Chapter6 王の覇気
皆さんはギャップ萌えという言葉をご存知だろうか。
よくある例としては、不良が良い事をすると善良な人間が同じ行動を行なった時より、相手に与える好印象が大きいといった所であろうか。
わたくし、小田 圭は痛感しております!
だってあの見た目だ、可愛らしい可憐な少女だよ?
背も小さいし、まだ顔も幼い。
それで、あの高圧的な態度…萌える。
しかし、俺がただのドMなだけじゃないのかよ!
という考えは辞めて頂きたい。その結論はまだ早い。
「も、申し上げます…! さ、昨晩、西の湖に地理の調査に出ていた第10騎士団がガルム帝国の者と戦闘になり、し、死者はでなかったもの…ほぼ壊滅状態に…」
1人の兵士がカルミナの前に出て来て片膝をついた。
少しカルミナに怯えているのだろうか震えていた。
「して、敵の勢力はどのくらいの数だったのだ?」
カルミナは少し前のめりになり兵士の顔を覗き込むような形で話を聞く。
「え…っと…あの…」
兵士はカルミナの目力に耐えられなくなり、目を逸らしうつ向いてしまった。
「ハッキリ答えんか!!」
カルミナは業を煮やし、脚を組みドッシリと座ったまま、怒号を飛ばす。
「は、はぃぃ!…報告によると…ひ、1人であったそうですぅ!」
兵士は大汗をかきながら、目を合わせる事なく、声を絞り出すように答える。
「ほぅ…貴様はふざけておるのかな…?」
「い、いぇえ!!そ、そのような事は…」
兵士は再び顔を上げ、カルミナの目を見て自身の話が嘘で無いと言わんばかりに目で訴える。
「フン、わかった、騎士の怪我が回復したのち、第10騎士団団長を私の前に連れてこい! いいな!」
カルミナは兵士から視線を外し、椅子に深くもたれ掛かるような姿勢で目を閉じた。
「は、はぃぃいー!!」
兵士はすぐさま立ち上がり、カルミナに一礼した後、
走って自分の持ち場に戻って行った。
な? 叱られてみたいだろ?
健全な男子諸君ならわかってくれるはずだと、
俺は信じている。だがマゾではない!
「この者の他に報告のある者はいるか!」
カルミナは再び目を見開き、周囲を見渡し叫んだ。
一同は黙り込んでしまった。
「いないのであれば私から、皆に報告がある、K!こちらへ来い!」
椅子からゆっくりと立ち上がり、俺に視線を向けた。
推定中学生に、来い!と言われ素直に従う23歳。
こんな姿、親が見たら泣くぜ!
心なしか皆に睨まれている気がする…
片膝をついた皆の視線を背中に浴びながら前へ立つ。
「この者は名を小田 圭と言う! 私の婚約者だ!
なお、待遇は王家の者と同等とする! いいな!」
前に立った俺の元にカルミナは歩み寄り、俺の肩に手をポンと置いて、皆に言い聞かせた。
ん? えぇぇぇー! いきなり何言い出すんだ!
やっぱり俺にも心の準備というものが。
「お、お待ち下さい!王ともあろうお方がこのような…」
1人の騎士のような格好をした男が立ち上がり、少し汗をかきながら意見した。
「何か異論があるようだな! 私の前に立ち、意見を述べてみよ!」
カルミナは俺の肩から手を離し、騎士の目を見て凄むように話す。
何だろう、カルミナの背後から見えてはいけないような、オーラのような物が見える。
「い、いぇ…ございません…」
騎士はすぐに目をふせ、すぐさま片膝をついた。
恐怖からか、騎士は少し震えている。
異論? いや、あるよ! あるに決まってる!
婚約者? そんな話し聞いてないぞ!
いくら何でも話が飛び過ぎている。
カルミナの意図を探ろうと、ヴァイスさんを見る。
一瞬目があったと同時に、光の速さで目を逸らされてしまった。
多分ヴァイスさんもいきなりの事で事態が飲み込めていないのだろう。
しかし、何かに怯えているようにも見える。
カルミナに…? そんな、まさか。
「では、私は王室に戻る! 各自持ち場に戻れ!」
カルミナの戻れの一声で、その場に片膝をついていた大勢の人間が、ハッと言う掛け声と共に立ち上がり、ゾロゾロと部屋を出て行った。
やはりオーラが見える…目が疲れているのだろうか、
色で例えるなら薄い黄色のモヤみたいな物だ。
「Kっ!」
「ひゃい!!」
思わず声が裏返ってしまった///
「私に着いて来て。」
カルミナはくるりと身を翻し、歩き出した。
長い廊下を歩いている間、カルミナは一言も喋らなかった。
しばらく歩くと、その先にカルミナの王室があった。
扉を開くとそこは、豪華絢爛の一言に尽きる。
スイートルームてやつだ! いや、スイートルームなんて泊まった事はないけど、スーパースイートだ!
カルミナと俺は2人きりになった。
俺はカルミナの意図を探るべく色々と質問をする事にした。
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