第10話 旧文明の跡地
ビルだと分かって、私のテンションは少し高まった。
しかし、またタイミング悪く、急に風が強くなるのを、また感じた。もう何回も経験しているから、別に見なくてもわかる。
私は後ろを振り向くと、そこに見えたのは、ごうごうと立ち上る茶色い煙。また。砂嵐だ。
私は、ここでテントを張るかどうか考えた。
けど、砂嵐に埋もれてしまう前に、ビルの中に入ってしまうのが、良いと判断した。
足を少し早めに、
「急ぐよ」
とボルドにビルを指差す。
それに、
「うん」
と彼は頷いた。
追いかけてくる砂の壁に、追い付かれないよう、足を早めた。
後もう少し、という所で砂が高く舞い上がり、砂煙が辺り一面を覆い隠し始めた。
視界が茶色く濁りだした所で、目の前に大きな四角い建物が、私たちの目の前に現れた。
ビルというと、それはすでに何百年前の旧文明の遺産である。
名前は知っていても、実物を見る人はほとんどいない。
だから、私がそれを見たとき、ビルだと直ぐには分からなかった。
久しぶりに見たその大きさに、
「これがビル、、一体どれだけ高いのだろう」
思わず壁をなぞる様に、上まで見上げる。
入口に扉は無く、辺りにはガラスの破片が飛び散っていた。
砂嵐はすでに体半分浸かっているような状態で、私たちは急いでビルの中へと入った。
入ったのはいいが、1階は半分が砂に埋まっているような状態で、居心地が悪い。
けど、中は複雑に入り込んでいるお蔭で、砂が風に乗って入口から中へと入ってくることは無かった。
とりあえずと奥へと進むと、薄暗い場所で腰を下ろした。
さっきの私のつぶやきを聞いてか、
「ねーちゃん。これビルっていうの?」
とボルドは壁を触りながら尋ねる。
やはりボルドは見たことも、聞いたことも無いらしい。
「そうよ。旧文明の遺産。何メートルもの高さがある建物、、久しぶりに見かけたわ」
遠くから見た感じ、これ1つではなく、複数のビルが建っているような気がした。
砂嵐が止んだらぜひ探索に行きたいものだ。
が、まずはせっかく入ったこのビルを探索しないと。
座ってから数分もせずに、
「上への階段を探すよ」
と言いながら、私は立ち上がった。
そんな私に、
「えぇ。さっきまであんなに疲れたような顔してたのに。ねーちゃんはオーパーツの事になると性格が変わるよね」
とボルドはグチグチと言いながらも、立ち上がった。
荷物はここに置いて行くことにした。
まさかこんな場所に、人がいる訳がないから、盗まれることもないだろう。
あるとすれば、、砂に埋もれて場所が分からなくなることぐらいだろう。
ビルの中は中央が吹き抜けになっており、上が見渡せるようになっていた。
私とボルドは上を見上げながら、その高さと広さに感嘆した。
ボルドはただ単にその大きさに驚いていた。
それもそのはず。彼のいた街には二階だての建物さえ無かったのだから、こんなに大きな建造物を見るのは初めてのはずだ。
私はというと、カメラでその壮大な吹き抜けを写真へと収めてた。
ビルには何度か入ったことがあるが、これほど階層がしっかりとしているビルは初めてだ。
それに吹き抜けになっている構造も、初めて遭遇した。
ボルドは、軽く跳ねて、届きもしない天井を触ろうとしながら、
「凄いやねーちゃん。これを昔の人が作ったの?」
と言う。
私は記録の書物をタップしながら、
「そうよ」
と適当に答える。
周囲を見渡しながら、
「こんな所に住んで見たかったなぁ」
とボルドは言った。
あたりを見渡す。
多分ここは住居ではなくて、買い物をするための施設だったように見える。
まぁ、今となってはどうでもいいことだけど。
階段らしきものはすぐに見つかった。
吹き抜けに隣接する形で、砂を被った黒い階段が顔を出した。
砂を払ってやると、黄色い枠線が微かに顔を出した。
それを見て、
「これはエスカレーターね」
と私は確信する
首を傾げたボルドは、
「エスカレーター?」
と尋ねる。
私はその一段の段差を指差し、
「これ、この黒い段差1つ1つが上へと動いていたのよ。だから、立っているだけで上の階層に移動できたらしいわ」
と上へとのぼっている感じをジェスチャーで伝える。
二人で砂をはたいたり、上に乗ってみたり、叩いてみたりしてみたがピクリともしない。
知っていながら黙っていたが、電気がないと動かないのだろう。
エスカレーターもとい階段を上がっていると、
「信じられないね。だから、1段の段差が大きいんだね」
とボルドの言う。
今まで気にもしなかったが、確かに段差が大きいような気がする。
そのまま私たちは、二階へと足を踏み入れた。
時間は飛んで、二階も特に何もなかった。
だけど、その代わりに看板を見つけることが出来た。
ほとんどの文字がかすれて読めなかったが、「B1:食品」「7F:衣類」の2か所のみ読み取ることが出来た。
文字が読めないボルドは、何が書いてあったのか気になっているようで、
「B1、、地下が食品売り場で、7階が衣類売り場らしいよ。他は読めない」
と私は代わりに読んであげる。
ボルドは首を傾げ、
「へぇ。でも地下なんて見当たら無かったけど」
と言う。
私は吹き抜けから下を覗き込んだ。
薄暗い一階に見えるのは、砂だけだ。
恐らく長い間砂に侵食されて既に砂の中へと埋まってしまっているのだろう。
行くには掘り起こさないとダメだ。
「地下は無理そうだから。上に行きましょ」
三階へと上がったが、ここにも特に何も無かった。
このまま上へと頑張って行っても何もないんじゃないかと思えてくる。
でも、何もなくても行かないと、あった時の後悔が大きすぎる。
足を止めて、私は振り返ると、
「私は行けるとこまで行くけど、ボルド君はどうする?」
と彼に尋ねた。
流石に疲労が溜まってきたのか、少し考えているようだ。
うんうんとうなっていたが、決断した、
「ついて行くよ。だってここに兄貴がいるかもしれないし」
と口を開いた。
そういえば、そんな事のためにここまで来たんだったなと思いながら、彼を連れてさらに上の階へと上がっていった。
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