2.




次の日、俺は学校の昼休みにクラスで一番仲がいい中島 あきらと牧田 裕輔ゆうすけとカードゲームをしていた。


「俺、昨日バレエを観に行ったんだけど、それが本当にすごかったんだよ。」

カードを一枚引きながら言う。

「え、バレーボール?」

裕輔が言った。

「違うよ。踊る方のバレエ。」

俺がそう言うと彰と裕輔が驚いたように「えっ」と言った。


少しの間だれも喋らなかったが、やがて彰がバカにしたように笑いながら言った。

「俺の姉ちゃんバレエやってるけど、男のお前があれをすごいとか言ったら気持ち悪いよ。お前バレエやるとか言うなよ。」

げらげら笑う彰に腹が立った。

彰は昔から人をバカにしておもしろがるところがあった。

裕輔もつられて笑う。


「もし遙がバレエなんてダサいものをするって言ったら、俺もうお前とは絶対に遊ばない。気持ち悪いから。」

彰がまだげらげらと笑っている。

「遙はオネエになっちゃったんじゃない?」

裕輔が笑いながら彰に言った。


「バレエなんかしないよ。さっきの、ただの冗談だよ。バレエなんてダサいものなんかするわけないだろ。」

二人にはとても腹が立ったが、バカにされたり仲間外れにされるかもしれないことを思うと、怖くて、そう口にしていた。

二人は俺がそう言うと、良かった、と言ってもうバカにはしなくなったが、俺の機嫌は放課後まで悪いままだった。


放課後、彰や裕輔と別れたあと、むしゃくしゃしながら家まで歩いて帰った。

だが、バレエを思い出すと自然と次第に苛立ちもおさまっていった。

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