第二話 謁見、そして確認
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どうしよう。私の事を知っているであろう国のお偉いさん方が、目を合わしてくれない。国王に至っては、困惑したような表情を浮かべている。
まあ、そうなっても仕方がない。服装は違えど、他国の『勇者』である私がこの場に居るのだから。
「……」
――とりあえず、どう挨拶するべきよ。
――
国王とそう視線で会話する。
まあ、何の解決にもならないのだが。
さて、どう名乗ったものか。
「セナ。
とりあえず、無難に(言い方を変えて)そう名乗っておく。
余計な情報は何一つ言わない。少年たちから余計な詮索されたくはないから。
「いや、もう本当に申し訳ない。お二方には、巻き込んでしまったお詫びとして、身を守るための
何らかのフラグにしか思えないのだが、それで外に放り出したら、
というか、巻き込まれた青年の方が実は勇者だとか、少年より凄いチート持ちである可能性もあるから、下手に一人にしない方がいい気もするのだが、少年も少年で一人にして何を仕出かすか分かったもんじゃない。
「ところで、僕たちの召喚理由とは何なのでしょうか?」
「ああ、それなのだが……」
陛下。こちらをちらちら見ながら説明しようとしては駄目です。
「いや、本来なら、魔王退治に向かってもらおうかと思っていたのだが、一足先に他国の勇者殿が倒してしまわれてな」
「つまり、俺たちの召喚は無駄になってしまったと」
「否定はしない」
陛下の言葉に続けるかのように、青年が告げるが、私も口を挟ませてもらおう。
「……結論。本来なら間に合っているはずが、タイムラグが発生したことで私たちは今この場に呼ばれ、現在に至る、と」
「まあ、そういうことだ。本当に申し訳ない」
私の言葉に乗ってはくれたらしいが、申し訳なさがあるためか陛下が謝罪し、その場の貴族たちは困惑するばかりである。
不用意に頭を下げるな、などと言わない辺り、陛下がどう思われているのかがよく分かるのだが――
「他国の様子は、どうなっているんですか?」
「他国か? 今代勇者の召喚国――レレイラは、先日、勇者を無事に送還したと報告が、あったばかりだ……」
……へぇ、
あと、陛下。何もしませんから、その汗は止めましょうか。
「え、帰れるんですか?」
「ああ。基本的に召喚陣がある国は、送還の陣もある」
「そうでしたか……」
少年よ。安心してるところ悪いが、必ず帰れる保証はないぞ。私みたいにな。
「ただ、今すぐは無理だ。今すぐとなると、精々一人が限界だ」
「となると、その間にこの国で何をするべきか……」
魔王がいない以上、魔王退治など不可能である。
手っ取り早く、ユリフィールに会えれば良いのだが――と私が考えている間に、謁見時間は終了らしい。
まあ、陛下も忙しい合間を縫って私たちと会ったんだから、強制終了されても文句は言えない。
「それで、結城さんたちはこれからどうするの?」
謁見の間を出てから、少年に問われる。
「どうしよっかなぁ。まあ正直、魔王退治しろって言われても、すぐには返事できないだろうし、魔王が居なくて良かったよ」
「だねぇ。僕としては、やってみたかったってのもあるけど」
「……危険な旅になるかもしれないのに?」
「それでも、だよ。せっかくの異世界なんだしさ」
――つまり、彼は魔王が退治されていなかったら、魔王退治の旅を引き受ける気だったと? 私たちの了承もなく。
確かに、今居る場所は異世界だ。けど、ゲームなどではなく、現実なのだ。
「っ、」
彼に、分からせる方法など、今の私にはない。
勇者であることを打ち明けたとしても、話を聞こうとしてくるはずだ。きっと、夢みたいな旅物語を期待して。
一刻も早く元の世界に帰りたいと願った私の気持ちすら考えずに、次は次はと促されるのが、想像できる。
『――頼む。もし、我を……』
魔王も、一国の『王』というだけあって、国民である魔族を思いやり、家族を守ろうとした。
人間たちの希望として、刃を振るわざるを得なかった、
だからもし――
「私は君みたいに、自ら危険地帯に足を突っ込もうとはしたくないよ」
「大丈夫だよ。何かあっても、僕が守ってあげるから」
にかっ、と笑みを浮かべた少年に、私は何を言っても駄目だと判断した。
出来れば、何歳か年上だろう青年に期待したいところではあるが、彼が何をどう思っているのかが分からない。
「じゃあ、仲間一人を囮や犠牲にしないと全員が助からないような場合は、どうする?」
「誰か一人を見捨てるなんて、そんなこと僕は出来ないよ」
だろうね。
同じ質問を青年にも振ってみる。
「貴方は?」
「……ん? ああ、俺か。誰か一人を囮や犠牲にしないといけないのなら、そのときの状況次第だな。相手を騙せそうな手があれば利用し、もし無ければ――」
青年は告げる。
「誰かを、差し出さなくて良い方法を考えるだろうな。もしくは、相手を倒す」
まあ、良いか。
「とりあえず、ゲームとかじゃない、現実を受け入れようか」
彼の言葉を借りるなら、せっかくの異世界――剣と魔法の世界なのだから。
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