Chapter23 VSゴブリン軍
騎士団が輪となり、馬車を囲った形でゴブリンとの睨み合いになっている。
確かにゴブリンの戦闘力は高くはないだろう。
だが、こうも数で押されたら…
他の個体より、少し大きなゴブリンがいる。
言葉はわからないが、何やら他のやつにジェスチャーを交えて、指示を出しているようにも見えた。
ゴブリンの中にも、統率者と呼ばれるような個体がいるのか?
「ガッハッハーッ そろそろ来るようだそ〜?
前衛にはワシらが出るが、騎士団で全てのゴブリンにまでは対処はできんだろう。
抜け出たゴブリンは君らに任せよう。
圭くんに魔法騎士さんも、我らが王の為に頼んだぞ!」
「…はい、お力になれるかは分かりませんが、体を盾にしてでもカルミナを守ってやりますよ。」
統率者と思われるゴブリンが手を挙げ、キェェェ! と叫び声を上げると、周囲のゴブリンの大群が一斉に襲いかかって来た。
騎士団が360°散り散りに前へと出る
俺とミサは馬車の外で待機し、騎士団の隙間を縫って来たゴブリンを倒す作戦だ。
「な、なんだぁ? ジャックさんの持ってる武器は…
お…斧…なのか…デカすぎだろ…」
一瞬、巨大なうちわに見えたが、斧だった。
それはもうデカい! いくらパワータイプだって限度ってもんがある。 もはや人間ではないだろあの人…
ガッハッハと笑い声をあげ、片手で巨大な斧を振り回し、目の前のゴブリンを一瞬で次々と殲滅してゆく。
俺は昔プレイした、何とか無双というゲームを思い出した。
「…ハハ、いくら何でも強すぎでしょ〜!
ジャックさんだけが凄いのかと、思ったけど、
他の騎士団の人も相当強いぞ…
おい、ミサ。こりゃ俺達の出番は無いかもし…って、
お前何やってんだよ!」
「え? 何って、見てわからないんですぁー?
蟻の巣に、石を詰めてるんですよ!」
「あー、それはそれは、お忙しいところ、すいませんでしたね〜」
くそう! 何てフリーダムなんだこいつは!
その時、俺達の前と後ろの2方向から1体ずつ、騎士団の間をゴブリンがすり抜けてきた。
「おい! 蟻の巣使い! じゃないわ、魔法使い! きたぞ!
お前は、後ろを頼む、俺は正面から来る奴をやる!」
「ふっふっふ、しょぉ〜がないですねぇ〜。
この大魔法使いが相手してやりますよー!」
お? どうしたんだろうか、今日は全然ビビッてないじゃないか、ミサのやつ…
まぁいい、俺は目の前の敵を殺るだけだ!
「これでも食らえやぁー! ウラァー!」
ガキィーーン
「な、何…う、受け止めた、だと…? く、この…」
俺は、たかがゴブリンと、侮っていた。
はぐれゴブリンとは違い、明らかにこいつらの戦闘力は高い…
否! 俺が弱い!
グギィィィィイー!
俺の剣を弾き返し、そのまま錆びた斧で俺を切りつけた。
致命傷となる一打を与えた事でゴブリンはニタニタと笑い、斧を掲げ、勝ち名乗りを上げている。
ーーーよかった、ちゃんと発動してくれて…
「…戦闘中に余所見は感心しませんな?
ってかぁー! ウラァーッ!」
ザシュッ… グ、グガァァァ……
「ふぃー、肉を斬らせて骨を断つ作戦、成功だな!
まぁ、肉も斬れてないんだけど!」
勝負が決まり、息をついていた時、俺の目の前に突如として魔方陣が現れた。
魔方陣が光り出し、中から何かが召喚される!
な、なんだ?何が出てくるんだ…
出てきたのはゴブリン。
は? なんで? と、不思議な顔をしていると、
ゴブリンも、は? なんで? みたいな顔をしていた。
もしかして? と、ミサの方に目をやると、相手をしていたはずのゴブリンがいない…
しかも薄ら笑いを浮かべていやがる…
あの野郎、完全にテレポートを使いこなしてやがる…
…あれ? そういえば、カルミナがテレポートを使えるのは、どうのこうのって言ってなかったっけ…?
まぁいい、気のせいだろう。
「…っだらぁあー!」 ズバッ
グゲェェェ……
訳がわからずポカンとしていたゴブリンを容赦無く、
俺は斬り捨てた。
そこで周りを見渡すと、戦況は大きく動いていた。
と、言うか、圧勝である。
残りのゴブリンも数えられるほどしか残っていなかった。
そのゴブリン達も次々に逃げ出し、俺達はこの状況を打破したのであった。
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