03:昼餉
「くぅ〜!やっぱりおばさんの料理ってうまいよなぁ!!」
「そうか?普通だろ別に。」
ダイニングのテーブルにはババアの作った煮物と出来合いの惣菜が数点、そして床にはビールの缶が山のように積まれていた。世間じゃ社畜達があくせく働いているであろう平日の昼間に酒を飲めるのも時間に縛られないこの仕事(?)をしているからであって、こうして酒盛りをする度に本当に悪の科学者で良かったと思う。そういえば俺はともかく雷堂は大丈夫なんだろうか?急な非常事態が起きた時にベロベロに酔ってたら仕事にならん気がするが。……まぁ良いか別に。俺としてはむしろヒーローが怠けててくれた方が好都合だし。
「ところで雷堂、お前今日は他の四人と一緒じゃないんだな。」
「あ、あぁ……まあな……あと本名は(ry」
「もしかして連中はダブルデートでお前だけ留守番か?」
「……」
「……マジか。」
無言で俯く雷堂の瞳には涙が滲んでいる。ほんの冗談のつもりだったのだが、どうやら図星を突いてしまったらしい。確かに女二人に男三人なんて構成してやがるから「これチーム内でカップル成立したら一人だけ余るよなぁ」なんて思ってはいたが、まさか本当にそんなことになっていたとは。
「そいつは災難だったな……こういう時はアレだ、飲んで忘れようぜ。」
「ありがとう……喪武は良いやつだな……」
「バッカお前、悪の天才科学者に正義のヒーロー様が良い奴だなんて言うんじゃねえよ。」
俺は足元の缶を二つ拾って片方を雷堂の方に放り投げると、俺の手を離れた缶は小さな放物線を描いて親友の手に収まる。それが本日二度目の乾杯の合図だった。卓上の料理を貪り、酒を飲み、愚痴をこぼし、また酒を飲む。それを一時間ほど繰り返した頃、顔を真っ赤に染めた雷堂が俺にひとつの質問を投げかける。
「なぁ喪武ぅ〜」
「なんだよ雷堂。」
「本名は(ry 」
「まだそれ拘るのか。」
「それでさ、ちょっと気になったんだけど俺が来たときお前なんかやってたろ?あれなんだったんだ?」
「あぁ、あれはな……」
俺は雷堂に作戦を一通り説明した。普段なら俺が悪巧みをする度にジャスティスレッドとして(主に手から発射されるデラックスなビームなどを用いて)止めようとする雷堂だったが、今日は珍しく黙って聞いていた。
「……という訳だ。」
「なるほどねぇ。」
「今日は撃たないんだな、ジャスティスボンバー。」
「まあな……なぁ、喪武……」
「なんだよ?」
「……」
それから数秒、いや、数十秒くらいだったか。とにかく沈黙を続けていた雷堂が発した言葉は思いもよらないモノだった。
「……それ、俺も参加していいか……?」
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