まいったか(アムロ視点)


 朝迎えに行くときは俺だけ森の入り口でお留守番。帰りも家によることなくアトルを下ろしてさっさと帰ることになった。




 ちっくしょう!こんなはずじゃなかったのに。


 ほんのちょーーっといたずらして、俺を雄として意識してもらおうと思っただけなのに。


 いやまあ、いけそうならいってしまおうとは思っていたけど。




「あーもう、キクちゃんに会いてー」




 かれこれ一か月以上会っていない。


 キクちゃんのつくったお弁当を食べながらぼやく。


 あの後も俺のぶんのお弁当をちゃんと作ってくれている。超うめえ。




 アトルを下ろした後の帰りの馬車の中でも「もう十分ほとぼりも冷めただろうからいいだろう」と訴えてはみたが


「いい加減にして!アムロがお菊さんにちょっかい出すせいで、アトルの機嫌が悪くなるんだから!」


「ベラもね」と言ったジルが殴り倒される。


「私もおキクちゃんのご飯がたべたいのに。アム兄のせいで」


 と逆に文句が返ってきただけだった。




 どうにか、謝る機会をつくってもらえないだろうかとこっそりジルに相談してみる




「もう諦めなよ。どうみてもあの二人は両想いじゃないか。かき回したらかわいそうだ」


「でも恋人じゃないんだろ?ならまだチャンスはあるわけだ」


「そう思ってるうちは、会わせれないよ」




 そういって断られた。なんなんだよクソ。友達甲斐のないやつだ。












 もう、こうなったら強硬手段だ。


 朝アトルを迎えに行った皆の後をそっとつける。


 久しぶりのキクちゃん家だ。相変わらず畑には作物がたわわに実っている。ああ、のどかだ。




 久しぶりに見るキクちゃんはあいかわらず可愛かった。


 皆に気づかれないようにジル達の後ろに静かに加わる。


「!」


 すぐ俺に気が付いたキクちゃんは、銀髪を翻し奥へと逃げて行ってしまった。




 あっ!




 追いかけようとするがニフェとベラに取り押さえられる




「こら、アム兄!」


「ちょっと!何ついてきてるのよ」




 ああ、もう邪魔するなよ。俺はなんとか彼女と和解したいんだ。




 入り口で揉めているとキクちゃんがほうきを持って現れた。




「よくわしの前にその面をだせたものじゃの」




 青筋を立てて俺に近付いてくる。




「キクちゃん、待って!話せばわかる」


「問答無用じゃ!!」




 箒をふりあげ襲い掛かってきた。




「ひいっ」




 慌てて逃げる俺を箒をブンブン振り回しながら追いかけてくる。




「自分で着せておいて、なあにが『気持ち悪くて脱がせたかった』か!馬鹿にしよって!」


「言ってない!言ってないって!!」




 どうしてそんな話になっているんだ!?




「とっても似合ってたって!!」


「まだ言うかーー!!」




 更に勢いを増して箒を振り回してくる。


 しばらく追いかけっこが続いたが、現役剣士とずっと家にいる女の子では体力が違った。


 先に体力が切れたキクちゃんの足が止まり、肩で息をしている。




「あんたらも黙って見てないで捕まえんかい!!」


 玄関で傍観しているジル達を振り返り、キクちゃんがそう指示をだした。




 いやいや、アイツらがそんな指示に従うわけ……




 三人がジリジリと俺に近付いてきた。


「お前らどっちの味方だよ!」




「あんたの味方じゃないのはたしかよ!」


「だって、ご飯食べられなくなったら嫌だし」


「おキクさん怒らせたら怖そうだし」




 アトルは知らんぷり。


 あっさり仲間に見限られた俺は、取り押さえられキクちゃんの前に連行される。


 無理やりお尻を突き出した格好をさせられ、二、三回の素振りの後、箒がお尻にそっと当てられる。




 そして




 バチコーン!!!




「あいたーーーー!!!」




「参ったか!悪ガキが!!」




 強烈な一撃に「まいりましたー」とお尻を押さえながら地面を転がった。




 無様な俺の姿を見て全員クスクスと笑っていた。




 くそー覚えてやがれ




 醜態をさらした俺は、なんとかキクちゃんに許してもらえ出入り禁止は解除された。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る