Chapter7 クラウンネーム
何から聞けばよいものか…
カルミナには色々と聞きたい事が多過ぎる。
俺は考え事をする時、ついポケットに手を入れてしまうという癖がある。 手を入れた瞬間、何かに触れた。
ん? …こ、これは!
この四角い感じ! 間違いない、スマホだ!
確かに家を出た時には俺はスマホを持っていた 。
異世界でスマホ…これでチート確定。はい、俺最強。
某モテモテハーレム、スマホ使い主人公には負けない!
「ククク...カルミナよ…これが何かわかるか〜?
とくと見…?…え?」
俺はポケットから取り出した物をカルミナに見せ付けるように高々と掲げた。
ビックリ○ンチョコである。
どこからどう見てもビック○マンチョコだ!
伏字にしたら、いやらしく見えるのは気のせいだ。
何でだよ! いい歳してこれは自分では買わないよ!
だ、誰なんだ…スマホとビックリマン○ョコをすり替えたやつぅぅう!
ビリッ あ、ゼウス出たし。
「ねぇねぇーそれ何ー? なんか甘そうないい匂いするね、食べられるのー?」
カルミナは興味深々に人差し指を口に当て、こちらを見ている。
「あ、ああ、これはビックリ……チョコレートとナッツをウエハースで挟んだものだよ、甘くておいしいからカルミナにあげるよ。」
俺は包み紙を外し、中のウエハースをカルミナに手渡した。
「ナッツは木の実だよねぇ、チヨコ? ウエハス? は、よくわからないけどぉ…いただきまーす!」
カルミナは不思議そうな顔でウエハースをぐるりと見回した後、小さな口で一口かじる。
俺はゼウスは渡さんとばかりにポケットにしまう。
「あまぁ〜い! こんなの初めて食べたよぉ、 このウエハスの食感が面白いねぇ。」
カルミナが元々大きな目をさらに見開き、手をブンブン振って、おいしさを表現している。
「あ、あのさカルミナ、さっきの婚約者てのはどういう事なんだ? いや、仮にもカルミナまだ14歳ぐらいじゃないのか?」
俺は腕を組み、少しカルミナの視線を外しながら聞く。
「むぅぅぅ〜私これでも16だもん!結婚できるもん!
あ、でもね、婚約というのはちょっと冗談。
Kには、私を側で守って欲しいの、今私達がいるこの部屋は王室なのね、王室にはイルム家の者しか入ってはならないというしきたりがあって、Kをここに入れるには婚約者しかないなって思い付きでみんなに嘘ついちゃった…ごめんなさい。」
頬を膨らませ、前のめりになって少し怒った顔を見せた後、真面目な顔になり、最後は申し訳無さそうに俺に手を合わせて、頭を下げていた。
俺のトキメキを返して下さい。
これは軽い婚約詐欺です! 弁護士さーん!
涙が溢れないよう俺は上を向きながら質問を変える。
「そ、それは分かった! と、ところで俺と話す時は普通の女の子の喋り方なのに、他の人にはあんなキツい喋り方なんだ? やっぱり王としての威厳…か?」
話を変えようと、俺は少し焦り気味に話題を変えた。
カルミナの顔が赤い。
聞いちゃダメなやつだっか?
「あ、あのね、あれは簡単に言うと能力みたいな物なの。 ある日を境に神様から与えられた...
この世界ではクラウンネームと呼んでる。
[覇気]カルミナ レオ イルム、これが私の名前。
クラウンネームは称号に近いかもしれないね…
でもこの能力は私の意思など関係無く、つねに発動してしまうの。 この王の[覇気]があるからこそ、うまく国を治められているの...…
でもね! Kには[覇気]が効いてないのっ、 だから、私普通にお話しできるのが嬉しくてっ。」
カルミナは少し頭を下げ、目を合わせる事なく体をモジモジとさせていた。
そして顔を上げ潤んだ目で俺の目を見つめていた。
だいたい分かった 、このクラウンネームとかいう力、
[覇気]の能力にさらされた者はカルミナを絶対的な王として見えてしまうのだろう。
「もしかして、そのクラウンネームを持った奴ってカルミナ以外にもまだいるのか?」
俺はカルミナから目線を外さずに続けて聞いた。
カルミナは無言のまま小さく頷いた。
俺には、どこか悲しげな顔をしたただの1人の少女にしか思えなかった。
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