第二章 銀白色の背中(1)



 一凛は腰まで届きそうな長い髪を時間をかけて丁寧にとかす。


「行ってきます」


 キッチンで洗い物をしている母親に声をかけ玄関のドアを開け傘をさす。


 薄いピンクの大人物の傘。


 十七歳の一凛に大き過ぎることはない。


 家を出て一つ目の角を曲がると颯太(そうた)が黒い傘をさして待っている。


「おはよう颯太さん」


「おはよう一凛ちゃん」


 二人は並んでバス停に向う。


 三ヶ月まえ一凛は颯太に告白された。

 

 中学の時からずっと好きだったと。


 一つ年上の颯太を一凛も中学のときから知っていた。


 自分の入学した高校に颯太がいることを知ったのは、入学式の当日だった。


 生徒代表として挨拶する颯太は輝いていた。


 中学の時も女子から人気があったが、高校ではそれをはるかに上回っていた。


 そんな颯太にいきなり告白されて一凛はただ驚いた。


「他につき合ってる奴とか好きな奴がいないんだったら、とりあえずでいいから俺と付き合ってほしい」


 そこまで言われると断れず、颯太の堂々とした態度は男らしくて好感がもてた。


 一凛が颯太とつき合うようなって、興奮したのは一凛自身よりも周りの女子たちだった。


「イケメン生徒会長を彼氏にするなんて、羨ましすぎる」


 そう言われることは少なからず一凛の自尊心をくすぐった。


 素直に一凛を羨む女子もいたが一凛を妬む女子も多かった。


「たいして可愛くもないくせに」


「すぐにフラれるに決まってる」


 その話を聞いたほのかは手鏡をのぞき込みながら言った。


「そんなの一凛が可愛いから嫉妬してんだよ、ほっときなよ」


 ほのかの通う高校は校則がゆるいのか、ほのかはうっすらとメイクを施し、髪はゆるいパーマをかけ明るい色に染めている。


 最近はつき合いだしたばかりの武(たける)くんとラブラブだ。







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