悪魔 Ⅱ

『悪魔』が一体何者なのか。

その一切は明らかにされていません。

唐突に現れ、人の願いを叶える代わりに対価を要求するということ、それによって発生する被害は例外なく甚大になることだけがわかっています。

そのため、『悪魔』に関わった者は良くて逮捕、最悪処刑されます。



……その『悪魔』は、何の前触れもなく私達家族の前に現れました。

そして、言いました。


――約束通り我は待ったぞ。さぁ、対価を支払え。


何の事を言っているのかわからず、困惑する私達。


父は意を決して問いかけました。一体何の事を言っているのか、と。


『悪魔』は答えました。


――お前の父は我と契約をした。魔法の才を与える代わりに、我に子孫を捧げると。


父の父、つまり私の祖父は私達を売っていたのでした。

それは衝撃的な事実で。

両親はひどく混乱しているようでした。

……けれど、私の中では祖父の事なんて空の彼方へ吹き飛んでいました。


『悪魔』はこう言っていたのです。


魔法の才を与える、と。


……実は、魔法の才能は子供に受け継がれるのです。


つまり、私の魔法の才能は、私の才能なんかじゃなくて……悪魔に与えられたものだった。仮初のものだった。


私は、ただの、筆記試験が平均点の、平凡な、学生。


――私は主人公じゃなくて。脇役だった。




気がつくと、周りは真っ赤になっています。

父は赤い噴水のオブジェに、

母は活け造りになり、

妹は口から手を生やしていました。


私だけが生きていました。

なぜ私だけ殺さないのか。『悪魔』に聞くと


――面白いことがこれから起きる。それにはお前が必要だ。


と、答えました。


何を言っているのか、わかりませんでした。


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