11.ドラゴン、飛ぶ
「ドリル員、沈黙!」
『クソ。虎の子が死んだか。おのれ、ブリテンがいるという情報は無かったぞ』
どうやらドリル員とやらは一人しかいなかったらしい。念のために連れてきていたのだろう。用心深い隊長のようだ。殺しておきたいが、周りの警官に護衛されているな……。
しかも他の警官がまだまだいる。着実に減らしてはいるが、追加もどんどん増えている。
というか、一体どうやってここから脱出するのだろう。全滅させる? 囮かつ高防御の俺がいるから減らせているが、元の計画に俺はいない。全滅させて悠々と逃げる予定ではないはずだ。何か手段を用意していると思うのだが。
って、んん?
ふとアリスの姿が目に入った。床の大理石を無理矢理ひっぺがし、その下のコード類を自身の腕を接続している。何してんだろう。
そういやコイツ、今の今までずっと静かだったな。あの作業にひたすら従事していたわけか。一体、何を?
「オイ、アリス。あと何秒だ?」
『もうすぐ……少々』
ブレっぷりがブレないな、などと呆れていると、俺の耳に奇妙な音が聞こえてきた。
「ん、なんだこの音?」
遠くから聞こえてくる。激しい銃声の中でもはっきりと聞こえる、ギャリギャリギャリ、という音だ。段々と大きくなっている。何かが擦れているような、この音は……。
「ぬおぅ!?」
ガジャアン! という大きな破壊音と共に、銀行の入り口から中へ何か大きなモノが飛び込んできた。あれは……まさか……ドラゴン!? ドラゴンだ! 銀色の!
銀色のドラゴンは真っ直ぐにこっちへと向かってきて、俺の目の前に止まった。おお、ここでまさかのファンタジー!
って、いや。違うな。大きなトカゲみたいなシルエット、ということでドラゴンだと思ったが、鱗が無い。肌の表面がツルツルで、しかも金属のような光沢がある。まさか、ドラゴン型のロボット?
「早く乗り込め、新入り!」
ダリさんが机から飛び出し、ドラゴンの影に隠れながら言った。乗り込め? 背中に、か?
『開』
違った。アリスの言葉と同時に、ドラゴンの腹がハッチのように開いたのだ。どうやらそういう乗り物らしい。
「アリスが銀行のLAN回線で遠隔操作したドラゴンカーよ。早く乗りましょ?」
クラインさんに背中を押され、恐る恐る乗り込んだ。意外と中が広い。あ、シートもちゃんとある。
全員が乗り込み、ハッチが閉じる。と同時に、黒一色だった壁が明るくなり、外の様子が映った。どうやら外の映像を映すことで壁を擬似的に透明にしたようだ。
「さー、脱出だねだねブリ兄さんたち!」
ゴスの言葉に反応したかのように、ぐおん、と身体が引っ張られる感触があった。ドラゴンが動き出したらしい。
相変わらず銃を撃ち続けている警官たちを無視し、ドラゴンは入り口のほうへ動いた――そして、入り口から飛び出すと、そのまま空へと飛んだ。上へ、上へ。速度を保ったまま飛んでいく。
あっという間に銀行が小さくなっていく。どうやら、無事に最初の仕事を終えることができたようだ。
「うぷっ」
激しい動きのせいで、今にも吐きそうなこの状態を『無事』と言えるのなら、だが。
……なんでこういう感覚だけは残ってんだよ、クソが。
【TIPS】
・ドラゴンカー
パッと見でドラゴンに見える小型飛空艇。中はだいたい車。天井と壁はディスプレイでもあるので基本は黒一色。また、極限まで壁を薄くしているので、意外と広々。ドラゴンカー自体の大きさはだいたい中型トラックぐらいである。
また、六つあるシートはすべて革張りであり、素敵な座り心地を味わえる。
ちなみに機体名はゼックスである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます