センチメンタル
周りの大人たちを見ていて、大きくなったら悲しむことは少なくなると思っていたけれども、そんなことはない。僕らの心はガラスのビーカーだ。いつもそれには悲しみが蛇口から出る水のように注がれている。大人になるということは蛇口の栓を締めることではなく、ビーカーを大きくすることだ。悲しみが溢れないように。少しずつ少しずつ、歪な形になりながら、僕らは心を溶かして広げていく。
僕の心は2.1センチメンタルらしい。指定されている基準には達していない。僕は大人になれなかったのだ。
いや、悲しむことはないのかもしれない。この国は寛大だ。感情労働が蔓延る現代でも生きていけるように、悲しみの少ない仕事を紹介してくれた。周りの人は、僕のことをあまり傷つけないように配慮してくれるようになった。みんな優しい。いつも静かに笑っている。まるでここには初めから悲しみなどなかったかのように。
でも。うん。贅沢な悩みなのは分かっている。……僕は友が欲しいのだ。同情ではない、本当の友情が。たとえ目の前にいる男が、蚤のように小さき心をぶら下げていようとも本音をぶつけてくれる者の存在が。
こんなことを言うのは僕の心が幼いからだろうか。でも、蛇口を固く締めたときから、僕のビーカーは心なしか悲しそうなのだ。刻まれたメモリは何のためにある。僕はきっと待っている。再び水を注いでくれる誰かの存在を。悲しみは喜びの双子なのだから。
★センチメンタル(sentimental)
感傷的。感じやすく、涙もろいさま。センチメートルみたいだなーと思って単位にして、ついでに視える化しちゃいました。ちょっと短いので後から足すかもしれません。
そろそろコメディーが書きたい。思いつかない。うーんセンチメンタル。
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