第4話 最強美術館

 『我が美術館は最強最高の美術館です。興味のない人にも魅惑のセカイを約束します』


 そんな看板に釣られて俺と彼女が入ったのはジーンズの美術館だった。なるほど何年も前のジーンズやエドなんたらとかいうのの貴重なやつやらがいっぱいある。でも俺にはさっぱりわからん世界だ。


 てかすごいダメージジーンズとか見せられても興味のない俺にはただ破けてるだけやんけとしか思えないんだよな。決して俺が破けたイケてるジーンズが似合わないイケてない人間だからじゃないぞ? ……多分な。


 俺よりは彼女の方がこのキテレツ美術館をフムフム言いながら眺めているようだった。ショーケースに入れられて本来の用途を見失ったジーンズを、これ面白いかも! とかこれ着てみたい! とか言ってはしゃいでいる。女子と言うのは服ならなんでもはしゃぐ生き物なんだろうか。俺の彼女が特殊なだけか?


「見て見てこのジーンズ。るーくんがさっきからボロクソ言ってるやつみたいに、破けたところが全然ないよ。ピカピカ!」

「おーホントだ……『これはお母さんの巧みな技術で縫われてしまった当オーナーのジーンズです』? ……哀れな」


 某SNSにUPしたらバカウケ間違いなしだろうな。撮影禁止らしいからやらんけど。


 そんなこんなで俺達はおみやげコーナーにきた。


 ジーパンまんじゅう。ジーパンの形をした饅頭だ、他に変わったところはない。


 ジーパンエッグ。チョコの形のエッグの中に様々なタイプのジーパンの形の食玩が入っている。全151種類。こんなものでひゃくごじゅういちの喜びを知れるのかはしらん。


 ジーパンストーリーズ。顔のついたジーパン野郎がヒロインのスカートちゃんや弟分のパンツくん、大親友のトランクスくんと織り成すハートフルストーリー。現在6話まで公式サイトで短編アニメが公開中。


 ジーパンカレー。ジーパンをイメージした真っ青なカレー。二百円も払って誰がグロを買うのか。


 俺の彼女はジーパンストラップ──先ほど紹介したジーパンストーリーズの主人公だ──と、女の子向けのサイズのジーパンを手にレジへと向かった。購入すると、ちょっと待っててくれと言って試着室を借り、ジャジャジャジャーンと(俺が口で)効果音をつけながら現れた。


「えっへへえー、どう?」


 彼女はジーパン生地のキュロットスカートを履いて俺の前に再び現れた。キュロットスカートとはスカートと言いつつ実質半ズボンなアレだ。


 でも長くないから綺麗な綺麗な生足が見える。


 ……ふむ、俺の最強は美術館じゃなくてジーンズを履いた彼女だな。



 お題:最強の美術館 必須要素:ジーンズ

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