第1話 黒猫と手紙とステータス
吾輩は疑問に思っていた。言葉遣いが変わっている。
いやそのような事は些細な問題だ。それより吾輩は獣型の魔物なのになぜ服を着ているのだ。
…………そう思った矢先、吾輩は神様はの一言を思い出した。
それは「餞別も用意したから有効活用してね」、という一言。ありがたいが、有り難すぎて逆に引け腰になってしまうぞこれは。
それよりも、吾輩は自分の今の服装を眺める。黒地に金の生地の装飾の軍服に腰の軍刀、そして古式のリボルバー…………軍服についてはこれは教科書に乗っていた大日本帝國軍の将官の正装だ。
生地はとても良いものなのか、着心地も良い。体を動かすのを阻害する事も無さそうなので気にしないが……色々とあの神様に言いたい事が募ってくる。
「神よ、貴方は確かに自分の管理下に存在する下界には過度な接触は駄目だと言っていた。しかしだな、いくら管轄外とはいえこれは少し酷いと思うぞ?」
そう呟きながら、吾輩はスタンドミラーの裏側を覗く。そこには吾輩の身長に丁度良い大きさの革張りのトランクケースがあった。
それを取り出し、開くと、なんと中身は異次元へと繋がっている。
恐らくだが、いわゆる魔法の鞄というやつだろう。
シャツやスラックスなどの着替えや軍服以外の紳士服や私服。そして幾ら使っても減らない、劣化しない歯磨き粉、シャンプーやブラシなどの生活品も多数あった。
中には永久的にお湯の出るポッドや紅茶缶にその器材、神様と一緒に吸った煙草などの嗜好品もあり、なんとも言えない気持ちになる。
その辺りを色々と探っていると、しばらくして一枚の手紙を発見した。神様から我輩宛のもので間違いない。ご丁寧に蝋印されていたので、ペーパーナイフをトランクから取り出し切り取り手紙を開いた。
ーーーーーー
『我が友へ』
やぁ、僕の餞別は気に入ってくれたかい?生活用品は大事だからね、無限に永遠に使えるようにしてあるよ。
服については脱ぐと猫人からただの猫に戻れるよ。 軍服については僕の趣味さ、トランクケースの中には他にも色々な国の昔の軍服が入っているよ。
紳士服も私服も必要だよね、毎日軍服なんて肩がこるだろうし。
あっ、服も武器も身丈に合わせてサイズも変わるし、汚れも付きにくいから安心して。戦闘にかんしても高い防御能力に自己修復も付けているからね。
僕は物を大切にする神様なのさ。
君が強くなる度に武器も防具も強くなる。パートナーと思ってくれても構わないよ。
忠告するけど、そのトランクケース本体は君にしか扱えない。だからと言って油断して盗まれたりしたら駄目だからね。
ちなみに君にはその世界に家族はいないよ。何故なら君は魔力が集まって出来た自然発生型の魔物だからだ。探しても無駄になるからよしたほうがいい。
僕からは以上かな。これで本当に失敬させてもらうよ。では我が親愛なる友よ。よい猫生を
貴方の親愛なる友より。
P.S.
【閲覧】って言ってみて。君の今の能力がわかるよ。これもまた僕からの選別の一つさ、通常はステータスなんて便利なものは存在しないからね。十二分に扱ってくれたまえよ?
ーーーーーー
「まぁ…………ありがたいがな」
確かにだ。至れり尽くせりで申し訳ない気分になるが、神様が産まれたばかりの吾輩にここまでする以上。よっぽど危険な世界なのだろう。
というより、現在森の中…………つまり魔物の領域にいるのである。はやく移動を開始せねばどこから魔物が襲って来るか検討もつかない。
「……おお、それよりもなだな……【閲覧】」
ーーーーーー
個体名:なし
固有種:猫又(猫人化)
ランク:E
Lv.1/15
魔術:なし
固有魔法:
【特異時空魔法 Lv.1】
能力:
【気品Lv.max(Lv.10)】
種族能力:
【変化の術 Lv.2】
【立体機動Lv.2 】
【刀術 Lv.1】
固有能力:
【
【能力閲覧】
隔絶能力:
【森の王Lv.1】
加護:
【下位時空神の加護】
ーーーーーー
吾輩、固有種であった。いや、尾が2つある時点で猫又だと予想はできていたのだが、まさか猫又自体が下位のユニークモンスターだとは......世の中何があるか分からないものである。
ランクはEとなっていた。
どうやら魔物はランク付けがあり、Fから始まりE.D.C.B.A.S.SSの全8段階がある。下位からのスタート、産まれたばかりならしょうがないのだろう。
しかし、種族能力に【刀術】があるのはあれか、秘蔵の守り刀を盗んだ話から来ているのだろうか?
猫又は猿のように木々を移動できるとも、人に化けるとも言われているので【変化の術】や【立体機動】には特に違和感はないが【刀術】は違和感がありすぎるのだが。
特異時空魔法は……まぁ、あの神様の加護の影響に間違いないのだろう。もしかすれば高校生達を地球に戻す為の手段なのかもしれない。
それよりも、固有能力。【
吾輩は説明を開いてみる。
ーーーーーー
厳しい冬と険しき森を具現化した魔女。
生命力増大、寒さ耐性増大、
魔力増大、魔力防御増大
大地系魔法親和性・極
女体化
【Lv.1】
浮遊板、動物言語
【Lv.2】
髑髏の灯火、猫使役、鼠使役
【Lv.3】
嵐の箒、吹雪の箒、炎の箒
【Lv.4】
死の水、命の水、騎士召喚
【Lv.5】
森の家、不死性、【森の王Lv.1】
ーーーーーー
女体化(なってもメス猫である)以外すごい能力である。しかし、『森の家』と、【森の魔女】から派生した能力【森の王】は何なのだろうか。
ーーーーーーー
大地に認められし森の王者にして唯一無二の覇道を行く者。
生命力増大、植物の護り
魔力増大、魔力防御増大
大地系魔術親和性・極
植物操作、大地操作
【Lv.1】
ーーーーーーーー
やはり、【森の魔女】の派生というべきか、基礎的な能力は殆ど変わらないが、陸の王者とは誇張にもほどがあろう。
最後の能力【気品】なのだが…………多分吾輩の一人称の原因はこれにある気がする。もう検討が付いたので無視しよう。
「…………時空神、色々と言いたい事はあるが、貴殿の餞別痛み入る。吾輩はこれから逞しく生きて見せよう。我が故郷からよく見ておいてくれ」
吾輩は神様への感謝を胸にその場で一礼する。
本当にあの神様にはお世話になった。記憶を消さなかったうえに、こんなに素晴らしい力も授けてくれた。
だから、吾輩は彼に誓う、連れ去られた者達を送り届け生き延びて老死しようと。
吾輩はスタンドミラーをトランクの中に収納すると、その場を後にする。
吾輩の物語はこうして始まったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます