないか。それでよくKUSANAGIを扱えたもんだ。」

「いな、だってコイツを握ったら力が湧いてきて、知らなかった剣術の何たるかってのも頭に流れ込んできたからさ。」

「そ、そうか。それだけか。じゃあ、次は依代について教えておこう。」

「依代?」

「ああ、神器に認められてその力を振るうことを許された俺達の事さ。神器一つにつき一人の依代が選ばれる。大抵は長い修行と神器と深く関わることでようやく神器自身にそれを振るうことを認められるんだが、誠、君は珍しくすぐに認められたわけだ。」

「そうなんだ・・・そうなのか?」

「う、うむ。そうだな、あれだ、お主には素質があったからな。」

 この時点での関係の深さでは剣に誠の素質の有無など不明であり、これはただの方便であった。久しぶりの地上だというのに魔物にすぐさま己の所在を嗅ぎつけられ、危機を回避するためにたまたま掌中に剣を持っていた誠を依代として選んだだけ、とは流石に言い辛かった。ただ、彼が超人的力を扱える器であったという事実は剣にとっては勿怪の幸いである。

「そして、神器を操って魔を滅する依代の俺達は纏めて、『資格者(サンクトゥス)』と呼ばれている。ラテン語で『神聖』という意味なんだがそれが転じて、神の力を操る資格がある者って事だな。」

「呼び名があるくらい、その、サンク・・・なんたらってのは大勢いるのか?」

「ああ、それなりにな。」

「組織の所属だけで十一人。」

「っつ・・・そうだ、俺達の仲間は全部で十一人いる。」

 人数についていかにも覚えていなかった風を取り繕うアーサー。

「という事で石狩、君はめでたく十二人目の俺達の仲間となるんだ。行くぞ。」

「ちょっと待てって、だから俺がなんでどこに行かなきゃなんねえんだよ。」

 話が振り出しに戻ることとなった誠は、必死で勝手に自分に強制された義務を詳らかにせんと奮闘する。

「そうか、そこからか。ようやく俺達の話のスタートラインに来たわけだ。」

「そうだよ、あんた達は何しにここまで来て俺をどうしたいんだよ。子供が誘拐されるわけじゃないし、そんなことも知らない内からはいそうですかってついて行けるわけねえだろ。」

「それもそうだな、いや悪かった。」

 アーサーは年下の弁にあっさりと腰を折った。

「では、もう少し話に付き合ってくれ。」

「ああ。」

「そもそも俺達の属する機関ってのは、世界中から資格者を集めて管理する所なんだ。管理することで強大な敵と戦うのを目的とした戦闘組織なんだな。」

「戦闘・・・組織?」

「ああ、めでたく資格者となったお前にも是非十二人目の戦士として俺達と戦って欲しい、俺達はそのために来たんだ。」

 誠はアーサーの話の壮大さについて行けてなかった。先週は全く普通の高校生として生活していたのだ、無理からぬ事である。

「俺は、機関に入ったらどうなるんだ?」

「そうだな、まず適性試験を受けてもらう。そこに合格すれば晴れて全世界の同志達と共に敵と戦う、って寸法だろうな。」

「敵ってのは妖って呼ばれる奴等・・・か?」

「ああ、そうだな。」

「うーん・・・」

 暫しの話の整理と長考に時間を割く誠に代わり剣が口を開く。

「願い下げだ。」

「えっ?」

 その場に居合わせた人間が一斉に天叢雲剣に注目した。

「我はこの国随一の宝剣、天叢雲剣なるぞ。そのような得体の知れない集団でどこの馬の骨とも分らぬ者共に使役される謂れはない。」

「何言ってんだよ、俺達と一緒に来れば楽できるんだぜーい。」

 気楽と陽気の複合体のようなエクスカリバーの戯言も天叢雲剣にはただの耳障りな雑音としか聞こえなかった。

「お主は神の力を操る物としての矜持も持ち得ておらんのか。とにかくこのような話は願い下げだ。帰るぞ、誠。」

「い、いいのかよ。もしまた妖が襲ってきたらどうするんだ?」

「お主は一人で既に四匹もの妖を倒しておるではないか、自信を持て。我とお主であればあのような木っ端、百匹襲ってきたところで恐れるものでもない。」

「やけに凄い自信だな・・・」

「おい、待てってば。」

「もういい、黙るんだ。」

 エクスカリバーが制止を求める声をアーサーは逆に制止した。

「何だよアーサー、俺達がはるばる極東の島国のこんな端っこまで来てやったのに手ぶらで帰るつもりかよ。」

「そうじゃないが、今のままではどう説得しても首を縦に振ってくれそうにないからな。」

「そうだアーサー。そもそも『ジェレ』もできないようでは同類ともまだ呼ぶ訳にはいかない。」

 久しぶりに開いたエマの口からまた新たなる単語が発せられた。

「今度は何だよ、ジェレ?お前ら中途半端に日本語以外が出てくるから分かり辛いったらありゃしない。」

「ああ、そ、それは追々な。今日の所はこれで一旦帰らせてもらおう。じゃあまたな、アディオス!」

 言うが早いか、アーサーとエマの姿は闇の帳に隠れるようにしてその場から消え去った。瞬間的に高速移動して人の目からは消えたように映っており、石狩家の屋根の上に移動していた二人は誠を観察する目を解いてはいなかった。

「エマ、どう思う?」

「時間が・・・かかりそう。」

「そうだな、俺はKUSANAGIの出現はやはり本当だったことまでを伝えに支部へ戻る。彼らの監視は・・・大丈夫だな?」

「監視くらい、問題ない。」

「おいおい、アーサー。本当にこんな唐変木に任せて大丈夫なのか?」

「問題ない、と言った筈。」

 エマは殺気を上げてアーサーと携えている剣を睨みつけるものだから両者は肝を潰した、そこには絶対的な実力差という壁があるようだった。

 アーサーの姿が再び闇へ溶けていく。一人残る形となったエマは監視を続け、その対象は彼らが消えてから数分、ようやく動き出す。

「なんだったんだあいつら。でも俺達みたいなのが他にも十一人はいるってことだな。」

「彼奴等が神器と呼んだ我のような存在は世界中に数多ある、不思議な事ではない。」

「そうなのかよっ、お前みたいな奴が何本もいるって・・・考えただけでも鬱陶しくなる。」

「お主は本当に無礼千万な奴だな。」

「ほっとけ。それよりいいのかよ、あんなケンカ別れみたいな口利いて。」

「構わん、我が誰かに使役されるなど堪ったものではない。」

「そんなこと言って、あのチャラいエクスカリバーって奴が気に入らなかっただけなんじゃねえのか?」

「ば、馬鹿にするでない!我は神の剣ぞ、そのような狭量な心などもとより持ち合わせてはおらん。」

 やたらと神という単語を持ち出しプライドだけは天空の高みのように聳えるが、時折図星を突かれると動揺を隠せないでいる剣に誠は妙な人間臭さを感じずにはいられず、そしてその感情は決して誠にマイナスの方向性を与えるものではなかった。

「はいはい、そういう事にしておきますか。じゃあ帰るか、遅くなっちまったよ。」

「お主、全然信じておらんだろ。」

 誠は家路へと足を向けた。多少遅くなったことで恵は過保護気味に心配していたが、後の男衆は何の心配もないとばかりに既に床に就いていた。


 翌日、昨夜の新たな出来事に心奪われ、ろくに眠れずにいた誠は眠れないままに始業五分前という、彼にしては早いが一般的学生としてはあくまでも普通といえる時間に登校を果たした。そしてそこでは細やかな幕間狂言が彼を待っていた。

「石狩君、昨日はありがとう。」

 珍しく始業まで余裕を持って着席した誠を見付け、優子が歩み寄ってくる。

「ああ、無事に帰れたのか?」

「ええ。それで、はいこれ。」

「ん?」

 覚えのない紙袋を渡され、頭に疑問符を浮かべる誠に優子は補足した。

「お借りしたお母さんの服よ。あたし今日も遅くなるから、申し訳ないけど石狩くんから返しておいてもらいたいの。」

「ああ、いいぜ。」

「ありがとう。本当に助かったわ。」

 優子はにこやかに笑った。普段仲良く会話する接点が見受けられない男女が仲睦まじくしている様子は周囲には格好の材料となる。この際、当事者たちが本当に仲睦まじくしているかは問題ではなく周囲の目が仲睦まじいように見たかどうかが全てである。

「おおー、石狩。やけに日高と仲いいじゃんかよ。」

「うんうん、普段素行不良が窘められるくらいしか話さないと思ってたら実は隠れてコソコソ何かを育んでいましたってか?」

 週刊誌が最も潤う話題の匂いを嗅ぎつけたクラスメイトが早速下衆な取材を二人へと敢行してきた。彼は素行不良と言っても遅刻癖程度であり、スポーツができると大凡齎される結果としてクラスでは人気のある一人である、故にこの様なお巫山戯でクラスメイトが茶々を入れられる環境が存在した。

「なんだよお前ら?ニタニタして気持ち悪いな。」

「いやいや石狩君。ニタニタもしたくなりますよ、女の子には朴念仁で鳴らせてると思わせといて日高さんとは、お目の高さに恐れ入りました。」

 精神は間違いなく異性には朴念仁な誠は抽象的の域を出ない級友達の言葉が今ひとつ伝わってこなかったが、彼よりは敏感な神経を有している優子は先に気付いて反応する。優子にも自覚はないが、気立てがよく頭も良い、役職から面倒見もいいと三拍子揃った稀有な存在は男子生徒の間での人気は高かった。

「みんな、何か勘違いしてない?これはただ、昨日借りた石狩くんのお母さんの着替えを返しただけよ。」

「そうだぞ、貸したのを返してもらってるだけだ。」

 しかしパパラッチもどきの意識に目覚めた彼らは、着替えを借りたという事は誠宅にて服を脱いでいると、自らの仮説を確立させるに都合のよい解釈のみを抽出して一つの記事を構築していた。

「おいおいおい、石狩って実は進んでたのか?」

「日高さん、こんなのがいいの?」

 何が油を投げ込んだのか分からないが勝手に騒ぐ級友達に誤解を生じさせている事態を察した二人はようやく火消しの重要性を認識した。

「違うわよ、みんな何か勘違いしてない?」

「そうだぞ、何勘違いしてんだ。お前らが面白がるような話は何にもないぜ?」

 だが騒ぎは収まるどころか延焼の一途を辿り、誠の友人の男共はからかいと彼女を落とした戦術の拝聴希望に二分され、優子の友人の女性陣はどうしてアレなのかとか、畏敬対象の彼女が男に興味を示した事へのショックから落ち込んだりと教室中が大騒ぎと化した。中には誠に明らかな敵意の目を向ける女子もおり、身に覚えのないことで異性中の怨嗟を一身に受けてしまった。

「こら、うるさいぞー。席に着け。」

 担任の登場でこの場は一旦水入りとなったが、根も葉もない、いや冷静に判定すれば根くらいはあったかもしれない二人の噂は本日のクラス中の話題を独占し、休み時間の度に二人は時の人としての扱いを受けていた。


 放課後になるとすぐに二人はこの煩わしい環境から逃亡を図るため終礼の終了と同時にそれぞれの逃亡先、誠はサッカー部部室へ、優子は生徒会室へと向かった。ただ、教室を出てから数部屋分先にある階段へと廊下を曲がるまで二人が同じ方向へ同じスピードで向かった姿が、仲良く向かう格好に見えたのもまた明日以降のクラスメイトの囃し立てを焚き付ける材料となるはずだった。

「じゃあね、石狩君。今日はなんだか変なことになっちゃったね。」

「ああ、その・・・気にすんなよ。俺は気にしてないから。」

「う、うん。じゃあ、あたしは上に行くから。」

 お互いに精一杯に相手を気遣ったつもりで放った言葉を受けて、優子は上層階の生徒会室へ向かうべく階段を上り、誠は校舎外の部室へ進もうと階段を下りて行った。


 一方、二人の消えた教室にはクラス外の人間が訪ねてきていた。

「なあ、誠はいるか?」

「誠?ああアイツならとっとと出て行ったよ。今頃日高と二人でイチャイチャしてんじゃないか?ヒッヒッヒ。」

「そうか、ありがとう。」

 やけにいやらしい物言いに事情は掴めないが、訪問者はそう言い残し誠達の去った方角へと歩みを進めた。


 クラスメイトの野暮な期待に応える義理もない誠は階段を下りつつ剣と花も咲かさない会話に勤しんでいた。

「皆、子供だな。まったく人の恋慕の話で一日中盛り上がりおって、喧しい限りであった。」

「そういうなよ、俺も参ってるんだからよ。」

「お前は身から出た錆というものであろうが。我は完全にお主の割りを食った形ではないか。」

 実りを付けない二人の会話は人知れず続けられる。

「お前はいいよな、こんな人間関係ってやつに振り回されないんだから。あ、でも昨日のアレとは仲悪かったか、ははっ。」

「彼奴のことは金輪際口にするな、思い出すのすら腹立たしい。」

 アレだの彼奴だのと下方に揶揄される神器の一つも、聞こえていたら向こうも向こうで腹立たしくしたことであろう。

 階段を下りきり、部室までの渡り廊下へと差し掛かった時である。誠は十メートル程先にこの場にそぐわない出で立ちの男を視認した。その者の態は白い衣で袴姿をしており、神職の格好と確認できた。およそ神道でも授業に組み込んでもいなければ学校という域内でその姿を目にする確率はあまりに低い。

「やあ、石狩君。」

 ふいに神職の方が誠へと声をかけてきた。彼には誠が見覚えある者のようである、誠の方からするとこの場に不釣合いな服装ということもあり、相手を認識するにはまだ距離的な余裕があった。ために更に相手へと接近してみる、面影や顔の輪郭も鮮明に見えてきたところで誠は脳の記憶層を刺激させる。それはお参りの都度、世話になっている顔にしてたまに自分の父と仲良く酒を酌み交わしていることもある、最近血縁者とは色々な交流が芽生えてきていた顔、即ち優子の父であり、日高鉄二という名の人間だった。

「あ、こんにちは。おじさん。」

 妙なところで顔を合わせたものだとは思いながらも、見知った顔に挨拶は交わす。ともあれ彼の娘とはただならぬ、と言ってしまうと語弊があるがそのように表現できるような時間を共有していただけにどのような顔で彼と相対するとよいのか多少の迷いがありつつ誠は彼の手招きに応じる。

「やあ、石狩君。娘から聞いたよ、君の家で介抱してもらったんだって。」

「は、はい・・・」

 少々だが彼は違和感を覚えた。昨日の話では鉄二は家を開けているということではなかったか、なのにもう昨日の話に明るいとは、と。それでも四六時中彼を監視していたというわけでもないから、何処かで娘と話す機会もあったのだろうと大して気には留めなかった。

「うちのつまらない内情も話したと思うが、気にはしないでくれよ。思春期の女子の話だから、そりゃ男親には分からないことも多くてな。」

「そうなんでしょうね。俺にも彼女は何考えてるのか分からないです。」

 彼は自分にこんな世間話?昨日への注意喚起?をしたいがために校舎にいたのだろうか、誠には新たな疑問が生じた。

「これからも大事にしてあげておくれ・・・あの世でね!」

「えっ?」

 鉄二は瞬間的に爪を何十センチと伸ばした刃物で油断、もはや安堵しきっている誠の首元へと、手を突き出した。しかしそれは間一髪、防御本能が研ぎ澄まされていた天叢雲剣が爪と喉の間へと割り込み、鞘が鉄二の悪意が誠に食い込むのを防いでいた。

「ふふっ、流石は天叢雲剣ですね。私が探し求めていただけのことはある。」

 この時の鉄二の声は、先刻まで娘が世話になった礼を述べていた鉄二の声とまるで別物、おどろおどろしく響く人ならざるものの恐怖を感じた。刃を繰り出した彼の手は既に人のそれに非ず、黒々しく人外の風へと変化している。

「不味い、誠!此奴から離れろ。」

 剣の命令が聞こえるや否や、誠は後ろに飛び退き今まで鉄二の姿をしていた何者かから距離を保ち剣を身構えた。

「お、お前は何だ?鉄二おじさんじゃないな!?」

「鉄二?ああ、この姿をしていた人間はそういう名だったかもしれないね。」

 鉄二であったはずの姿は暗転し、周囲に闇のような煙をしゅうしゅうと吐きつつ、体形を見たこともない生物へと変化させていく。いや、もはや生物とは言えない黒き角、漆黒の翼、闇の身体、朱き眼、鋭い手足の爪、更に人の姿から二回りは巨大となった体躯。二足で地に立ち二つの手を持ち、背骨があるようで人と同じ佇立姿勢を示してはいるが、悪魔とは正に目の前のものを呼称する際に使われるのだと言わんばかりの凶々しい姿を誠の前に晒した。

「お前・・・お前も妖なのか!」

「ふふっ・・・お前が倒してきた獣などと同じものと思われるのは心外だね。」

 妖の顔が笑みを浮かべたように見える、もとよりただの獣のような先の妖と今姿を現した妖は大きさも違えば人語を解する知恵を備えている所も見せつけられている。同一視はできないのは誠達も十分感じていた。

「おじさんを・・・鉄二さんをどうしたんだ!?」

「さあねえ、大方察しは付いてるのではないかい?」

 暗に大方の予想通りだと述べた妖に誠は怒りと恐怖を同時に感じた。放課後を迎えたばかりの校内には大勢の生徒や教師がいる。目の前の妖が彼らに何をしでかすかを予想すると背筋に悪寒の数本も走った。

「ちっ、みんなを逃さないと。何とかできないか?」

 誠は剣に問うた、だが返答は彼の期待に沿うものではなかった。

「無理だ、だから我は魔法使いなどではない。」

「ふふふ、何の心配もありませんよ。私もまだ鉄二とやらの姿でいたほうが何かと都合がいいのでこの姿を見られるのは得策ではありません。だから結界を張らせてもらいましたよ。」

「結界?」

「誠よ、奴の邪気だ!あの黒い煙のようなものだ。あれの外側から内側は見られぬようになっておる。」

 剣は妖の仕業を見抜く、それにより誠もまたこの煙の中にいれば自分の姿が外に漏れないことを理解した。

「ふっ、よく知ったものだね。この結界で外側と内側は完全に隔絶した。私の正体を隠すだけのものだが、図らずも君達にも益があったか。まあよい、なにせこの国で神職はやたらと敬愛されているようだからね。何処で何をしようと祓ってる振りでもしておけば怪しまれることもない。お陰で天叢雲剣の知識もある程度は得る事ができた。」

 鉄二であった邪なるものは自らの軌跡を滔々と語った。日本国中を巡っていた時、同じく飛び回っていた鉄二を発見し、彼の姿となった妖が全国をくまなく回っては天叢雲剣の情報を探り、人として剣を手にする力を得るに至ったこと、鉄二であればこそ知り得る誠や彼の家族のこと、話だけ聞いていれば鉄二が彼に話しかけている、そのような錯覚を覚えるのもしばしばである。そういえば最近は優子も鉄二の声すら聞いたことがなかったという、その付近でこの妖が鉄二に取って代わったと見るべきか。

「後は・・・後は、剣自体をどうにかして手にするだけだった。だが、まさか誠君・・・君のような青二才に剣を持って行かれるとはね、不覚だったよ。画竜点睛を欠くとは正にこのことだ。いや、違うか。君が私の前に剣をわざわざ引き抜いて持ってきてくれたと思えば手間賃を払ってもいいようなものか。」

 妖はまたも嫌な笑みを浮かべるように表情を変化させて誠に冷淡な視線を向ける。一捻りで死を与えん、視線は誠にそう伝えていた。

「そうか、どのみちやるしかないってことだな。」

 危惧を喪失できた誠は剣を抜き放ち、きっと妖を睨みつける。鉄二の敵、魔物に対して新たな戦闘理由が生じた彼には、目の前の敵を排除した時、優子にそれをどう伝えるかという難題が頭を過る。

「それにしても弱ったな、こんな事親父にも・・・日高に言えるかよ。」

「集中しろ、誠。此奴は一筋縄で行くような相手ではないぞ。」

「んな事ぁ分かってるんだって!」

 余計な思いが誠の怒りを増長させた。心が憤怒の炎で満たされ、誠は廊下の床を強く蹴って妖へと飛びかかり、力一杯に剣をそれの頭上へと振り下ろした。仕留めた!これまでの魔物と同様、この一閃でこの妖もまた塵と消えよう、そう思っていた。だが現実は必ずしも人の理想をそのまま投影してくれる希望の鏡とは成り得なかった。

 仕留めたと思って振り下ろした剣は妖の爪のような刃に受け止められ、その脳天を粉砕する前に制止を余儀なくされた。

「ふんっ。」

 妖は吐き捨てるように一言し、剣を受けた爪の生えている右腕を振り下ろし、誠の体ごと剣を押し返した。弾き飛ばされた体は頭から廊下を滑り、十数メートルの後退を強いられた。

「つ、強ええ。なんだコイツ?」

「だから言ったのだ。彼奴、獣の類とは知恵もあれば力も段違いだ。」

「これだけ派手に吹っ飛ばされれば、よーく分かったよ。」

「どうした、もう終わりかい?ふっ。」

 余裕を吐く妖だが、これしきの事では誠も徒手空拳に近い状態で四匹の魔物を打ち倒してきた自信を失ってはいなかった。

「何言ってんだ、これからだっての。」

 再び妖に向かった誠は上下左右から剣の連撃を浴びせる。およそ人であれば剣道の神と呼ばれるようなレベルでも到底受けきれない速度と重量なのだが、妖はその全てを爪で受けきった。三、四十合程叩きつけたものが尽く弾かれたところでまた誠は距離を開けた、既に息が上がりつつある。

「ハア、ハアッ・・・しぶとい奴だ。」

「しぶとい?私の体に傷一つ負わせられないでしぶといも何もあったものではないよ。次はこちらから行くぞっ。」

 妖は両の手から爪を輝かせ、二刀の構えで誠へ向かってきた。右が来ればすぐさま左からも、左を凌げばまたも右からの攻撃が、それを交わせば二刀が纏めて襲いかかる猛攻を一刀のみで受け止める。攻撃をこそ全て受け止められていたが反撃に出られるような余裕は生じず、一刀毎に相手の剣が体へと徐々に近づき、真綿で首を閉められるようなじわじわとした収束感が彼を襲う。

 やがて優勢であった妖の方から攻撃を一旦停止して間合いを取る。

「つまらんな。」

「何ぃ?」

「手応えがなさすぎる、本気でかかってきなさい。それともこれで全力なのか?」

「バ、バカにしやがって!」

 誠が怒りに任せて剣を横に払った。しかしこの一撃も敢え無く妖の刃が難なく受け止めてしまう。

「くうっ・・・」

「やはりこれで全力なのか・・・世に聞こえた天叢雲剣の力とはこんなものに過ぎなかったのかね、私は少々買い被っていたようだ。」

「何を抜かす!我の力はこんなものではないわ。」

「ほほう、では見せてもらおうか、こんなものではないというその力を。」

 剣の啖呵に反応したのは妖だけではなかった。二進も三進もならなくなっていた誠も剣の言葉に耳を傾け差し出口を挟んでくる。

「おい、そうなのか。まだ力があるなら出してくれ、頼む。」

「む、むうう・・・」

 剣に言葉がなくなった。

「おい、どうした?力はどうしたんだ?」

「落ち着け。誠よ・・・今では、今のままでは、これ以上の力は望むべくもない。」

「どういうことだよ、まだ力は出せるんだろ?」

「そうだが、足りぬのだ。まだ足りぬ。」

「やれやれ、どうやら全力を出すことすらできないのか、興が失せた・・・死になさい。」

 妖は残念がる言葉を浮かべ、今まではお遊びで付き合っていたとばかりに体勢に力を込め再攻撃に入った。爪を振るった空間が空を裂き衝撃波となって誠を襲う。反応に窮する誠を操り剣の意思が波を薙ぎ払い誠は事なきを得たが、目標を喪失した衝撃波は誠の後方脇の壁に衝突してコンクリートを巻き込んで四散した。

「うわああああああっ!」

 叫びを上げたのは誠ではなかった。破壊された壁の影になる角から一人の生徒が至近距離の破壊に堪らず転がり出てきた。

「しゅ、俊?!」

 それは俊であった。先刻、誠を訪ね教室を訪れて後を追ったのは彼である。鉄二が化物へと変化する直前に誠を確認する距離にあり、そのまま妖の結界内に入り込み、ここまでの一部始終を拝見していた。

「ま、誠ぉ・・・」

 なんとも情けない声を上げた俊の全身は恐怖によって支配され尽くしていた。今でこそコンクリートが四散するような衝撃に火事場の馬鹿力よろしく逃げおおせて姿を現したが、物理的な恐怖に加え目の前に見える妖の異形に精神的な恐怖も重ねられ、今にも泣き出しそうな面を下げ、声も絶え絶え、足腰はがくがくと震え力も入らない様相を呈している。

 前日の優子といい、この俊といい、自分の周りにはなんと間の悪い者が多いのか、誠は心中で嘆いた。

「おやおや、結界の中に入り込んでいたとは不幸な人間なことだ。」

 妖の関心は誠と共に俊をも捉えていた。嫌な笑みを浮かべたように見えたそれの口が開き、内から紅い揺らめきが全身の黒色と対比して映えて見える。

「何やってんだ俊、逃げろ!」

「で、でもぉ・・・」

 腰を抜かしていた俊は誠の声に耳こそ傾けども、もはや指一つとして満足に動かせずにいた。先の攻撃から逃げたことで火事場の馬鹿力も完売したのか、次回の入荷にも期待はできない。

「いいから逃げろって!やばいぞ。」

 動かない俊に誠は更に言葉を投げかける。動かないのではない、動けないのだ。そして俊には恐怖の支配によりそれすら彼に伝えられる術を失っていた。

「しかし私がここにいた証拠は残しておきたくない。炭も残らない程に消し去ってくれよう。」

 妖の口が大きく開き、二人へめがけて紅蓮の炎を吐きだした。

「うわあああああっ!」

 猛り立つ紅焔が二人の人間を包む、炎という意思を持たぬ強い力の前に人の肉体は抗う術なく焼け爛れていく。水の中でもがき、魔物に襲われ、そして今度は火攻めと、剣と出会ってから都合三度目であろうか、またも誠は死の意識に苛まれる。

 だが彼が走馬灯を巡らせだそうという時、再び運命の神は彼に希望を与えた。黒き結界の上方の一部が変調し、渦巻く風に吹き散らかされたかのように一穴の穴がぽっかりと開いた。さらに穴から内部へと驚くべき速度で進入してくる一陣の疾風があった。風はやがて影となり影が視覚化できた時、それは金属の輝きを有していた。そして正確に妖の右目へと突き刺さる。

「うおおおおおおおおおおっ、何だとおっ、何だこれはあっ!」

 一時前までの余裕を込めていた口調は何処へやら、苦しみに醜い叫び声を上げる妖。突き刺さった何かが力を吸い取っているかのように膝を床へと落とし尚も苦しみ悶える。

 刹那、飛び込んできた何かを追うかのように、穿たれた穴より結界へと舞い降りる何者かの姿があった。地へ降りてきたその者が妖に向けて手を翳すと、妖に突き刺さっていた物は自らの意思で妖から抜けるように飛び出し、正確にその者の手の中へと収まった。

 更に何者かは掌中の得物を炎に向けて一振りさせると、誠と俊を焼いていた炎は蹴散らされ火の粉と化して消え失せた。

「なんとか生きていたか。」

「た、助かった・・・のか?アンタは?」

 瞼を開けてこれからも現世の姿を目に焼き付けられる機会を賜った誠にはまたも異様な光景が入り込んできた。彼等を妖から守るように降り立った者は、真紅に染まった西洋甲冑で頭から足までの全身を覆っており正体は判然とせず、光り輝く得物の槍はこれまた見事な装飾に彩られており、天叢雲剣やエクスカリバーと趣を一つにする風が誠にも感じられた。

「貴様・・・貴様あっ!一体何者だ。」

 妖は突然の、そして招かざる来訪者に完全に心を乱し口調の粗雑さを増している。顔の中央を刳られ傷口からは人なら血液に当たるような液体がぼたぼたと流れ落ちている。血液と認識できないのはそれもまた妖の存在同様真っ黒い色をしていたからである。

「私が相手だ。」

 甲冑姿の何者かの発する、言葉足らずで抑揚の薄い発言に誠は覚えがあった。その者は一度会ったきりで外見はいかにも華奢で甲冑など着こなせないであろうが、掴まれた腕力の凄まじさを思えば可能性は十二分にある、そんな少女であった。

「ぐおおお、名乗らぬか・・・小憎らしい。しかしこの傷の痛み、倍にして返してくれるわ。」

 右腕こそ傷口から離せないでいるが左手を高々と上げて臨戦の構えを取る。だが彼女は狙いすまして防御に徹していない、敵の右半分を狙って槍を繰り出す。目にも留まらぬ速度は速いと言うだけなら誠と同じであったが、互いの速度には大いなる開きがあった。重量も計り知れない甲冑を着込みつつ神速の槍を敵へと繰り出す。

 余りに速すぎる槍の軌跡は、誠の剣裁きの尽くを止めていた妖にも追いつけなかった。ましてや右手を使えていないで右側を防御するのは至難の業である。彼女に押され一歩一歩と後ずさりを始める妖の勝機は一気に薄らいだ。

「ぐわあっ!」

 彼女の槍先が妖の右腕に突き刺さった時、妖は更なる悲鳴を上げて蹌踉めいた。今と見た彼女は大きな一撃を加えようと腕を後ろに引いて溜めを作る。が、修羅場を潜ってきていたのか戦闘慣れしていた妖は溜めの隙に乗じて後ろへ飛び下がった。虚しくも彼女の一撃は空を切って廊下に突き刺さる、その間に妖はその姿を闇の中に没し去ろうとしている。

「逃がさないっ!」

 すぐに体制を立て直した彼女が槍を突き出したが僅かな差であった、妖は闇へと没し、辺りの凶々しい結界も引いて普段通りの学校の廊下へと環境は舞い戻った。

「・・・逃したか。」

 彼女は悔いたがそこに留まらず次の目標に転じた、即ち誠の安否確認である。

「大丈夫か?」

「ああ、なんとかな。」

「腐っても資格者の端くれだな、回復力は大したものだ。」

 佇立したまま誠を見下ろすぶっきらぼうな態度に彼は甲冑の少女の中身に確信が行っていた。

「腐ってもってのは余計だよ。なあお前、お前って昨日のエマって女だろ?」

「・・・よく分かったな。」

 彼女は仮面のバイザーを上げて顔を誠に晒した。それは昨夜の強い思い出に遺されていた少女の顔と一致を見る。

「そりゃあ、そんな力出せる女はそうそういないだろうからな。」

「そうか。」

 ともすれば失礼に当たる台詞をエマは聞き流した。

「それより、向こうの男はいいのか?」

 エマに諭されて誠ははっとした、同じく炎に焼かれていた俊の存在をエマの綺羅びやかな姿に心を持っていかれて失念してしまっていた。振り返ると、自分とは違い治癒力も何もが一般のそれでしかない俊が倒れているのが目に入った。

「しゅ、俊!」

 彼の姿に我へと返った誠は取り乱して剣も放り投げて彼の体に駆け寄った。

「おい、俊!しっかりしろ。」

「う・・う・・・」

 上半身を抱き上げ揺すって彼の状態を確認すると、微かに息を感じることができた。生きている!しかし危険であるのは間違いないであろう。誠は焦る、彼をどう処置すればいいのか判断が付かないからだ。

「おい、おい、俊。大丈夫か?俊・・・」

 虫の息で彼に返答もできない俊をただ見守るしかできない誠を尻目に、エマがつかつかとやって来て彼の腕から俊を取り上げ抱え持った。

「エマ?俊をどうするんだ?」

「助けたいのだろう?命の保証はできんのだが私に任せろ、病院へ連れて行く。ついて来い。」

 言うが早いか、エマは神速で駆け出す。剣を手放していた誠にも彼女は見えず、はっとした誠は急ぎ剣を手に取り、自らも駆ける。

「アイツ、どっちに行ったんだ?」

「任せよ、神器の気配は我が分かる。」

 天叢雲剣の指図に従い誠は校舎を脱出した。彼もエマも疾駆した跡は、人にはつむじ風が通った程度にしか感じられなかった。学校は何事もなかったが如く放課後の時を紡いでいた。エマの攻撃が傷つけた廊下や妖の炎に焦がされた壁が発見されるには暫しの時を必要とした。


 俊はエマの手により大規模な総合病院に入れられた。

「ここは機関が管理している、情報が漏れることはない。」

 既に甲冑を脱衣させていたエマにより誠が案内されたのは、一般病棟と隔離され、入口からして監視カメラの数に厳重さを物語られる隔離病棟であった。エマと誠は俊の入れられた病室前で向き合っていた。エマの背には件の槍が、誠の腰には天叢雲剣が存在している。

「あの少年はこれで最上の治療は受けられるはずだ。」

「そうか、ありがとよ。礼を言うぜ。あの場に俺だけだったら、どうすることもできなかったろうしな。」

「お前はまだ非常時の経験が不足しすぎている、それではこの先何度もこんな目に遭う。」

 エマの言葉はデリカシーなど関せずただ本質を突くのみであった。しかし親友を巻き込んでしまった自責が誠をうなだらせ、反論の余地を与えない。

「ああ、そうだな。俺が弱いばっかりに・・・質問していいか?」

「私で答えられるなら。」

「ありがとう。お前の持ってる槍、あれも神器か?」

 誠は甲冑は脱げども手にしていた長柄の槍を見て言った。エマは一目槍に視線を落としてから誠に向き直って彼の質問に回答する。

「ああ・・・私は聖槍グングニルの資格者だ。」

「グングニル?また重そうな名前だな。」

「重そうは余計だ、私がグングニル。エマを守るために私は在る。」

 落ち着いた口調で槍が口を開いた。エクスカリバーと違い、声に落ち着きを感じる。エマもアーサーも、それぞれの神器に似通った性格なのかもしれない、と誠は思う。すると自分の質が腰の剣と似通るということになるので思考はここで破棄された。

 グングニルとは、北欧神話に登場する大神オーディンの持つ槍であり、目標を必ず射抜くとされている。

「やっぱり口は利くんだな。」

「エクスカリバーも語ったと思うが、神器は須らく人と意思の疎通ができる。人と同じように中には頭の硬すぎるもの、柔らかすぎるものもおるが、神の力を振るえるだけに基本的には気のいいもの揃いだ。」

「そうなのか。そうだとしたらありがたいな、なにせ最初に出会ったのがこの頭がガッチガチな奴だったからさ。」

「ガチガチは余計だ、我としても今までの依代はそれなりに我には敬意を持っていたというに、ここまでがさつで敬意の一片も示さん男は初めてだ。」

「何をおっ!たかが剣のくせしてよ。」

「お主こそたかが人間が何を言うか。」

「なるほど、大体分かった。」

 二人のやり取りを見ていたエマは勝手に納得する。およそ成熟や円熟という語とはまるで無縁の両者の関係性はエマでなくともすぐに悟られる現れようであった。

「ウオッホン。で、よお・・・お前が付けていたあの鎧、あれって何だ?」

 年下と思い込む女子に貧相な姿を見せつけていた誠は咳払いをして閑話休題を謀った。

「あれか・・・機密だが、お前にもいずれ分かることだからまあいいだろう。あれが資格者の真の姿、『ジェレ』だ。」

「ジェレ?昨日最後に言っていたやつか?」

「ああ、資格者ならば誰でも纏える筈だ。」

 エマの回答には矛盾が混ざっていた。

「ん?資格者なら誰でも纏えるって・・・俺は資格者ってやつじゃないのか?」

「お前は資格者のようで資格者ではない。」

「何言ってんだ?もうちょっと人に分かるように言ってくれよ。」

 エマが急に無口になる。彼にも分かるように説明できる語彙と口数を持ち合わせておらず、内心困惑してしまう、そこへすっと助け舟がやって来た。

「おいおいおい、ここは病院だぞ。そんな大声で叫ぶんじゃない。」

「昨日の・・・アーサーだっけ?」

「アーサー・・・連絡は終わったのか?」

「ああ。で、紛うことなく俺は昨日のアーサーさ、俺から説明させてくれ。どうも彼女は口下手でね、腕はあるんだがコミュニケーションに問題がな。」

 ここで言う腕は戦闘力のことであり今の状況に役立つものではなかった。二人にまとめて反応したアーサーの指摘に合点の行く二人は、誠は進んで、エマはばつの悪そうな表情で救いの神に感謝する風と、まるで好対照であったがアーサーの提案を聞き入れた。

「まず、『着衣(ジェレ)』に関してだ。本来なら俺達資格者は辛い修行を受けた後、神器に認められることで資格者と呼ばれ、それに相応しい力を得ることができる。そこは前にも言った通りだが、その具現化した形とでも言うべきが着衣、つまり選ばれた証みたいなもんだな。ここが問題だ、誠。お前は天叢雲剣を手にして即資格者になった、だから着衣できる土壌がない。」

「土壌?どうすればいいんだ?俺、もっと強くならなきゃいけないんだ。」

「それは・・・」

「それは?」

「やっぱり修行に限るな。誠、暫く俺達について来い。人に化けていたあいつを倒すにはお前自身が強くならねばならん。」

 アーサーの眼から笑いは消えていた。彼は生命にも関わる重大事として誠に向く。

「俺が?できるのか・・・?それよりあんた達が倒してくれるわけにはいかないのか?」

 先刻の戦いで歴然たる力の差を見せつけられた誠は、獣の魔物とは違う人に近しい姿の魔物の実力に対して幽かさを生じさせていた。それが実力が未知数のアーサーや実力の片鱗を見せていたエマへの過大な期待誘発させた。

「まあ俺ならあの位、片手でも余裕だな。」

「右に同じく・・・」

 アーサーの発言は誇張を交えたつもりであったが、誠には頼りになる兄貴分の自信に満ち溢れた余裕の発言に聞こえていた。

「な、なら頼むよ。アーサー、あいつを倒してくれよ。」

「いや、それは駄目だ。」

「ど、どうしてっ?」

「いいか誠、あれはお前の相手だ。KUSANAGIを狙っている以上、KUSANAGIの依代であるお前に倒す義務がある。」

「そう・・・」

「義務でもあるが、あちらさんもお前を狙ってくるわけだ。俺達だって四六時中お前を見ているわけにはいかんからな。結局お前が奴を倒さねばならんことになる。」

 理屈としては筋が通っていたのだが、感情が理屈に勝ることは珍しいことではない。特に弱気の渦に捕まっている今の誠のような場合は尚の事である。

「だって、勝てねえもんは勝てねえ・・・」

「そんな事はない!」

 病院だというに再度の大声を発したのはエマだった。彼女はきっとした目つきで誠を見上げ、弱っていた頬を一つ、もう一つといい音を出して引っ叩いた。

「痛ぇ、なんなんだよ!」

「弱気を吐く奴は嫌い・・・彼はお前が弱いからここにいる。」

 エマは病室のドアを指差して誠を詰った。このドアの向こうには俊が大怪我を受けた状態で閉じ込められている。己に力があれば俊を巻き込むどころかこのような目に遭わせることはなく敵を倒せていたであろう、彼女の指が示す先は誠の心の弱さを的確に指摘していたのだ。彼女の指摘に誠は喉を詰まらせる。

「そ・・・そうなんだよな、俺が弱いくせに調子に乗ったからあいつは大怪我したんだよな。くそおっ!」

 誠はやり場のない怒りを拳に乗せて床へと振り下ろした。ただただ痛覚が大いに刺激させられただけで怒りが霧消することなく誠は感情を持て余して膝を折っていた。

「何れにせよ一週間が限度・・・」

「何の一週間だ?」

 エマの期限に誠は疑問符を立てる。

「一週間もすれば、奴がまた襲ってくる。」

「さっきの奴がか!」

 誠は驚かされた、恨みざらましい妖が再び襲来との予言を受けたのだから無理からぬ事である。

「ああ、私の負わせた傷も一週間もすれば治る、そして正体を知ったお前や私達をまず奴は逃さない。」

「となると、俺達は一週間でお前を一人前に仕立て上げる必要があるわけだ・・・」

 アーサーは結論を出さず考える行動を取る。およそ彼も一週間どころでない長い期間を費やして真の資格者たりえたのだろう。いかに大変でも一週間でなれるものなら誰でもなれている、それほど軽々しい力を奮っているわけではない自覚が彼の予想に確信を与えている。

 誰も答えを出せない間にやおら病室のドアが内側より開けられ、医師が外へと姿を現す。

「ええ・・・誠というのは君かね?」

 予想が見事的中して医師は誠をして彼の名を尋ねた。もとよりこの場にいた三人の内、他の二人は外国人なので日本人の名を持っていると思われる物を探した結果、誠に目が行くのは自然の成り行きだった。

「あ、はい。そうですが。」

「患者がうわ言で君の名前を呼んでるんだ、ちょっと来てくれないか?」

「わ、わかりました。」

 断る理由はないどころか望むところと彼は医師に伴われ入室していく。アーサーも彼に続こうとしたことろをエマが腕を掴んで引き止めた。その間に先の二人のみが入室する。

「アーサー・・・これ。」

「ん?・・・おおっ、やっぱりアイツは素質・・・あるよなあ。」

 エマが引き止めたのは何かを目に留めたためである。彼女が指摘し、アーサーを喫驚させるものを誠は残していた。怒りを込めて下ろした拳の跡がコンクリートの床を薄く凹ませ、ヒビを這わせていたのだ。並の高校生にできる芸当ではない、二人は微かな期待を発芽せさせ、改めて彼の後を追い病室へと入っていく。


 病室では包帯の厚着に身を包まれた俊がベッドに身を横たえており、誠は彼の傍らで己の存在をアピールしている。

「俊、おい、俊。しっかりしろ。俺だ、誠だ、ここにいるぞ。」

 彼の再三に渡る自己主張が功を成したのか俊は意識を薄く取り戻し、誠が握りしめていた自らの手に感覚を感じていた。

「う・・・うん・・・?」

「俊?」

「誠、か?」

 目は開いていない俊は触覚と聴覚で誠を判断した。聞こえてきた声を誠と判別する程度には意識の回復が見えた俊に誠は安堵の色を見せる。

「ああ、俺だよ。よかった、俊。」

「嫌な夢を見ていたぜ、お前がモンスターと戦ってる所に出くわして、火を食らうんだ。」

 意識を取り戻した時、直前の記憶が現実として認識できないほど浮世離れした出来事で俊は現実を夢と思い込んでいた。

「そうか、俺はここにいるさ。下らない夢だったんだな。」

「そうか・・・そうだよな。我ながらバカバカしい夢だな、ははっ。グスッ。」

 俊の回復への喜びと自分の業が相俟って誠は眼から熱いものを流していた。

「でな・・・俺、お前に謝らなくちゃいけないんだった。」

「ん?」

 むしろ謝りたいのはこっちだという意思を押し殺して誠は彼の次の発言を待った。

「あのな・・・俺・・・全国行けないんだ。」

「えっ?なんでだよ。」

 誠の言葉は柔らかく発せられたが、芯ははっきりした受け答えで明確な否定意思を示した、明確であっても今の俊には彼の意思はほぼ伝わっていないのだが。

「こないだの中間テスト、親を怒らせる点取ってな・・・部活、辞めて予備校に行くことになったんだ。」

「なんだよ、そんなくらい!次いい点取って思い知らせたらいいだけじゃないか。」

「お前なら・・・そういうと思ってたよ。だから今日、お前に相談するつもりでお前の教室行ったんだけどな、あれ・・・俺、どうしてこんな怪我してんだ、うっ!」

「俊、おい大丈夫か!?」

「あまり深く考えちゃいかん、とにかく今は体を休ませなさい。」

 意識が回復したことで大目に見ていた二人の会話を、彼の様子の変化を敏感に感じた医師が制止した。誠も白衣の効果の前に我を通すことはせず、彼の指導に従った。

 間を置かずして、口一つ動かさなくなった俊に誠は大いに心乱されたが医師の眠っただけだという指摘に平生を回復していた。

「先生・・・助かりますよね、こいつ助かりますよね。一緒に全国大会行こうって約束してるんですよ。」

 誠の問いに医師はすぐ返答しなかった。間の置き方が彼の不安を強固なものにしてしまう。

「先生っ?」

 振り向いた形相に本気さを見た医師は重い口をようやく開いた。

「命だけはなんとかする、それは我々を信じてくれ。しかしだ、全国とは、野球か何かかね?」

「サッカーだけど?」

 誠の返答に少々俯きの色を濃くした医師は、更に重くなった口を万力でこじ開けるかのように言葉を続けた。

「そうか・・・残念だが彼は今まで通りに体を動かすことは困難だ、ましてやサッカーなど。」

 医師の宣告は誠を絶望の底へと落とすような威力を放った。

「そんなっ!」

「残念だが、現実を受け止めなさい。命があるだけでも奇跡のような大火傷なんだ。」

 誠は床にへたり込んだ。自責の念が更に強くなる。俊の夢であり誠の目標であった話が自らの至らなさで永遠に叶わぬ夢物語へと転化した医師の宣告は誠の両肩だけでは足りない重しをこの世に存在させた。

 彼は暫しへたったままで動かなかった。遅れて入室してきたエマが肩を揺すろうかという動作に入るのをアーサーはそっと抑止している。

 しばしの時を彼は消費し、俊への贖罪という感情も働いたのだが、それ以上に自分が鉄二や俊の受けた代償を払わせるという強い意志が誠に目覚めた。

「アーサー・・・修行って話だけど。」

「うん?」

「一週間で俺、奴を倒せるか?」

 少し顔を上げた誠の目は、以前と違い真剣さを帯びていた。

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