銀白色の背中(2)



 ほのかは学年が上がる毎に彼氏を毎年リニューアルする。


「わたしのツインソウルを探してるの」


 ほのかは数年前からスピリチュアルにはまり、ツインソウルという自分の魂の片割れ探しにやっきになっている。



 バス停にはすでに数人が並んでおり、その最後尾に一凛と颯太は並ぶ。


「一凛ちゃんはもう進路決めた?早過ぎて悪いことはないからさ」


 一凛たちの通う高校は県内でもトップクラスの進学校だった。


「そうですよね」


 一凛は曖昧に答える。


 一凛はまだ自分が将来何になりたいか分からないでいた。


 横に立つ颯太を傘の影から盗み見る。


 それに颯太とのこともこのままではいけない。


 ちゃんとしなければ。


 でもちゃんとするって?


 一凛は自問自答する。


 それは一応つき合っているのだからそれらしく手を繋いだり、そしてキスしたりとか。


 一凛は思った。


 わたしはこの人と本当にそんなことをしたいと思っているのだろうか?


 雨で霞む道の向こうから自転車が一台走ってくるのが見えた。


 銀色の自転車はあっという間にバス停に近づきそして通り過ぎて行った。


 通り過ぎる瞬間、青いレインポンチョの影から見えた切れ長の目が一凛とその隣の颯太を捕らえた。


 依吹だった。


 一凛がそれに気づいた時には依吹の姿は声の届かない遠い雨の中に消えてしまっていた。


「今のって依吹?」


「うん、そうみたい」


「依吹ってあいつ男子校に行ったんだっけ?」


 中学に入ってから一凛と依吹の距離はどんどん離れていった。


 顔を合わせると「よぉ」とか言うぐらいで、最近ではああやって一凛が誰かと一緒にいると無視して行ってしまう。


 でも異性の幼馴染みなんてこんなものだろう。


 バスがやって来た。乗り込むと温風が吹きつけ雨で湿った体を乾かしてくれる。






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