生活が安定してくる

 近所の巨大ショッピングモールに入っているおしゃれな小物屋さんで働き始めてから1か月半が過ぎました。

 最初のお給料が振り込まれて、さっそく新品の自転車を購入し、片道30分以上もかかっていた通勤時間も半分以下に短縮できました。ゆっくりめに自転車をこいでも、家を出てから10分ちょっとで到着します。

「ほんと、便利になったわね。文明の利器りきってすばらしい!」と、自転車をこぎながら、ついつい声がもれてしまいます。


 最初のお給料は1ヶ月フルに働いたわけではないので、半分くらいしかもらえませんでしたが、次からは全額もらえます。税金とか社会保険とかもろもろの経費を引かれても、13万5000円以上が残るはず。これは非常に助かります。


 私は家計簿をつけるために簡単に計算してみました。

「え~っと、1ヶ月の収入が最低でも13万5000円はあって、と。そこからお家賃の6万円の半分の3万円を引いて。光熱費と通信費がふたりで2万円くらいだから、この半分の1万円を引いて。食費が6万円もあれば足りるかな~?これもレンと半分にするから3万円っと。なんと!6万5000円も残るじゃないの!」

 実際には、トイレットペーパーとかティッシュペーパーとかシャンプーやリンスなんかの消耗品も買ってこないといけないし。お化粧品代も、ここから出さないといけないし。服だって全然買わないわけにはいきません。

 もちろん、遊びに行ったり、外で食事する回数を増やしたりすれば、それだけ余計にお金がかかります。

「6万5000円って、結構あるようで、そうでもないのかな~?すぐになくなちゃいそう。ここから貯金なんてできるのかしら?」

 私は心配になって、ひとりでそんな風につぶやきます。

 でも、この収入でやっていくしかないのです。


 レンの方もまじめに働いているので、同じくらいはもらえそうです。ただし、清掃業という職業がら、収入も働きに行く日もちょっと不安定です。忙しい時は毎日のように出かけるのですが、暇な時期にはあんまりお仕事がありません。

 朝早く出かけて行ったかと思ったら、お昼くらいに帰ってくる日もあり。逆に、夜遅くに働きに出かける日だってあります。

 ほんとは、もうちょっと安定したお仕事について欲しいんだけど。でも、贅沢ぜいたくは言えません。元々ニートだったんだし、最初はこんなものですよね?働いてくれるだけでもありがたいと思わないと。

 どうしても無理そうなら、他のお仕事に変えてもらえばいいし。


 ふたりとも、土日や祝日に出勤することが多いので、必然的に平日にお休みの日が多くなります。たまたま同じ日がお休みになれば、一緒に外に出かけることもあります。

 水族館だったり、映画館だったり、私が働いている近所の巨大ショッピングモールだったり。

 でも、レンはおうちでゴロゴロしている方が好きみたい。最初のお給料が入ると、さっそくゲーム機を買って、暇さえあればプレイしてます。

 私もつき合ってゲームをするので、結構うまくなってきました。

「あ~、そこそこ!そこで撃てよ!」

「もう~、もうちょっとちゃんと援護してよね!」

「今のは、お前が悪いんだろ」

 なんて感じで、すぐケンカになります。

 でも、そんなに大ゲンカに発展したりはしません。こういうのもひとつの夫婦の形なのかな?

 やっぱり収入が安定してきたのがよかったのかもしれません。お金がないと精神的に不安になっちゃいますものね。

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