俺の不死物語に終幕をもたらすのは誰か

Chapter27 王の演説

俺達が、イルム王国へと帰り着いた夜に、城内の大広間へと、騎士、魔法騎士、護衛団、全ての従者が集められた。

騎士団は第1から第10まで、各団が10人編成なのでちょうど100人。綺麗に整列している。

「あ、第2騎士団団長のジャックさんだ。

よく見たら、第10騎士団、団長も出席してるな…

身体中傷だらけだ、小さな刃物傷のように見えるな。

もう1人の召喚者は刃物を使うのか、覚えておこう。」

あえて、見えない、気付いていないフリをしていたが、

第1騎士団の先頭でロアがめっちゃ手を振っていた。

あいつ、団長だったのか…

まぁ、クラウンネームだし当然っちゃ当然か。

俺は、ヴァイスさん率いる護衛団の方達と一緒だ。

カルミナが来た！難しい顔をしているな…

カルミナがゆっくりと壇上へ上がり、椅子に腰掛ける。

ここにいるほとんどの人が、王が今から何を話すのか知らない。

難しい顔をしているし、また誰か怒られるのではないかと、大多数の人間がそう思っていた。

重々しい空気の中、カルミナが話し出した。

「皆の者、硬くなるでない。楽にせよ。

私は、神の言葉を聞きに中立の塔へ行き、先程帰って来た。

そこで聞いた事を簡略に話す。

西の帝国が落ちた…

それも、たった1人の男の手によって。」

周囲がどよめき、みんながざわめき出した

「まだ話しは途中じゃ！ 静かに聞けい！」

カルミナの覇気が大広間に響き渡り、皆が萎縮した。

「災（わざわ）いの子…いや、災いの王だったな…

魔物も、その災いの王に惹かれ共鳴する。

これは私の推測だが、悪魔も例外ではないだろう。

この災いの王を止めねば世界は終わる。

我々イルム王国は天使族と手を組み、その男を叩く事にした。

そこで、皆に頼みがある。

我が国に為に戦ってくれるか？」

一瞬の沈黙の後、一斉に皆が雄叫びを上げた

その声は大広間に響き渡っていた

「…ありがとう。

少し話を聞きたい、第10騎士団団長ラウル、前へ！」

「へ？ は、はいっ！」

ラウルは、それはもうビビっていた。

怒られて当然だという、自覚があったからだ。

何せ、たった1人相手に、死者は出なかったものの、全員が大ケガを負い敗北したというのだから。

「ラウルよ…お前達が西の湖で会った男というのは、

強かったか？ 正直に答えて欲しい。」

「い、いえ、つ、強い？ と、言うか変わった男でした！

身なりも見慣れない感じで、戦い方もよく分かってないようでした！

ただ、戦っているうちにどんどん強くなると言いますか…

相手は小型のナイフを持っていたのですが、しだいにナイフの動きが全然見えなくなり…私の力が抜けていく感じがして、

もう2度と、あの男と戦いたくは…

ほ、本当に申し訳ありません！」

「…お前達が生きて帰ってきてくれてよかった…」

ラウルは怒鳴られる事を覚悟していた。

思いもよらない王の言葉に声が出なかった。

「お前達が戦った男、その男こそが災いの王だ。」

大広間での話は、これで終わりだとカルミナは言い、

王室へと戻って行った。

何故カルミナは、もう1人の召喚者がクラウンネームを持っている事をみんなに話さなかったのだろう？

みんなの混乱を避ける為なのか、何か意図があるのか

もうすっかり日が落ちたが、俺は気分転換に街へ行ってみたくなったので、カルミナも誘ってみる事にした

「カルミナー入るぞー！

よぉ！ 素晴らしい演説でした！ カルミナさん！ お疲れ様。」

「もぉーっ、辞めてよぉ。変じゃなかったぁ？」

「いや？ 大丈夫じゃないか？ それでさ、ちょっと気分転換に街へ行ってみようと思うんだけど、カルミナも一緒に行かないか？」

「…だって、私が行っても、きっとＫは楽しくないよ？

きっと覇気の影響で…」

「ローブを深く被って、相手の目も見ないし、話し掛けない！ これならイケるんじゃないか？」

「う〜ん、覇気は止められなくても、直接話し掛けないと多分そんなに効果はないだろうし…

それなら誰かに影響を与えるような事はないかもだねっ。」

「なら、決まりな！ すぐローブ取ってくるから準備して待ってて！」

俺は走って、魔法騎士の詰所に向かった

そこで、ポーっと立っていたミサの身ぐるみを剥し、

ローブを持ってカルミナの元へ戻った

イルム王国城下町ロートリア

夜の街はどんな感じなんだろう！