第5話 接触 1-5

辺境の街ポルガトーレへ行くための手段として、乗合馬車を使う。そして現在、その乗合馬車が停車する村の入り口に、私と新たなる息吹のメンバーが立っている。

ケインさんの情報によれば、この村は冒険者ギルドによって作られた村とのこと。冒険者を辺境へ派遣した時の拠点、または中継地点として利用して効率化させる狙いがあるのだとか。ギルドが運営しているため、冒険者に必要不可欠な最低限の物は大抵ここでも揃うらしい。この村ができてから辺境で死んだ冒険者は減少していると、ギルドは発表しているらしい。

その村だが、上空からの映像を受信して見てみると、だいたい円形の村で石材と木材を使用した壁で一周覆われていることがわかった。

中心にある大きな建物が冒険者ギルドかな?だとしたらギルドが運営している村であることは間違いなさそうだ。

村の入り口にはちょっとした門があり、屈強な男の門番らしき男と、現在ケインさん達がカードを提示している、前者の男と比べると少し劣るが、確かに屈強と言える男が立っている。

確認が取れたのか、ケインさん達は門の中に入り私を待っている。ジンさんが村の中心の方へ走って行った。

カードを受け取っていた男が此方を向く。


「冒険者カードを提示してください」


ケインさん達には商人と言っているため、失くしました、とは言えないだろう。


「私は行商をしている者で、ポルガトーレに行くためにこの村に寄らせていただきました」

「そうでしたか。あ、*****類はお持ちですか?よければギルドに売って欲しいのですが」


ん......また知らない単語だ。迂闊に持ってない、なんて言えないからな。


「すいませんが、此処までの道でモンスターに襲われまして、荷物は諦めた次第です」

「......そうでしたか......乗合馬車は明日の早朝発ちますが、念のためこれを持っておいてください」

「これは?」

「この村に来た一般人や商人に渡される、一時的な身分証です。これで**日間滞在できますが、延長する場合はギルドに申請してください」

「わかりました。ご丁寧にありがとうございます」

「いえ、仕事ですので」


そういうことらしいので木札の身分証を受け取った。

前々から思っていたが、この世界の色々な単位は最優先で調べたほうがよさそうだ。

ケインさん達の方へ歩いていく。ジンさんも戻ってきていた。


「お待たせしました」

「いえいえ。私達はいつも利用している宿に泊まります。今日は本当にありがとうございました。これはお礼です」


そう言って手に持っていた袋を渡してきた。ジンさんはこれを取りに行っていたのか。

手に持ってみる。重く、金属のぶつかり合う音がする。おそらく貨幣だろう。だがこれはもらってしまってはダメだな。


「いえ、これはもらえません」


そう言うと、あからさまに落ち込んだ顔をした。


「ですがお金以外に私達が支払える物はありません......」

「......ではこうしましょう」


クレアさんの方を見る。

クレアさんが固まる。


「魔法を見せてください」

「「「「......?」」」」

「私は商人ですが、個人的に魔法に興味がありましてね。お礼はクレアさんの魔法を見せていただくということでよろしいですか?」

「......少しメンバーで話しても良いですか?」

「えぇ大丈夫です」


そう言って少し離れた場所で話し始める。

その間ゼロは村を遠回しではあるが観察する。

探査球体ドローンによる上空からの映像ではわからなかったが、村の建物のほとんどが武器や道具を売っている店か、宿屋のような大きな建物になっているようだ。流石にギルドが運営するだけあって、冒険者向けの拠点としての役割を持つ村なのだろう。

しかしあまり手の込んだ造りとはいえず、ほとんど全てが木造のようだ。

村を見回しながら、これからこの村での予定を考えていると、どうやら話し終わったようでケインさん達が近づいてきた。


「決まりましたか?」

「はい。ゼロさんの提案を受けようかと思います」

「それは良かった。では日時はいつにしますか?街に着くまでには見せてもらいたいのですが」

「明日利用する乗合馬車はだいたい半日かけて街に向かうのですが、途中馬や人の休憩をすると思うので、その時にどうでしょうか?」


別にそれで大丈夫だが、考えているふりをする。


「わかりました。それで大丈夫です。では皆さん、クレアさん、宜しくお願いします」

「えぇ、とっておきの見せてあげるわ」


ということで今後の予定の一つが決まった。

なんとなく予想はしていたが、馬車旅はかなり暇になるだろう。クレアさんの魔法鑑賞があるのが唯一の救いか。

新たなる息吹と別れ、村の中を歩きながら、主に武器や道具を売っている店を外から順々に見ていく。明日の乗合馬車もそうだが、これからはこの世界の資金が必要になってくる。どんな物がどの位の値段で売られているかを調べる必要性がある。だが貨幣の基準がわからないのでまずはそれを調べる。


「おっちゃん、これくれや!」

「あいよ!銅貨3枚だ!」

「高いよ!ラゼん所じゃもう少し安いよ!」

「じゃあ銅貨2枚と銭貨7枚!これ以上は負けられないよ!」

「買った!」

「毎度あり!」


調べるのに苦労はしなさそうだ。そこらじゅうで冒険者らしき客と筋肉隆々のおっさん達が商品と貨幣をやりとりしている。

見聞きしてわかったことだが、使われていた貨幣は銭貨、銅貨、大銅貨と、たまに銀貨が使われていた。各貨幣10枚で一つグレードが高い貨幣になるみたいだ。この分だと、他でも使われているのは10進法でいいのか?


•••••


村にある店を一通り見てきた。それでわかったことだが、武器を取り扱っている店が多い。一軒だけ鍛冶屋らしき店もあった。

だが思ったことがある。実際に持って確かめてもみたが、そのほとんどが鋳物製品だった。鋳物武器は、売る側からしたら、短時間で大量に量産できて効率的かもしれないが、実用性は鍛錬された武器と比べれば格段に落ちる。そのため、冒険者は、使い捨ての武器として購入する者が多い。

量産されるため、鍛冶屋によって鍛えられた武器より安くなるため、刃こぼれした場合や折れたりした場合、鍛冶屋に頼んで修復してもらうより、新たに鋳物武器を購入する方のが安く済む。冒険者は本当は鍛えられた武器を使いたいのだが、鍛えられた武器は高い。資金的に難しいために諦めている者がほとんど。

......ということで何を売るかは決めた。何処に売るかも決めた。

ということでこれからその店へ向かう。何故か少しだけワクワクしてきた。ちょっとした騒ぎになるかもしれないが、それもまた面白そうだ。

そう思うと自然と足取りが軽くなっていった。

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