第一話 まずは世界の説明を


 うん、もう何と言うか、やっぱり魔王なんていないし、私が勇者活動していた世界だったよ。

 だって、空気も魔力も以前まえと感じが一緒だったし。


 そして、今は勉強の時間。

 この世界の名前はユリフィール。この世界で、広く信仰されている宗教を司る女神の名前であり、現在私がこうなっている元凶でもある。

 つか、途中まで帰れそうだったのに、『はい、お前こっちね』と言わんばかりの引き寄せられたような感覚を私は今も覚えている。

 もう、お前が一緒に旅をしろ。そうすれば、全てが丸く収まる。


「……すごいやる気だね」

「あれは、やる気なのでしょうか……」


 残念、後輩勇者君。

 疑っている姫様が正解だ。


 さて、話を戻すとして。

 現在いるこの国――アルトリアは自然に溢れた国ではあるが、北西から北東にかけて、大きな森林が存在している。国境を明確にし、国への侵入を阻むかのようなその大森林は、モンスターが蔓延はびこっており、時折騎士団が生態などの調査や討伐に向かうのだとか。

 そのため、この国へ入国する際には、大森林とは反対に位置する南側をオススメする。真東や真西でも良いのだが、それでもモンスターには遭遇するし、何より足場が所々ところどころ悪い。街道の整地が進められてはいるが、まだまだ完了には至っていない。

 つまり、この国の北から入国する、大森林へ入っていくということは、自殺行為に等しいのだ。それがたとえ――『勇者』という存在であろうと。


 なお、私が勇者として召喚された国ことレレイラだが、あそこもあそこで少々厄介な問題を抱えていたりするのだが、その点については追い追いするとして、だ。

 正式名称『海上国家 レレイラ』。

 周辺を海に覆われ、海の上に出来たとされるこの国だが、実際は大陸から分離したことによって出来た国の一つであり、四季があったり、簡単に魚介類が手に入ったりと、ぶっちゃけ日本とそう変わらなかったりする。

 だが、『海上国家』と名が付くだけあって、海関係の戦に関しては強い強い。それ故か、航海等の許可を得た海賊たちが多く、違法な海賊が少なかったりする(まあ、許可持ち海賊が違法海賊を捕らえたりして、役人たちに自分たちに対する株を上げたりしている部分もあるのだろうが)。

 そして、入国方法だが、隣接する大陸から出ている定期船等で入国可能である。他にも少しばかり珍しい飛行船もあるから、それを使うのも手ではある(なお、飛行船は珍しいこともあり、料金がお高め)。


 この世界で使用される主な通貨は『イェル』。一イェル=一円換算であり、大陸によって通貨は違うが、レレイラと隣接する大陸での通貨は『イェル』である。

 現在地である『アルトリア』は、通貨が変わる境目でもあるからか、『イェル』『イェーン』『チェル』という三種類の通貨が利用されている。イェル以外については、『ドル』などの外国の通貨を想像してくれれば良い。

 というか、もしそれ以外に通貨があったとしても、その三つとレレイラがある地域で使われている『レーン』『レイル』の二種類が使われている、計五種類のところしか旅していないから、はっきり言って、私は知らない。


 私たちが召喚されたことから分かるように、この世界には魔法も存在している。

 『火』『水』『風』『土』『光』『闇』の六つがメイン属性であり、『水』の派生である『氷』、『風』の派生である『雷』、『土』の派生である『草』、そしてどれにも属さない『無』の十種類が現在確認されている属性である。

 私の場合は、『光』と『火』と『水』の三種類。『火』の代わりに『風』が欲しかったというのが正直なところだが、無いものねだりをしても意味が無いので、せっかくの魔法だし、と楽しんだことはある。

 ちなみに、『転移魔法』と『召喚魔法』は『無』に該当しており、『無』の使用者でないと、転移も召喚も不可能らしい。

 なお、魔王は『光』以外の全属性が使えるとか。それを知ったときの反応だが、『……それ、勝つの無理じゃね?』と思っても仕方がなかったと思う。


 ――とまあ、いろいろと説明はしてみたが、姫様は私たちにも説明しているようで主に少年に対して話しているから、世界についての説明以外は聞き流していたのが現状だ。


「殿下。陛下のご用意もお済みになったこととのことで、勇者様たちを謁見の間へご案内するようにと」

「分かりました」


 迎えに来たであろう騎士の言葉に、「それでは、皆さん。向かいましょうか」――王女様が、私たちに向かって、そう告げた。


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