第3話 接触 1-3

人間とゴブリンの戦闘中に、人間の使った未知の力に興味を覚え、人間を助けるために戦闘に介入した。

人間に接触するも言語がわからず、上手く対話ができていない。

AI達が解析しているが、データ不足によりまだ時間がかかりそうだ。

彼らは体力的にも装備的にもかなり消耗しているらしく、全身ボロボロだった。

仲間の2人は負傷していて、そのうちの1人は顔が真っ青でかなり危険な状況とみられる。

未知の力の情報を引き出すためにも友好的に動いた方がいい。

既に彼らを助けることで恩は売っているが、それをより明確にするために、できる範囲での治療はしておいた方が良さそうだ。

まず顔色の悪い方の具合を見ることにする。

負傷していない者達は何かを相談しているのか話し合っているが、私が仲間に近づいていくのを見て近寄ってきた。


「*******......」


盾持ちの1人が何か言ってきたがなにを言っているのかわからないのでスルーする。

おそらくお礼か諦めの言葉かな?

倒れている人間を仰向けの体勢にする。

体型からして子供のようだ。

呼吸が荒く苦しそうだ。

気道確保のために、窮屈そうな革鎧を脱がす。

周りがざわつくが女性白ローブが周りを抑えるのを確認する。

今は治療中なので静かにしてもらいたい。などと思いながら脱がしていく。

......なるほど周りがざわついたのはこの子が女の子だからか。

革鎧の下に着ていた服が少しではあるが盛り上がっている。

ん......首の血管が異様に浮き出ている。

あまり時間はなさそうだ。

この世界の人間にあまり此方の技術を見せるわけにはいかないが、今回は恩を売るために仕方ない。

マントの中で注射器を作成し、あたかもマントの中から出しました的な演出をする。

また周りがざわつく。

今度は女性白ローブも加わっている。

本当に静かにしてくれ......。

注射器の中には人体修復微細装置医療用ナノマシン——欠損部位の構築と血液中のバランスを整えるための医療ロボットナノマシンで、一つ一つは肉眼では確認できないほど小さい。

色は銀色——を入れてある。

これで治らないのなら、仕方ないが諦めてもらおう。

他の治療法を探している暇はない。

動脈を探して注射する。

これであとは医療ロボットナノマシンが全身に回り治療してくれるので待っていればいい。

次はツインダガーらしき武器を使っていた軽装君だ。

彼はゴブリンの矢を足に受けて動けない状態だ。

こっちもやることは同じで傷口に医療ロボットナノマシンを少しずつ垂らしながら矢を抜いていく。私が矢に手をかけると最初は顔をしかめたが、痛みがないことに気付くと、矢を抜く作業を食い入る様に見ている。

他の3人も私が使っている医療ロボットナノマシンを不思議な物を見る様に見つめている。

完全に矢を抜き終わり、医療ロボットナノマシンを傷口に垂らすと医療ロボットナノマシンが次々と細胞に変化していき、傷口を塞いでいく。

何度見ても気持ち悪いと思ってしまう。

負傷部分は傷跡なく完璧に治った。

軽装君は自分の足の傷のあった場所を触り確認すると、ゆっくりと立ち上がる。


「****......****!」

「*******」

「*******」


皆驚いた顔をして騒いでいる。暫くは放置でいいか。

今度は少女の具合を見に行く。

まだ目覚めるまで体力が回復していないので、起き上がってくることはまだないが、先ほどよりも呼吸は安定しているので確実に回復はしているのだろう。

首に手をやって脈を測るが、少し早い気もするが此方も問題なさそうだ。

女性白ローブも落ち着きを取り戻したらしく、私と少女のすぐそばに座り此方を見ている。

何か話したいのだろうか、口を開けたり閉めたりして、なにやら思案顔だ。

此方も話をしたいのだが、まだAIからの通信はない。

連絡してみるか。

彼らから少し距離を取り、人の、音を聴き取れる範囲から外れる。

強化外骨格アーマーの通信機能を起動、AIと通信する。


《→私だが、言語解析はどこまで進んでいる?》

《←だいたい60%くらいです。名詞に関してはまだまだ少数です。なにかしらの情報媒体があれば良いのですが》

《→あるとすれば都市の様な、人間の集まる場所か......彼らに聴いてみることにする。解析できた分の情報をくれ》

《←了解しました。転送します》


情報を受け取り、彼らのいる場所へ戻る。

軽装君達男3人と女性白ローブがなにやら話をしている。

私が近づくと彼らは笑顔で手を振ってくれた。

彼らはこの星での最初の足がかりとなるかもしれない。慎重に友好関係を築いて行こう。

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