ジル=チアゼム

 俺の名前はジル=チアゼム


 「CCブロッカー」の回復役やってます。



 最近、CCブロッカーの雰囲気があやしい。

 あのアホたれが、お菊さんに惚れたからだ。


 あのアホたれ、アムロ=ジピンは俺の幼馴染だ。

 自然と妹のニフェ=ジピンとも幼馴染となるが。


 最初は俺とアムロの二人でパーティを組んでいたのだが途中でニフェたんが加わり、丁度俺が治癒魔法を教わっている時に知り合ったベラと偶然再会し、アムロが勧誘した


 アムロは結構女癖が悪い。


 二股かけるとか、人の女に手を出すとかはしないのだが、基本狙った女は逃さない。今のところ全戦全勝、必ず口説き落としてみせる。

 女を落とすためなら努力を惜しまない。

 非常に情熱的であの手この手と女を喜ばせる方法を考えて実行に移す。

 アムロのどこが悪いのかと言うと

 落とすまで非常に燃えるのだが、落とした後燃え尽きるパターンが多いのだ。


 いわゆる、釣った魚に餌をやらない系だ。

 見ている分には面白いのだが、女の方は堪ったもんじゃないだろう。


 俺?俺は昔からニフェたん一筋さ。


 狩をしている時はみんな普段通りだから問題ないのだが

 お菊さんが加わると、一気に雰囲気が変わる。


 アムロが周りの空気を読まずにお菊さんにべったりになるからだ。


 それを眺めるベラのシラケた空気がひどい。

「何アレ。ヘラヘラしちゃってかっこ悪い」


「ベラさんベラさん、それは嫉妬かにゃー?」

 というと殴られた。


 そして一番の問題は、アトルっちのお菊さんへの当たりがひどくなることだ。


 お菊さんの方を全く見ないし口もきかなくなる。彼女への態度もイライラトゲトゲしている。



 俺達が帰った後は大丈夫だよね?ちゃんとしゃべっているよね?


 かわいそうにお菊さんの方はあんなに「アトルっちLOVE」なのに、訳も分からず邪険にされてショックだろうなー

 彼女、なあんにも悪くないのになあ。


 アトルっちー、そんなにつらく当たっていたら愛想つかされちゃうよー?

 慰めてくれるアムロにコロリといっちゃうかもよー?



 かわりに、ニフェたんとアトルっちの仲が最近よくなった気がする。

 ずっと一番下だったニフェたんに弟分ができたものだから、張り切ってアトルっちの世話をしている。

 ご機嫌斜めなアトルっちの気分をかえようとあれこれと話かけ、アトルっちも気を紛らわすためかニフェたんとよく一緒にいる。

 お姉さん風を吹かせるニフェたんかわいい。


 ん?なに?ニフェたんがアトルっちのこと好きなんじゃないかって?

 大丈夫。これはほら、小動物を可愛がるのとおなじさ。


 そうだよね?ね?まさかだよね?



 え?待ってよ。もしそうなったら俺達何角関係になるんですか

 ないない。ないですー。


「ジル兄は、いいの?アム兄放っといて。悔しくない?」

 アムロとお菊さんを指さしながらマイスイートハニーが僕に言ってきた。


「どういう意味ですかな?ニフェちゃん」

「アム兄とジル兄は出来てるんだと思ってた」


 やーめーてー!!








「アトルっちぃ~、もうちょっと素直になった方がいいよ~」


 そういうお年頃なのはわかるんだけどねえ

 後で泣いても遅いんだぞ~?



 お菊さん着飾ってご満悦なお兄様にも

「これ以上はやめといた方がいいよ、アトルっちが爆発寸前だ」

 と一応言っておいたけど、やめるわけないですよねーーー。


 知ってますぅ



 さっそくお菊さんを連れて二人きりで部屋に籠ってしまった。

 俺たちは共同スペースでお茶を楽しむ。


 まあ楽しんでいるのは俺とニフェたんだけで、アトルっちとベラは目が座っているが。


「アトルちゃん、気になる?」

「別に関係ないし」


 ニフェたんの問いにぶっきらぼうに答える


「ふうん。ならいんだけど」


 綺麗な足がお行儀悪くソファに乗せられ、両ひざを抱たニフェたんがフンワリと笑う。


「アム兄手がはやいから」


 あああああ

 ニフェたん地雷



 アトルっちの眉間のしわが深くなったよー。

 脳内でいろいろ想像しちゃってるよー。顔が真っ青だよー目が充血してるよー


 あーあーあー



 アムロの部屋の方から、叫び声が聞こえてきた。内容はわからないがお菊さんの声で間違いない。


 全員弾かれたように椅子から立ち上がり、アムロの部屋へと向かう。

 迷いのないこの走りっぷり。

 皆なんだかんだ言って踏み込むきっかけを探していたんじゃないか。




「なんで、こんなことするんじゃ!」


 駆け付けてみれば、二人がアムロの部屋の前で揉めていた。


 なんとお菊さんは下着姿だ。

 アムロに腕を掴まれながらイヤイヤと首を振って拒否していた。


 嫌がる彼女を無理やり部屋に引きずり戻そうとしているアムロ。


「もう嫌じゃ……もうええじゃろ……もう勘弁しておくれ……」

「大丈夫恥ずかしくないよ。とってもきれいだ。もっと見ていたい。俺だけしか見ないからさ、俺だけに見せて」


 暴れるお菊さんの両手を壁に縫い付けて、アムロが迫る。


 うわお。

 やめてくださいアムロさん俺っち吐きそうです。ゲロゲロ~。

 完全にラストスパートかけてますね。


「こんなのもう耐えれん」


 逃げる術を失ったお菊さんは頬を真っ赤に染めて目を潤ませている。


「恥ずかしがる姿もかわいい」


 いやあポジティブだなあ。さすがアムロ。




 とりあえず、俺の前に立つアトルっちが怖いよーーー

 後ろ頭しか見えなくて怖いよーーー


「ア、アトル……!!!」

 やっとアムロがこちらに気が付いた。




「……何やってるんだ?」


 アトルっちが、地獄の轟きのような声を出した。


「違うんだ、アトル!」


 アムロが慌てて弁解しようとお菊さんの手を離した。


「聞いとくれ、こやつわしを辱めて楽しんでおったんじゃ!」


 アムロの弁解より前に解放されたお菊さんがアトルっちのところへ逃げこんできた。

 おっと足も裸足だ。


「わしが抵抗せん事をいいことに好き勝手しおって」


 涙目になりながらプルプル唇を震わせている



「もう、わし恥ずかしくて生きていけんわ」


 顔を覆いお菊さんは「わーーーー」と泣きながら廊下をかけて行ってしまった。

 いつも思うがあの子の行動はどうしてこんなに野暮ったく感じるのだろうか




 ニフェたんとベラが追いかけていき、男三人が残った。


 あー、うん、アトルさん、やっちゃっていいです。

 死ぬ直前で止めてくれさえすれば俺が何とかするので。




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