第2話 雑草というのは、その美点がまだ発見されていな植物だ

 入学から数日がたち、圭佑は駅前のカラオケに来ていた。

昨日中村から連絡が入り、入学式に行けなかったカラオケに明日行こうという内容だった。

特に用事もなかった圭佑は行くことにしたのだった。


 「羽柴くん歌上手いね、びっくりしたよ」


 話しかけてきたのは、隣の席の柳瀬ひとみ《やなせ》だ。

柳瀬はショートヘアーの美少女である。

その美貌には圭佑もドキッとさせられてしまう。

加えてボディータッチも多いのでこれで多くの男達はいちころだろう。


 「そんなことないよ、中村のほうが断然うまい」


 「あぁ、中村くんはちょっと異常だよね。うますぎ」


 そう、何を隠そう中村は全国放送の歌唱番組の一般の部で優勝してしまうほどの歌唱力だ。

中村に歌唱力で勝とうなんて100万年あっても足りない。


 「そうだ、私明日友達の誕生日プレゼント買いに行くんだけど羽柴くんも一緒に来てくれない?」


 「え?そういうのは女子といったほうがいんじゃ・・・・・・」


 「女子の意見なんて私がいればいいじゃない、男の人の意見も聞きたいの。それとも明日何か他に用事あった?」


 「それは大丈夫だけど」

 

 「じゃあ決まりね!あ、連絡しなきゃいけないからメアドと携番交換しよ」


 柳瀬の勢いに流され買い物に付き合うことになった。

そのことに関しては圭佑にとってさしたる問題でもないのだが、問題なのは・・・・・・。


 「はい、これで交換できた。時間とか待ち合わせ場所は後で連絡するから」


 「あ、ああわかった」


 これが圭佑の生まれて初めての女子との連絡先の交換だということである。



翌日



 曇り空、もう少しで一雨来そうだなあと考えながら圭佑は駅前で柳瀬ひとみを待っていた。


 「おまたせ!ごめん遅れちゃった」


 「いや、俺も今来たところだよ」


 さっそく待ち合わせの時のテンプレが発動した。


 「じゃあ、行こっか」


誰が見てもお似合いな美男美女カップルに周りの人々の視線が自然に集まる。


 「え、ここって・・・・・・」


 「うん!」


 「いや、うんじゃなくて」


 柳瀬が連れてきたのは映画館の前だった。


 「プレゼント探すのに一日かけるわけ無いでしょ。まずはちょと遊ぼうよ」


柳瀬が言ったことは最もだが、圭佑は女子と出かけた経験が皆無のためあたふたしていた。


 「あ、これなんかどう?」


 指が指されたされた方を見ると、圭佑も前々から見たいと思っていた恋愛物のアニメ映画だった。

 

 「いいと思う、じゃあ俺がはら・・・・・・」


 「いいの!私が誘ったんだから私が払うの」

 

 「いや、でも女の子に払わせるわけには・・・・・・」


 「いいってば、もぉ堅いんだから」


 「わ、わかった。でも昼飯は俺が出すよ」


 柳瀬は一瞬驚いた顔をしたが、笑顔で頷いた。



 「はぁ〜おもしろかったね。私もあんな恋愛してみたいな」


 「柳瀬は好きなやつとかいないのか?」


 「いるよ」


 けろっとした顔で答える柳瀬に圭佑は疑問をいだいた。


 「じゃあ、俺なんかと出かけててそいつにであったらまずいだろ」


 「その心配はないのだ」


 何を根拠にそんなことを言っているのか圭佑にはわからなかったが柳瀬のあまりにも可愛い仕草にみとれてしまい続けて質問するタイミングをなくしてしまった。


 「それじゃあそろそろお昼食べに行こ」


 「そうだな」

 

 雨が本格的に降ってきたので二人は一番近くにあったファミレスに入った。

食事をしながら談笑していると・・・・・・


「あぁ!髪の毛入ってんじゃねぇか!おい、店長呼んでこい店長をよ!」


いかにも悪人ヅラの二人組の男が叫び始めた。


 「お客様どうかなされましたか?」


すぐに若い高校生ぐらいの結構可愛い定員がやってきた


 「どうもこうもねぇよ!髪の毛入ってんだよ!って、お前結構可愛いな。お前が俺らとこれから遊んでくれるっていうんだったら許してやってもいいけどな!」


がはははと下品に笑う客を見て圭佑はどうしようもない怒りを覚えていた。

あの笑い方は嫌いだ。

自分が全てだと思い込み他人を蔑むような笑い声、おそらく髪の毛も自分たちで入れたのだろう。


 「あ、あの、それはちょっと・・・・・・」


 「あぁん!俺らと遊べねぇってのか、んじゃあこのメシ代ただにしてくれるんだろうな!」


 もはや言っていることがメチャクチャである。

圭佑はいつの間にか男たちの前にいた。


 「あんたらうっせぇよ、半分以上食ってから飯代ただにしろっていうような心の狭い野郎にこんな美少女がほいほいついていくわけねぇだろうが!」


 店内は静寂に包まれた。

圭佑の整った顔立ちと筋肉質な体を見た男たちは一瞬キョトンとしたか終えお見せたがすぐにもとに戻った。


 「あん?てめぇには関係ねぇだろうが!だまってろガキ!」


 「あんたらのほうがよっぽどガキだよ、関係ないって?うるせぇつってんだろうがよ!周りに迷惑かかってるんだ関係ねぇわけねぇだろ!大体髪の毛だってどうせ自分らでいれたんだろ」


 「なんだ——」


 「僕みた!その男の人が髪の毛入れてるところ」


男が圭佑に反論しかけた時に一人の小学生ぐらいの男の子が叫んだ。


 「俺も見た」


 「私も」


それに続いて今まで怖くて声を上げれずにいた何人かが証言した。


 「な、うるせぇ」

 

 そこへ店長が現れた。


 「お言葉ですがお客様、当店のコックはみなはげております。加えてウエイトレスはバンダナで髪をすべて覆い最新の注意を払っています。髪の毛が入るわ毛がありません。ましてやそんな赤く染まった縮れた髪の毛なんて・・・・・・そんな髪型の店員はうちにはいません。あぁ、あとあなたがたは他のお客様に多大な迷惑をかけたのでことの店には立入禁止と致します」


 「な、お、覚えてやがれ!」


 典型的な悪役のセリフときっちり代金を置いて男たちは逃げるように店から出ていった。


 「ありがとうございました。あなたのおかげで助かりました」


 店長が頭を下げてきた。


 「いや、俺だけじゃどうにもなりませんでしたよ、この一番最初に証言してくれた男の子のおかげです。君、ありがとう」


 「うん!」


元気に、そして誇らしげに返事をした男の子はとてもかわいらしかった。


席に戻ると柳瀬が話しかけてきた。


 「なんであそこで突っ込めるのよ、いつか殴られんじゃないかってビクビクしてたわよ」


 「ごめん、昔ちょっといろいろあってああいう人を馬鹿にしたような人を見るとカットなちゃうんだ」


 「あの、を守りたかっただけじゃないの?」


そう言うと柳瀬は急に不機嫌になってしまった。


 「なんでそうなるんだよ、確かにあの店員は可愛かったけど、それをいうんだったら柳瀬だって可愛いじゃないか」


 「な!そ、そんなことだれにでも言うからライバルが増えちゃうんじゃない」


最後の方は声が小さくて何をっているのか聞こえなかった。

料理を食べ終え店を出る頃には雨も上がり、柳瀬の機嫌もなおっていた。








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