第25話 よい人の味方、ラガーマン!!!
「はあ、この先のボクの人生うまくいくのかな」
疲れた感じのサラリーマンが、夜の公園のベンチに座っていた。横には店員の金髪のにーちゃんが見かけによらず丁寧に温めてビニールに入れてくれたホカホカの弁当と、冷たいウーロン茶とアンパンが入っていたが、それに手をつける気力もないようだ。
「上司には怒られるし、お得意さんはわからず屋のクレーム気質だし、もう死にたいよ」
ずいぶんと悲観的な男の人だった。せめて食べて英気を養おうと思うのだが、そんな気力さえわかないといった状態のようだ。
「バカモン!」
そんな彼の前にズダン! デカい音を立てて大きな影が降り立った。
「あ、あなたは……ラガーマン!!」
「左様!」
サラリーマンの前にはラガーマンが立っていた。アン●ンマンと同じ、あのスーパーヒーローなラガーマンである。ラガーマンは顔が映画泥棒のCMみたいにラガーな顔、つまりラグビーの試合で使うあのでっかいアーモンドみたいな形のボール顔で、キチンと縫い目もあった。多分試合で出来た歴戦の勲章みたいな傷なのだろう。身体は無駄のない筋肉に包まれているし、服もちゃんとラガーマンだ。
「そこのリーマン紳士、いかなる理由にしてこんな薄暗い公園で落ち込んでいるのだ?」
「仕事のミスで上司に怒鳴られる、タコなる理由にして落ち込んでいます」
「そんなものはクジラにでも食わせておけ! 会社の一角を担う貴様がそんなことで落ち込んでいてどうする!」
ビシーッと指を指してラガーマンは説教を続ける。
「例え歯車の一つであっても! 歯車が欠けては全体の動きにも欠けるのだ! お前が今すべきことはこんないつ変なやつに絡まれるかわからない公園にいることではなく、さっさと帰って飯を食って力をつけることなり!」
「そうナリか」
「頑張るナリ!」
変なやつに励まされて、意外とサラリーマンも元気が出て来た。
「ボク、もうちょっと頑張ってみます」
「そうか! もうお前は大丈夫だな!」
ラガーマンは満足したようにサラリーマンが横に置いておいたビニールからアンパンを取り出して食べた。ラグビー型の顔をモゴモゴ動かしながら、ラガーマンは言う。
「ひゃらばだ!(さらばだ!)」
ラガーマンなら誰でも常備している、靴についたラガーマン・ロケットを噴射しながらラガーマンは飛び去って行った。
「ありがとうラガーマン」
サラリーマンはラガーマンが飛び去り小さくなっていくのをいつまでも、いつまでも、見送り続けた。
「でもアンパンは返せ」
ラグビー知らないからイメージで描いた。
お題:悲観的な人 必須要素:ラガーマン
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