Chapter18 2人の帰る場所


どうあれ俺達は、モルゾイの捕獲に成功した。


こんなに大きな巨体をどうやって持ち帰るのかとミサに聞くと、どうやら腕の部分しか食べられないらしい

よく見ると、腕の部分だけは白黒のまだら模様で牛の要素がある。

恐らくカルミナは騎士が狩ってきたこの部分しか見た事が無かったのだろう。

鳴き声も誰かが適当に教えたとしか思えない…


「つーかさ、お前、完璧に使いこなせるのはテレポートですかね〜とかアホみたいな顔で言ってたじゃん! 全然使いこなせてないよ? よりによって俺のゼウスを飛ばしやがって!訴訟問題だぞこれ!」


「ゼウス...?? 神様の事ですか??」


「い、いや、なんつーか、神様の絵がかかれたシールだよ」

「あー、あのモルゾイの目に付いてた紙みたいなやつですねー、紙の神でまさに神業!

みたいな感じで良いじゃないですか。お互い無傷なんだしよしとしましょうよー☆」


誰がうまい事言えと

確かにゼウスのおかげでモルゾイを倒す事ができた

神に、いや紙か? 感謝せねば!


それから俺達はモルゾイから腕を切り取り城へと戻る事にした。なかなか重いが何とかいけそうだった。


「あ、着いたらすぐにパンツ履き替えろよー」

「わわ、わかってますよ! もう!」


他の魔物に襲われる事無く、無事に城の門まで帰る事ができた。門の前で数十名の人が俺達を待っているようだ。


「...? 誰だろう? カルミナ達かなー」

「....! あわわわ...ヤバいですぅ..絶体絶命です...」


誰であろう それは、ミサに嘘の集合場所を教えられた他の魔法騎士の方達だった。


「「ミィ〜〜〜サァァア〜〜〜!!」」

「ヒッ、ヒイィィイ..ゴメンなさぁぁーい...」


ミサは囲まれ、ボコボコにされている。

だが俺は助けない。これもまた優しさというやつだ!

チラッと横目で見ながらサッサと城へと入ろう…

通り過ぎる時、皆んな動きを止め俺に会釈をしていた

真面目で礼儀正しい方達なんだろうな。


早くカルミナの所へ戻ろうと早足で廊下を歩いていると、またあの男に会った。


「やぁー小田っちまた会ったね!」


ロアだ、天然のちょっとおかしい剣聖様だ


「あれー? 小田っちが担いでるのってもしかして、モルゾイじゃない? もしかして外に出るって言ってたのは、モルゾイを狩るためだったのかい?」


「あ、あぁ、カルミナに頼まれてな」


「しかし小田っちも強いだねーモルゾイ倒しちゃうとかさ、何人で討伐したんだい?10人とか?」


「ん? いや、2人だよ。俺と頭のおかしい魔法騎士」


「えっ! 嘘だろ...? 普通モルゾイ討伐といったら僕達騎士団でも5人編成だし、魔法騎士とかだと10人以上で討伐に向かうのが普通なんだけど...」


マジかよ! あのアホ魔法使いめ...下手すりゃ死んでたじゃねぇか。いや、死ねないのか。

あいつ1人でもチョチョイのチョイ的な事言ってただろ?

よし、今度ミサ1人に行かせてみるか。


「じゃ、じゃあ俺、カルミナの所に行くからさ」


「ああ、王にもよろしくね! あ、そうだ、今度は僕の団と一緒に魔物討伐行こうよ! 約束だよ!」


「あ、あぁ...こ、今度な」


長い廊下を抜け、カルミナの待つ王室の前に着く。

大きな扉を開けると、満面の笑みで迎えてくれる少女


「おかえりなさい 」

「あぁ、ただいま」


俺の人生の中で今が最も「生きている」と実感できた

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