第11話 魅惑のオーパーツ


 2人で順々に階を見て周り上へと昇っていった。

 上にいくほど、建物自体はボロくなっていうようだが、砂の影響が少ないせいか、いたって綺麗に感じた。

 私はというと、1階昇るたびに辺りの風景を写真へと収めた。

 街で住民の写真は容量の都合で消すのに、どうでもいいただの壁の写真なんかでフォルダは溢れ返っていった。

 いいのだ、これは趣味なのだから。

 でも6階まで上がって来たが、特に何も見つからなかった。

 そんな時、7階を見ていたボルドが何かを見つけたらしく、

「ねーちゃん!オーパーツ見つけたよ」

 と上から声をあげた。

 その言葉を聞くやいなや、返事もせずに駆け足で7階へと向かった。

 ボルドが指で示した場所には、銀色を平べったい物が見えた。

「ほら、これ!凄いよ!こんなに鮮明に自分は映るんだよ!!」

 それの正面に立った。

 そこに映し出されたのは、自分だ。

 右手を振ると、それは左手を振り替えした。ピースをすると、また向こうもピースを返した。

 間違いない。かなり前に私が失った鏡。

 それも、それの大きいのだ。

 さすがにもっていくことは出来なさそう。だけどテンションが上がる。

「鏡ね。それにしても、久し振りに自分の姿を見たわ」

 映っていたのは、ミディアムヘアに燃えるような黒色をした髪の毛。目の色はダークブラウンで、誰がどう見ようと顔は童顔に近いような顔立ちだ。

 そういえば私はこんな顔だったなと、そんな事を思った。

 ついでに服は、軍事服のように迷彩柄の服で、何の素材で出来ているは今では分からない。

 この服自体がオーパーツのような物だ。非常に軽くて、通気性が良い。そして何より、非常に丈夫なのだ。

 それに比べ、ボルドの服装は凄い貧相なもので、白い布一枚を羽織っているだけ。

 これが今の世界の標準的な服装。

 私のような格好をしている人は、権力者のような人か旅人ぐらいなものだ。

 鏡を見ながら、はねてる髪を直していた所で、

「ねーちゃんこっちもこっちも!」

 とボルドの声がまたした。

 またもや何かを見つけたらしい。

 同じ7階の、鏡があったすぐそばだった。

「これ見て、これって服?」

 と言ってボルドが指さした場所には、あったのはガラスのケースに入れられた、ふりふりの服だった。

 真っ黒なドレスに近いような服で、昔にこれで街を歩いていたなら相当目立つといったような服だ。

 私はそのガラスケースの周りを一周し、

「服?、、みたいね」

 と疑問形で答えた。

 それに、

「可愛い服だね。でも透明な壁があって取れないんだよ」

 とボルドは言いながら、ガラスをドンドンと叩いた。

「ガラスね。これだけ長い間割れてないわけだし、そうとう強力なのみたいだけど」

 私も軽くこんこんと叩いてみたが、全く割れるような気配は感じなかった。

 何処かに開ける穴でも無いかと探してみると、下の方にガラスに掘られた小さな文字が見えた。


「ロリータファッション:ゴシック黒」


 その言葉を頼りに、記録の書物で調べてみると、どうやら大人の少女服とも言われ、東洋で流行ったファッションらしい。

 こんな服を街で着ていたら非常に目立ちそうだけど、、本当に流行っていたのだろうか?

「ふーん」

「ねーちゃん着てみれば?」

「そうね。まずは、このガラスをどうにかしないとね」

 サバイバルナイフを取り出すと、柄の部分でガンガンとガラスを叩いた。

 最初は軽くだったが徐々に力を加えていき、最後には無我夢中で叩いていた。

 が、びくともしなかった。

「はぁ、はぁ、、このガラスのケースがもはやオーパーツだわ、、」

 ボルドも近くに落ちていた石を使って、投げたり叩いたりしていたが同じようにびくともしなかった。これは厳しいかもしれない。

「うーん」

 鍵穴さえないこのガラスのケース。

 一度入れたら取り出せない、完全なる展示品のようだ。

 もしかしたら、過去にこれを見つけた人も、このガラスを前に破れ去っているからこそ、これだけが残っているのかもしれない。

 ガラスに両手を当て、

「う~ん、、目の前にオーパーツがあるにに、、生殺しじゃないの、、」

 と悔しんだ。

 見かねたボルドが、

「なんか壊すのに特化したオーパーツとかないの?」

 と

提案する。

「あったらとっくに使ってるわよ」

 それからしばらく2人で考え込んだが、有効な手段は思い浮かばなかった。

 一応、台とガラスのケースは分離しているため、重いガラスごと運ぶことはできる。

 だけど、流石の私もこれを持って旅はしたくない。

 既に諦めムードのボルドは、

「一旦諦めて、上も見に行こうよ」

 と提案をしてきた・

 何も思いつかない私は、渋々と乗っかると、さらに上の階へと登っていった。

 このビルは12階建ての建物だったらしく、ついには他に何も無いまま屋上へと出てしまった。

「まだ、砂嵐は続いてるのね」

 屋上へと出ようとした2人は、風によってごうごうと飛んでくる砂を見ながら出るのを諦めた。

 下へとまた戻るのも面倒なので、12階でしばらく休憩をすることになった。

「はぁ、7階以外特に何も無かったわね」

「でも、あの透明な壁が破壊できない限り結局は同じことだよ」

 周囲をなんとなく見渡した。

あるのは、かつては商品が置いてあったであろう大きな棚と、所々にあるのは足が折れたりして、かろうじて原形をとどめているベンチが見える。

 そのベンチの一つの足を蹴飛ばして、長さを調節するとそこへと座り込んだ。

 何も無いと分かってどっと今までの疲れが湧いてきたのだ。

「ちょっと、休むわね」

 そのままそこへと横になった。ボルドも私の真似をして、椅子に腰を落ち着けたようだ。

 そのまま会話するわけでもなく、ぼぉ~とだ何もない天井を見続けていた。

 何もしていないと、だんだんと睡魔が襲ってくる。

 ここは風の音しないし、非常に静かだ。

 気づかぬうちに、そのまま深い眠りへと落ちていった。

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