日本ではない?
親切な親子に街まで送ってもらい、その上、【フラン】という案内所まで教えてもらった。
早速【フラン】という店に入ってみる。五角形っぽい印のついた看板これが全国共通フラン環マークらしい。
店の中は奇天烈な恰好をした者であふれていた。
毛皮をかぶっていたり、民族衣装風だったり、全身甲冑だったり、逆に半裸だったりと、実に様々だった。
そのほとんどの人が刃物の模造品を身に着けている。
今日はお祭りかの。きっと仮装行列の予定があるのじゃろうな
「!」
前を通った若い女を見て自分の目を疑った。
この女下着姿ではないか
よくみると同じような恰好をした女子を数人見つけ愕然とする。
最近若い子の間で下着が見えるか見えないかの短いスカートが流行っていたがついにスカートまで取っ払ってしまったか!
なんと破廉恥な。
今後の日本の行く末を案じながら奥へ進む
銀行窓口のようなのが並び、中央は待合所のようになっている。
仮装集団は椅子に座り話をしていたり、壁や柱に立ち張り紙を眺めていたり、窓口の前で順番待ちをしていたりする。
なにやら混みあっている窓口とスカスカな窓口があるが、これはどう違うのだろうか。
とりあえず空いてる窓口に行ってみる
「ちょっと道を尋ねたいんじゃが」
暇そうにしているお姉さんに声をかけるととても愛想よく相手をしてくれた。
「あらあら、一人なの?おつかい?」
ここでも一人で歩き回っていることに驚かれてしまった。そんなに危なそうに見えるかの。
「山口県に行きたいんじゃが、どういけばいい」
「ヤマグチケン?ちょっと聞いたことがないわねぇ」
さっきの親子も知らないと言っていたが、日本に住んでてそんなことあるのだろうか。
確かに、目立たない県ではあるが聞いたことくらいはあると思うのだがの。
「ここは日本じゃよな?」
「ニホン?さあ……。ここはクマリンだけど?」
なんと!
ここ熊林は日本ですらなかった。
皆日本語を話しているので日本だと思い込んでいたがまさかの外国!
そういえばハワイ等は外国だが日本語が通じると聞いたことがある。
なるほどのぉ。そういうことか。全てつながった
「まさか外国じゃったとは……。道理でいろいろおかしなわけじゃ」
つまり、帰るためには飛行機にのるしかないということだ。
「空港!空港はどこにあるんじゃ?どういけばいい?」
「次はクーコ?クーコも知らないわねえ」
「クーコじゃない。空港じゃ。飛行機にのりたいんじゃ」
クーコー?へコーキ?と全く話が通じないので、おそらくこの近くでは飛んでいないのだろう
そうだ、電話で息子等と連絡をとればいいのだ。
「電話は?どこか電話を借りれるところはないかの」
「デンワ?」
先ほどまでにこやかだった女の顔が、だんだん曇っていき終いには「私は今忙しいの」と追い払われそうになった。
最後一つだけ教えて欲しいと食い下がり、お金を作りたいから所持品を買い取ってもらえる場所をきく。
例の家でお金を探してみたが見当たらず、かわりにみつけた外国のお金らしきものと、お金に変えれそうなものをいくつか見繕って持ってきたのだ。
やっと知っていることを聞いてもらえて嬉しかったのか、それはもう親切丁寧に教えてくれた。
付き合ってくれた女性にお礼を言いフランを後にした。
いろいろ分かったことがある。
ここは外国で飛行機の飛んでいない国のようじゃ。
それもそのはず、ガスも水道も電気も通っていない暮らしをしているのだからの。
移動も自動車ではなく、ロバ。
飛行機が飛んでるはずがない。
「まいったの」
日本に帰るために、飛行機が飛んでいる国に移動しなければならない。
そのためのお金も必要だ。
とりあえず一朝一夕で何とかならない事はわかった。
仕方ないので、当面は例の家に住みつつ日本に帰る方法を考えるしかない
そんなことを考えてはみたが、正直わしは途方に暮れていた。
知らない異国の地で一人きり。右も左もわからないここで暮らさないといけない。
若い時ならともかく、こんな歳にもなって
これは
キツイ
人の波にのってぼんやりと歩いていると、前方から怒号が飛んできた。
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