第11話 ウサオローストうさうさ
ウサオは遠いご先祖様のおとぎ話を読んで、えらい感動をしたらしい。アレだよアレ、空腹のジジイに化けた神さまにあげるものがないから、火に飛び込んでうまうまウサギローストになったボクを食ってくれって言ったウサギの、古臭い話だよ。
「神さまにその身を捧げるなんて、尊い自己犠牲精神じゃないか! カッコいい! ウッサもそう思うだろう」
すぐ影響されるバカことウサオ。オレが止めるのも聞かずにウサオはせっせほいせとウサギの前足を使ってカラカラの枝を拾い集め、家から持ってきたマッチで火をつけた。あったかいたき火が燃え上がる。お母さんに火遊びはいけないって言われて育ったはずなのに、そのマッチはいきつけのバニークラブでもらったやつだった。
「さあ行くぞ! いっせーのっせ! ギャアアアアアアアア!!!!!」
本当に愚かだコイツ。火だるまになったウサオがたき火から出て来た。こんがりといい匂いが漂ってくる。なんか腹減ってきたわ。
「あちぃ! あっっっっっっちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
真紅の怒りをまとい死、いや纏いし彼は辺りを転げまわった。オレはそんなバカなウサオを眺めていた。オレが近くの川を指さすと、ウサオはその静かで冷たい水面に飛び込んだ。
「ぴーぴー、死ぬかと思ったよー、ぴー」
大きなケガはないが、ウサオの全身毛皮が燃えて全身エステに成功してしまった。よく絵本のウサギってさ、ピンクに塗られてるけどあれ地毛ってことなのかな……って思うくらいには綺麗なピンク色の肌が見えてた。
そしておどろくことにそのツルツルになった肌のウサオはモテまくった。毛ガニでも脱毛する時代だしな。ウサギも脱毛したらモテるんだろうな。
「祖先の行為をなぞるというのは古きをたずねて新しきを知るってやつなんだろうね。神に身を捧げる勢いで行動したから、見返りがあったのさ。ウッサもやったら?」
オレは遠慮しとくよ。うっかりローストうさうさになりたくないし。
お題:真紅の怒りをまといし彼
必須要素:全身脱毛
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