出入り禁止(アムロ視点)

「アトルの奴~~~手加減なしできやがって。俺は年上だぞリーダーだぞ」




 怒ったアトルとキクちゃんは二人で帰ってしまった。


 共同フロアでベラが俺の手当てしてくれている。




「これくらいで済んでよかったねえ。アム兄。殺されてもおかしくなかったよ?」




 なんで手当かというとジルが治癒してくれないのだ。




「少し反省したらいいよ」とまったく動く気配がない。




「はい!おしまい!」とベラがわざわざ包帯を巻いてくれたところを叩いてきた。


「いって~~~~~~~!!!!」


 何するんだ!!と文句を言おうと顔を上げると、ベラが冷たい目で俺を見下ろしていた。




「子供に手を出すなんてサイテー!!」




 子供って……もう子供産める歳になってるだろ




 一般的には15歳で成人になる。だが女は初潮がくれば結婚できることになっている。


 子供が生める=大人ということだ




 たしかに俺は焦っていたのかもしれない。なにせ手応えが全くないのだ。


 こんな手応えの無い相手は初めてだ。




 たぶん俺は男として意識してもらえていない。問題はそこだ。そこからだ。


 まあ、まだ子供に毛が生えたくらいな歳だ


 男と女の性の駆け引きとか、知らなくても無理はない。






 それなら、少し手荒だがショック療法をつかってみようと考えた。


 さっそく俺の部屋に誘うと、全く無警戒についてきた。




 悪い子だなあ。


 いくら賭けで負けたとしても、こんなところまでついて来たら駄目だぞ?






「男が女性に洋服をプレゼントする意味って知ってる?」




 この服はクマリンのショーウィンドウに飾ってあったものでキクちゃんに似合いそうだなとずっと目をつけていた服だ。賭けに勝った権限で嫌がるキクちゃんに着せることに成功。その後もお店の人にお任せで全身コーディネイトしてもらった。


 出来上がった姿を見て俺の見立ては間違っていなかったと確信した。


 大衆感が吹き飛び一気に垢ぬけた。恥ずかしがって身を縮こませている姿がまたいい味を出していた。








「その服を脱がせたいって意味なんだよ?」




 ずっとうつむいているキクちゃんの耳元でそっと囁く。




 俺の言葉を聞いて彼女は顔を上げた。そして驚いた顔でこちらを見てくる。


 赤い瞳をぱちくりさせて、すごい可愛い。




 ちょっと脅かすだけのつもりだったけど、このまま……






「そんなら最初から着させんときー!!」




 沈黙を切り裂きキクちゃんが叫んだ。


 さっと服を掴むと、がばっと頭から一気に脱ぐ。彼女自らだ。




 え?




 目を丸くする俺のまえで白いスリップが姿を現した。


 あまりの光景に、俺の方が動揺する。




「全く!なんちゅう、嫌がらせか!!」




 そのまま脱いだ服を床にたたきつけた。




「こんなのきて町を歩いておったなんて良い笑いものじゃ!!」




 靴も靴下も脱ぎ捨て裸足になり、もう見るのも嫌というように端に追いやり、手をパンパンとはたいていた。




「あー坊なんて、ずっと他人のフリして目も合わせようとせんかったわ!」






 皆にお披露目した時、彼女は俺の後ろに隠れて「ほらみい。退いておるじゃろが」と恥ずかしさに震えており、その後も周りの目を気にしてずっとおとなしかった。




 何をそんなに恥ずかしがることがあるのか。とっても似合っているのに。




「照れてたんだよ、君があまりにも可愛すぎて」


「そんなわけなかろう!ええ歳してこんな格好して頭イカレとると思ったんじゃ!」




 ぷんぷん怒って外に出て行こうとするので、俺はあわてて追いかけた。


 いやいや、さすがに下着姿で廊下あるくのはまずいでしょう。




 かわいい服は恥ずかしくて、下着姿は恥ずかしくないのか


 わけがわからん!




 大丈夫だって!恥ずかしくないって!




 とにかくなんとか部屋に戻そうとしていると






 後ろに、黄金の戦士が立っていた。











「皆誤解してるって。俺怒られるようなことしてないからな」




 誤解だと説明したが「そんな話信じれるわけないでしょ!」と誰も信じてくれない。


 完全に強姦未遂犯あつかいだ。




 まあ下着姿の女の子が泣きながら出てきたら、そうとしか見えないだろうけど。






 あれは自分で脱いだんだからな。マジで。俺指一本触れてません。信じられないだろうけど。




 アトルの方を見ると「あちゃー」と言う顔をしていた。


 え、何、信じてくれてるのか俺の話。




 アトルが一番信じないと思っていたのに意外だ。




「アムロはもうお菊さんに近付かないほうがいいよ」


「あんなことされたらトラウマよ!」


「あんなに泣いちゃって。お菊さんかわいそう」




 俺への援護射撃を期待してアトルの方を見る。


 俺視線に気が付いたアトルは表情を改めた。




「……だな」




 ぬわあにが「だな」だ!乗っかる気まんまんかコイツ。


 くっそーー!!何もなかったことわかってるくせに。


 俺の無言の訴えから目を逸らし素知らぬ顔をしやがった。




 こうして俺は、アトルの家の出入り禁止になった。


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