第7話 接触 1-7

鍛冶屋のリィラとの取引をし終えた後少し話をした。

今日はすごい収穫があった。もし彼女が、他にいる鍛冶屋よりも有能であるならば、すぐに囲い込むようにAI達に言い聞かせておくか。

色々な話をしてわかったことだが、この世界で使われている貨幣だが、ほとんど統一されており、偽造防止のために特殊な魔力付与がされているのだとか。どこで付与をしているのかと聞いてみると、今魔力付与が出来るのはピュール教国と教えてくれた。

必要な時は物質変化装置ランプで偽造するつもりだったが、真面目に働く必要が出てきた。

ちなみに今の私は一文無しだと説明すると——少女相手に恥ずかしい話だが——宿代を呆れながらも貸してくれた。担保として作った剣を預けた。乗合馬車の分は明日渡してくれるらしい。借りたのは大銅貨5枚。これだけあれば宿屋は大丈夫だと言われた。

「では明日の朝に」と言葉を残し店を出る。

辺りはもうすでに暗く、たいていの店は閉まっている。明かりが灯っているのは酒場くらいだ。冒険者だろうむさ苦しい男達が、ガヤガヤ騒ぎながら酒を飲み交わしている。

この村を調べてわかったことだが、この村は3段階に分けられるようだ。中心に冒険者ギルドが置かれており、その周りに商業地区——つまりリィラのように店を出している者達の建物群——が続き、さらにその周りに住宅地区——行商人や冒険者達が寝泊まりできる宿などの宿泊施設——が立ち並んでいる。

酒場は商業地区と住宅地区の丁度間に建てられている。

ほんのりと明るく、騒がしい酒場を横目に通り過ぎ、教えてもらった宿屋へと向かう。

場所は門よりも住宅地区よりで、なかなかに立派な建物だった。

ドアを開けて中に入る。

1階は受付と飲食ができるスペースっぽいな。沢山の丸テーブルと、それを取り囲む4つの椅子のセットが6つほど置いてある。今は誰もいないようだ。

受付には、ブラウン色の髪に緑の目をした、30代くらいの中肉中背の男性が佇んでいた。


「いらっしゃいませ」

「一泊頼みたいのですが、いくらになりますか?」

「一泊大銅貨4枚になります。食事の方は、朝と夜で大銅貨1枚になります」

「一泊お願いします。食事はなしで」

「かしこまりました。大銅貨4枚になります」


会計を済ませて、渡された鍵を頼りに部屋へ向かう。

部屋に入りドアを閉めて、念のため部屋をスキャンし、危険がないかを確かめる。

簡素な部屋だ。木製の机が1つにろうそくが1本。木の板がクロスする形で窓を遮っており、僅かに外の景色が見える感じだ。最も、夜のため肉眼では何も見えないが......。床や壁の木材は破損が目立ち、ささくれている部分もある。

物質変化装置ランプ探査球体ドローンを1個作成し室内の状況を多角的に見えるようにする。

危険がないことを確認し終えてマントを脱ぎ畳んで机に置く。どちらにしろまた作ることになるので分解はしない。

そして本日最後の仕事を行う。

AIへの連絡だ。


《→私だ。忙しいところ悪いが、拠点の建設や研究と並行してやってもらいたいことができた》

《←はい、わかりました。何をすればいいでしょうか?》

《→今から転送する情報の物を作って、定期的に指定する場所へ送り届けて欲しい。詳しいことは転送する情報に書き込んでおく。日時は明日からだ。そっちも忙しいとは思うが頼んだ》

《←了解しました。最善を尽くします》

《→......それとだな、こっちは私的な頼み事なんだが——》


AIへの連絡を終えて、強化外骨格アーマーのままベッドに横になる。ちなみに強化外骨格アーマーを着たままでも身体はそこまで疲労はしない。

栄養補給のため携帯食料(液体)を摂取する。......相変わらずまずい。

......明日からが楽しみだな。

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