第2話 赤ちゃんはどこから来るの?(1)

 アメリカの田舎町。

 クリーム色の一軒家に、とても可愛いくて、お利口さんな女の子がいました。


 2階のお部屋から、小さな女の子は、お星様に語りかけます。


「ねぇ、お星様? アイン、不思議だわ」


 5歳のアインちゃんは、ホットケーキのようにふくらんだ、ほっぺを両手でささえて、ひじを窓のへりに乗せるながら、夜空を見つめて、溜め息をつきます。


 アインちゃんは、金の糸を束ねたように綺麗な金髪で、ドレスのような白いパジャマはお姫様のように優雅に見えます。

 目はサファイアのように青く輝いている、愛らしい幼女です。


「はぁ~……ねぇ、お星様? 赤ちゃんはどこから来るの?」


 お星様に思いをはせていると、悩むお年頃

のアインちゃんは、まん丸のお月様を見て、何かを発見すると大はしゃぎ。


 大急ぎで机に置いてある、アメンボのようなドローンとリモコンを持って窓へ。

 

 窓のへりにドローンを置いたアインちゃんは、瞳を一等星よりも輝かせ、5歳児の両手では収まらない、大きなリモコンのスイッチを入れます。


 四方向へ足を延ばしたドローンは、4つの足の先に付いたプロペラを急速に回転。


 ドローンは勢いよく跳ね上がり、アインちゃんがリモコンのレバーを親指で前に倒すと、ドローンは弾かれたように夜空へ飛んで行きます。


 ドローンはぐんぐんと、まん丸のお月様に向かって、スピードを上げて行き、お月様に浮かぶ影を捉えます。


 ドローンが影の真上に来ると、影にぴったり張り付き飛行。

 アインちゃんはそれを確認すると、幼女にしては稀な、緊張した顔で、その風景を見つめ、何かのタイミングを計ります。

 

 そして----アインちゃんが目を見開くと「今だ!」と、興奮しながら叫び、リモコンの真ん中にある赤いボタンを押します。


 すると、ドローンの中心が破裂。

 腹の部分から傘のように開いた網が、影を覆い、つぼみのように閉じると、影を網の中へ閉じ込めてしまいました。


「やったぁ!」


 大喜びのアインちゃんは、興奮のあまり、持っているリモコンを腕で引きながらレバーを指で倒し、ドローンを呼び戻します。


 影をキャッチしたドローンは左右にふらふらと揺れながら、不安定にこちらへ戻って来ます。


 ドローンがお部屋に戻ると、網に捕まった影は暴れて、網から金平糖のようなトゲがいくつも出て来ます。


 アインちゃんが再びリモコンの真ん中ボタンを押すと、ドローンは網を切り離し、部屋の隅に移動してゆっくりと降下。

 床に着地すると四方のプロペラが回転を弱めていき、そのまま止まります。


 一方、網は勢いよく絨毯に着地してビックリ箱のように開きました。


「わあああぁぁぁ!?」


 必死に叫び声を上げて、網の中から出て来たのは、真っ白な体毛に篭のような大きい顎を持つ、コウノトリさんだったのです。


 コウノトリさんは目をまん丸くしながら、アインちゃんのお部屋を忙しく見回します。


「どどどど、どこなのここは? き、君は誰!?」 


 アインちゃんは、お日様のような笑顔で答えます。


「私、アイン! 5歳よ」


「ア、アイン? 5歳!? アインちゃん。ここはどこだい?」


「ここはアインのお部屋よ! コウノトリさんがアインの不思議に答えてくれたら、お家に帰してあげるね」


「可愛い言い方してるけど、やってることは凶悪犯と同じだなぁ……解った。答えないともっと酷い目にあいそうだから、アインちゃんの不思議に答えるよ……」


 真っ青な顔のコウノトリさんをよそに「やったぁ!」と、アインちゃんはジャンプして大喜びした後、指を顎に当てて、考えてからコウノトリさんに聞きます。


「え~とねぇ、コウノトリさん? 赤ちゃんは、どこからやって来るの?」


 コウノトリさんはアホウ鳥よりもマヌケな顔になり、安心して言います。


「何だぁ~そんなことかぁ~。どんな質問が来るかドキドキしたよ」


 モフモフの胸をなで下ろした、コウノトリさんは、和やかに答えます。


「赤ちゃんは僕が運んで来るんだよ!」


 それを聞いたアインちゃんは、目を丸くして興味深々に耳を傾けます。

 5歳児の瞳はサファイアのように輝きました。


 コウノトリさんは得意げにお話を続けます。


「赤ちゃんは、君達のパパとママが、お互いを好きで好きで、と~ても大好きになった時に、僕が赤ちゃんを運んでくれるんだよ」


 コウノトリさんの説明に、アインちゃんは顔を、お餅のように膨らませて怒ります。


「違うわ、コウノトリさん! 私、もう5歳よ? 大人の男の人と女の人との交配で出来る、有性生殖の話をしているわけじゃないわ!」


 コウノトリさんは5歳の女の子が突然、怒り出したことに驚き、思わず謝ります。


「そ、それはごめんよ……最近の子供は進んでいるなぁ……」


 コウノトリさんは動揺を隠しきれません。


 ご立腹のアインちゃんは、お話の続きをします。

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