巨大ヒル

 俺がリンチにあったあの時、怒ったニフェがソタの足を射ったらしい。

 そのまま、動いたら殺すと脅しながら俺を回収し逃走。


 当然だがソタロールとの関係は険悪なものとなった


 こちらからも手を出してしまったのだ。向こうも遠慮してこないだろう。

 ニフェカラントの二の舞いにならないよう、ソタロールがいるところは徹底的に避けることになった。


 奴等の姿を一人でも見かけたら即止めて引き上げる。

 折角準備してきた道具が無駄になるがどうせ横取りされて終わるのだ。


 そうしているうちに、面白いことがおきた

 最近鰻上りだったソタロールの経歴がみるみるうちに落ちてきた。


 いかに奴等が甘い蜜を吸っていたのかよくわかる。


 俺達はもともと横取りされていたので、今の状態になっても全く変わりない






 この日も巨大ヒルの討伐に向かっているとソタロールの姿を発見した。奴等はターゲットとの戦闘中だった。

 珍しいこともあるものだ。


 いつもなら俺達がターゲットを探し追い詰めた所で、ソタロール登場となっていたから。

 大変なところは俺達がやり、美味しいところだけを持っていかれる。本当腹立たしい


 だが今回は先に奴等が戦っていた。


 始めて見るソタロールの戦い方は、酷いものだった

 下っ端が主に前に出て戦う。盾になり相手の気を引き隙が出来た所をソタ達上の者達が攻撃する。

 代わりなんていくらでもいるのだろう。下っ端が犠牲になってもソタ達は気にもとめていないのがわかる。


 相手は巨大ヒルブプレノルフィンだ。

 田畑を荒らし人を丸のみにする。

 いくら武器で突いても斬っても、ブヨブヨな体は傷つかない。魔法も寄せ付けない。


 下っ端が次から次へと犠牲になっているのを見て顔をしかめる。

「なに?あいつらさっさと倒せばいいのに!」

「もしかして弱点知らないんじゃない?」

「まさか。この道のプロだろ」


 だがいくら眺めていても弱点をつく様子はない。


「下調べも無しかよ」

「また俺達の横取りをするつもりだったんじゃない?」


 だから下調べも無しに赴き、俺達より先に遭遇してしまったと。


「なるほど。ありうる」

「馬鹿にしてるわ!」


 最初から俺達頼みな上横取り前提とかナメ腐っている。俺らはさっさと引き上げた。

 下っ端の悲鳴が聞こえるが助ける気なんて更々ない。


 次の日、討伐依頼の紙は貼られたままだったので、ソタロールは討伐に失敗したのだとわかった。


 次の日も次の日も。奴等はどうやらあれの倒し方がわからずにいるらしい。

 あんなに大勢大人がいて、ベテランのチームのくせに情けない。

 俺達なしじゃ、手も足も出せないでいるとは。


 ああ、飯がうまい。



「よう、最近は狩しないのかよ」


 滞在先の町で食事をとっていると、わざわざソタの野郎が声をかけてきた。


 ぴりりと緊張が走る。


 さすがに街中では手荒なことはしてこないとは思うが

 全員応戦の体制にはいった俺らをみてソタは笑う


「おっと、そんな殺気立つなって。前は悪かった。ちょっと悪戯が過ぎた」


 よく言うぜ。心にもないくせに


「年甲斐もなくお前たちの才能に嫉妬してついな。いや恥ずかしいな。あの時、嬢ちゃんに噛みつかれて目が覚めたのよ。もうやらねえから、お前たちも伸び伸びと狩をしてもらいたい」


 嘘つけ。

 俺達なら弱点を知ってることを見越して声かけてきたんだろ。


 何度か俺達も討伐に向かったが後をつけられてることに気が付きすぐに引き返した。

 俺達に狩をさせ、また手柄を横取りしてやろうというのが見え見えだ


 誰がその手にのるか。ばーか。


 全く話に乗って来ない俺達を見たソタは舌打ちを残して去っていった。



 これは相当手こずっているらしい。

 あれだけの人数で挑んでいつまでたっても倒せないソタロールは、評判も信用もがた落ちだ。

 今のトップになってから、一度もⅡ群を出していないのはソタが無能だからだという噂が飛び交っている。

 それは、焦るだろうな。いい気味だけど。


 ここで他のチームが現れて倒してしまうと、ソタロールの面目丸つぶれになるためか奴等はずっと囲い込んでいる。

 他のチームがそこを避けているのをみると皆ソタロールの不興を買うのは御免と思っているのだろう。


 俺達は奴等が諦めて立ち去るまで待つことにした。



 のんびりと適当な依頼をこなして、ソタロールが手を引くのを待っていると俺達の前に知らない爺さんが現れた。


「はやく、やっつけてくださらんか」


 突然乗り込んできたこの爺さんは、そのまま俺達に縋りついて来た。


「このままじゃ、わしらは飢えて死んでしまう」


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