Chapter22 出発のち遭遇


俺達はついに、神族の生き残りが住まう場所

中立の塔へと出発した。


うーむ、やはり馬車はどこか落ち着かなくていけない…

妙にソワソワしてしまう。

カルミナもミサも全然喋んないから、変に空気が重い。

ミサは王を前にして、借りてきた猫状態だしな。

よし、ここは1番お兄さんである俺が場をもたせよう!


「なぁー、カルミナ。少し聞いてもいいかー?

今から行く中立の塔ってのは、神族の生き残りだっつーのは聞いたんだけど、その人達は神様って事になんのか?」


「んーとっ、ちょっと違うかなぁ〜。

先祖代々、神に仕えて来た者。って、言うほうが近いような感じだね!」


「ふーん、神を信じ、神を崇める者達。みたいな所か。

俺の世界で言う、聖職者みたいなもんか〜。」


「その聖職者が私には、よくわからないんだけど、

多分、Kが想像してる通りじゃないかなぁー。」


確かに聖職者ならば、全ての者を平等に扱うだろう。

中立の立場だってのも頷ける話だ。


ん? 何だ? ミサの奴が目をまん丸に見開いて、

アワアワ言ってるぞ? またちびったのかこいつ?


「アワワ…カカカッ、カルミナ様ぁ〜?

そ、そその、お話し方は、い、いったい、どういった…」


あ、やっちまったな! カルミナさんよ〜!

ミサがいる前でいつもの喋り方しちゃったよ!

見る見るうちにカルミナの顔が赤くなっていく。


「…み、み、…ミィィィ〜サァァァア〜!」



「はっはいぃぃぃい〜! も、申し訳ありませんっ!

わ、私、ななな何か、よ余計な事をををっ」


いけ! やっちまえカルミナ!


「……まぁ、よい。 いずれは分かる事だ。

このまま、お前の前でKと話ができないのでは、つまらんからな!

ただし、この事はお前の口から他者に伝わる事は絶対に許さん…理解したか? ミサ?」


「はわわわわっ、も、もちろんであります、ハイッ!

わ、私、くく、口は固いのでごごご安心ください!」


「ならば、よい! 」


「あ、あのぉ…カ、カルミナ様はぁ、小田様の事をけいと、お呼びなさるのですね…?」


あー? 小田様だぁ〜? そんなの初めて言っただろ!


「ああ、そうだ。それがどうしたのだ?」


「わ、私も、圭…ぽん、と呼ばせてもらっても、宜しいでしょうか…テヘッ」


何なんだこいつ、ビビッてるのか度胸あるのかどっちなんだよ! 怒られろ! 怒られろー!


「圭ぽんか…わかった。許可しよう。」


許可するんかーい! 俺には許可申請無しかーい!


その話を前の方で聞いていたヴァイスさんも、この話に食いついてきた。


「ハッハッハ、成る程。確かに小田殿では少しよそよそしい感じもしますな。

では、わたくしも圭殿と呼ばせて頂く事にしましょう。」


「…もう、好きに呼んで下さい…」

親しみを込めて名前で呼ばれる経験ができるなんて、

俺の人生の中では1つの快挙といってもいい。



そこで、急に外が慌ただしくなってきた。

どうしたのいうのか、馬車がスピードを落とし、

外の騎士団が何やら大声を出している。


「どうしたんですかヴァイスさん! 外が騒がしいですけど、何かあったんですか?」


「圭殿! ミサ様、敵襲でございます。これから戦闘になりますゆえ、お気を付け下され!」


「ええええっ、てて、敵襲ですかぁぁあー?」


それからすぐに馬車が止まり、カルミナを中に残し

俺とミサも外へ出た。

カルミナは冷静だった。1つも慌てる様子を見せない。

余程、騎士団を信用しているのだろうな。


敵とは一体、どんな奴なんだ? まさかガルム帝国か?

周りを見渡すが目線の高さには敵がいない…

それは目線より下にいた。


ゴブリンだ。しかも1匹だと? 舐めてもらっちゃ困るぜ! これなら俺でも倒せ…


「総員ー! 馬車を守れーっ! すでに我々は囲まれている! ガッハッハー油断するでないぞー!

ゴブリン風情、100体如き目ではないわーっ!」


う、嘘だろ…俺達の周囲360°見渡す限りのゴブリン

絶対100体以上いる!


また、このアホ魔法使いとゴブリン退治するはめになるとは…

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