第9話 戦争は、二人以上いれば起こりうる

「やっぱ妹キャラっていいよな~」


 友人のカズオがラノベを読みながらもっともらしくうんうん頷いている。わかるわー。


「そうだなー、義理の妹のいいとこどりっぷりったらないよなー。家族であり他人であるから結婚もできるんだ。それでいて幼なじみよりも思い出も距離も身近。これ以上の良い関係があるだろうか」

「はあっ!? 何言ってんだハルヒコ!」

 

 それまで笑顔だったカズオが切れて床をぶっ叩いた。おいやめろ、後ろに積んであるオレの秘蔵エロゲ(メインヒロインは義理の妹)のパッケージの山が崩れるだろ。お前が床を叩くということはパッケージに描かれた義妹たちを崩して虐めるのと同義だ。風が吹けば義妹が泣くんだ。


「血の繋がる妹こそ至高!! 血のつながりによるソウルにまで届く関係の近さ、美しさ、儚さ、葛藤、苦難こそがスパイスでスイーツで最高のエッセンス! 貴様のそれは形だけ真似たレプリカ、かにかま、みりん風調味料に過ぎん!」


 俺もキレた。


「なんでもかんでも葛藤と暗い要素入れりゃあいいってもんじゃねえんだよ!! いいか、義理の妹はあかのあだち充の名作、みゆきまで遡れるほどに歴史が深い! エロゲをあっはんうっふんなだけのものからストーリー性のある素晴らしいものまで昇華した同級生シリーズ二作目の妹だって義理の妹だ!! 仲良しきょうだいから一足飛びで恋人まで上り詰められる、その明るさがいいのだ!」

「何言ってんだカス、てめーの義理の妹エロゲコレクションだって、義理でも家族同士とか……ってなって親子二代責められる展開になるやつだってあったろーが」

「ぐっ……そ、そんな変化球はまれの中のまれだ! てかてめーの実の妹コレクションだって別段恋愛にすらならないやつとか、実の兄妹でも愛さえあればいいよねvv展開で葛藤もなく、あっても特に周りに責められず結ばれるやつがあっただろーが!!」

「そんなものは……まれでもないか?」


 カズオは考え込んでしまった。


「ほら見ろ! どうせそういう展開になるならばプレイヤーがこいつらいいのか? という疑問を一切抱かない義理の妹の方がいいだろうが!」

「はあ!? 葛藤とかなくたって生まれてすぐ刷り込みみたいに傍にいた実の兄妹の方が、関係性だって深く描けるね!」

「てめー義理の妹を侮辱したな! お前とは絶交だ! 戦争だ!」

「やってやろーじゃねえか!!! 貴様を実の妹漬けにして洗脳してやる!」


 腕をまくったカズオだが、ふと思いついたように言った。


「あ、でも豊胸手術でもしたようなおっぱいデカい妹はちょっと趣味から外れるわ。実の妹でも」

「あ、それオレも同意」

「わかるー?」


 戦争は始まる前に終わった。








 お題:男同士の妹 必須要素:豊胸手術

 

 これ書いたやつ的には妹分くらいが一番萌えます(第三の道)

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