Chapter26 もう1人の異世界召喚者


「3日前、神はこう、おっしゃりました。

近いうちに、この世界に招かれざる客が来る。

その男はこの世界に、混沌と恐怖をもたらすであろう」


ん? カルミナさん…? 何故、一歩退いてジト目で俺を見てるんだ…

って、俺、疑われてるのか!

いや、俺は招かれた客のような気がするのだが。


「それから、2日前、災いの子は舞い降りた。邪神より冠名を賜わる。災い降り立つは西の湖。終焉に向かって歩き出す。」


「なぁ、カルミナ…イルムの兵士さんが、西の湖がどうとか言ってなかったか、確か…」


カルミナが俺の目を見て、コクッと頷く。


「そして今日、災いの子は西の帝国を手中に治める。魔物も災いの子と同調し、世界に仇なす存在となる。

以上です。

既に、これは起きた事であるという事をご理解頂きたいと思います。」


「なぁカルミナ、これはその男の手によって、ガルム帝国が落ちたって事でいいんだよな…?

それに、冠名かんな?ってクラウンネームの事だろ?」


「うん…帝国がたった1人に落とされるなんて、ちょっと信じられない…でもね、神には全てを見通す力があるの、だから本当なんだろうね。

これで、第10騎士団が負けたのも頷けるね…」


俺と同じ日にこの世界に来た奴がもう1人いる。

そいつは根っからの悪で、邪神に気に入られ、クラウンネームを与えられた。

それから腕試しにと西の帝国を落とした。

って所か…


「あのー、サラハさん、一つ聞いてもいいですか?」


「はい、何でしょう?」


「その男って、異世界からの召喚者ですよね?

召喚者が実はもう1人居て、そいつが世界を救う的な事とか言ってなかったですか…?」


「いえ? 神は特に他には何も?」


クソッ、俺主人公説が薄れていく!


「じゃあ、私達イルム王国はこれからどうしたらいいのでしょう?」


「そーだよっ! 私達、天使族にも何か力を借りたいって事なんだよねぇ? サラハちゃん?」


「分かりました。端的に申し上げます。

知っての通り、私達神族の生き残りはあくまでも中立の立場を守らなくてはいけません。

そこでお願いです。イルムと天使で手を取り合い、

災いの子、いえ、災いの王を討ってもらえないでしょうか。

世界が終焉に向かうのを止めてもらいたいのです。」


この展開、まだ、俺主人公説は生きてる!

いや、俺が自分から主人公に近づく努力をしなくては。


「カルミナ、ナミエルさん、答えはもちろん…?」


「お受けしますっ!」 「しょーがないなぁもう。」


よし! 決まりだ! っても何から始めればいいのだろう

いきなり西の帝国に乗り込む訳にも行かないだろうし。


「よぉし、そうと決まれば帰って、大天使様たちに相談しってくっるよぉ〜。3日後にカルミナちゃんのお城に遊びに行くから待っててねぇ〜ん。

圭ちゃんも、まったねぇー! ばいばぁ〜い」


うわっ! 飛んだ!


閉まった扉にそのまま突っ込むのかと思ったが、勢いよく扉が開き、当たらなかった。


「じゃあ、私達も帰ろっかぁ〜、ねっ。」


「おうっ、そーだな。それじゃあサラハさん、失礼します!」


「また、いつでも寄ってらして下さいね。」



俺とカルミナは塔を後にし、カルミナがみんなに聞いた話を簡単に説明しているようだった。

また、ミサがいない…

あ、いた、岩場の陰でしゃがみ込んでいた。


「おい、ミサ! 今カルミナが話を…って、何やって…」


「だぁーかぁーらぁ〜見てわからないんですぁー?

蟻の巣に石を」


「蟻の呪いで死ねっ!」



俺達3人は馬車に乗り込み帰路へとついた。

帰り道、一晩泊まった後、数匹のゴブリンと、デカい蛙の魔物に襲われたが、俺とミサが馬車から降りる事無く、全てジャックさんが倒してしまった。


無事、またこのイルム王国に帰ってきた。

これからカルミナが大広間へ皆を集めて話をする。

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