格が違う(アトル視点)

 CCブロッカーの皆にお願いしてクロのいる間は剣の修行の方に専念させてもらえることになったのだが、クロは一週間もしないうちにまたすぐ出かけて行ってしまった。



 くそっ



 剣を教えてくれるっていう約束はどうなったんだよ


 こんなことじゃあ、秘密厳守の約束は守れないぞ?




 秘密をばらしてやろうか






 そう思ったところで、はたと気が付いた。クロが強盗だとキクに話したところで意味がないことに。




 それだけの信頼がすでに俺たちの間で出来ている。それになんのための暴露だ?


 クロを追い出すためなら、もうすでに叶っている。




 俺はクロにもっと家にいて欲しいのだ。



 近くにいる時はそこまで気にならなかったのに、離れるほど格が違うことを思い知らされる



 あのラクタムで出会ったのⅠ群の三人だってそうだ。


 クマリンのどこに、町中の人を操れる奴がいる?そこら一帯の地形を変えるくらい吹き飛ばせるやつがいる?




 せいぜい、大きな火の玉を出すくらいだ。それでも大絶賛される






 クロはイニド姉弟を大したことないと評した。あれくらいはたくさんいると。


 あの感覚はクロだからこそだ。




 普通の人の目線から見たら、イニド姉弟は確かに「天才魔導士」なのだ。


 ジルはバリアは疲れるから嫌だと言っていた。一方向でも短時間しかもたないと。




 今イニド姉弟に合えば、俺の見方も変わっていただろう。


 全方向バリアを張りながら火の玉を連射する姿をみるだけで、びっくり仰天だ。


 その上消滅魔法など見せられた日には、尊敬していただろう。






 ……いや、それはいいすぎか。


 頭悪かったし。キクの罠で宙吊りなってたし




 フランに登録してから俺が知ったことは


「Ⅰ群」というのが雲の上の存在であり滅多にお目にかかれるものではないと言うことだった。




 そのⅠ群のクロに剣を教えてもらえてるなど、光栄なことだ


 一緒にいるクロがあまりにぶっ飛んでいるためマヒしていただけで、あのラクタムの出来事は、自分には過ぎた経験だったのだ。




 クロは当然のように見えないほどの速さで動くが、なんだそれ


 どうやってるんだよ。本当に人間かよ




 一緒にいると、そんなに凄そうには見えないんだけどな。




 キクに振り回されてるし、寝起きは悪いし、女に迫られて参っているし、情けない姿ばかり浮かぶ。








 あこがれは強くなる。




 俺もいつかクロの隣に立ちたい


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