第3話 赤ちゃんはどこから来るの?(2)

「赤ちゃんというより、人間は、どこからやって来のかって、お話よ!」


 コウノトリさんは5歳児の話が理解できないのか、言葉を失いました。


「よく言うでしょ? ニワトリさんは、鳥さんと卵、どっちが先に産まれたのか? それと同じで、赤ちゃんが先なの? それとも、大人が先なの?」


 コウノトリさんは目を泳がせながら答えます。


「う、うん~、ん~大人……いや、赤ちゃんが先だろうねぇ。赤ちゃんが大人になって、その大人が子供を産むんだろうから」


「じゃぁ、人類で最初の赤ちゃんはどうやって産まれたの? どこから来たの?」


「ずーっと、昔……かな?」


「ずーっと昔!? それはいつ? 紀元前? 創世記? 有史で言うといつ? 古生代? 先カンブリア紀? 旧約聖書のどの一編なの? 神様は動物さんを作った後に、人間さんを6日目でお作りになったけど、やっぱり、週末の残業が嫌だったの?」


 コウノトリさんは羽をパタパタと羽ばたかせて、アインちゃんの言葉を遮ります。


「ま、待って!? もう何を言っているか解らないよ? 僕は偏差値2だから、君の話は理解力のキャパシティーを越えてるよ!」


 大慌てするコウノトリさんを見て、アインちゃんはガッカリします。


「そうか~。コウノトリさんにも解らないのか~……そうよね。偏差値2だものね? 虫ケラさんぐらいの知能だもの。解るわけないわ」


「ご……5歳児のディスり方じゃないよね? 君は本当に5歳の女の子なのかい?」


 アインちゃんはパァっと明るい顔を見せて答えます。


「私! IQが200もあるの! 私のパパやママ。お友達のパパとママも、私のこと天才だって言ってたわ!」


 コウノトリさんは戸惑い、返します。


「そうなんだ……それはすごいね……じゃぁ、もう僕には用はないよね? 僕は帰るよ……」


 コウノトリさんが白々しく、窓に足を運び、アインちゃんのお部屋を逃げるように立ち去ろうとすると「待って!」と、アインちゃんが背後から、コウノトリさんの首を羽交い締めにします。


 逃げようとしたコウノトリさんは、パニックで大慌て。

 羽毛を撒き散らします。


 そんなコウノトリさんに、お構いなしのアインちゃんは、少し寂しいそうに言います。


「アイン。お友達が少ないの……だから、お話するお友達が欲しいの。ねぇ、コウノトリさん? アインとお話しましょ?」


 コウノトリさんは必死でもがきます。


「は、離せ!? く、首が絞まる!?」


 アインちゃんは耳を傾けて、聞く返します。


「え? ゛話せ?゛ 本当ぉぉおお!?」


 アインちゃんは、嬉しそうにコウノトリさんの首から、腕を離します。


 絨毯に倒れたコウノトリさんを見て、アインちゃんは機関車のように興奮して言います。


「コウノトリさん! お話の続きをしましょう?」


 コウノトリさんは自身の羽で首をさすり、苦痛を和らげると、アインちゃんに怯えながら言います。


「あ……頭いいのに、他の人の迷惑を考えないんだな?」


 5歳のアインちゃんは、目を丸くして、当然のように答えます。


「何を言っているのコウノトリさん? この世界は天才達が作った世界。そこに、凡人は含まれていないわ?」


 コウノトリさんは戦慄を覚えます。


「き、きき、君は本気で言ってるのか!? 君には知識より倫理が必要だぁ!!」


「アイン、そんなお話したくないわ! アインのお話を聞いてくれたら、コウノトリさんをお家に帰してあげるね」


「言っていることが、まるで誘拐犯だ……」


 怯えきったコウノトリさんに、アインちゃんは一方的にお話を始めました。


「ねぇねぇ、コウノトリさん? 昔の科学者の思想で、DNAを解析して、人間のご先祖様を調べて、そのご先祖様のご先祖様を調べて、そのまた、ご先祖様のご先祖様のご先祖様と、ずーと、ご先祖様を調べて行けば生命の起源にたどり着くと考えられていたわ」


「は、話が、いきなりぶっ飛んでて、ついていけない……」


「まるでDNAは、ブロックチェーンのように、節目節目で転換期を迎え、その度に進化をして来たわ。古代の生き物が環境に適応しつつ、進化して、子孫を残して来たから今の私達、生物が繁栄しているのよ?」


 アインちゃんは両手を羽ばたかせるように広げて、元気いっぱいに言います。


「私達の遺伝情報は、古代から現代まで続いているの! 生命は遺伝子の乗り物なのよ! buy、生物進化学者リチャード・ドーキンス」


 コウノトリさんの脳は、もうパニックで、溶けてしまいそうでした。


 しかし、天才幼女のアインちゃんは、偏差値2のコウノトリさんをほったらかしです。


「でも、不思議なの。ある科学者は、生命が存在しない星で生命体が誕生する確率は、バラバラの時計を海に投げ込んで、潮の流れに任せて、部品同士が自然に組み立てられる確率に等しいと言ったわ」


 アインちゃんは少し、残念そうに続けます。

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