「欲望の翼」×「メイド・イン・ホンコン」

今日はひたすら香港映画の話を。


先ずウォン・カーウァイ監督の「欲望の翼」を映画館で見た話から始めたい。

この映画は元々香港では1990年、日本では1992年に公開された。

日本での上映権はしばらく切れていたのだが、最近とある配給会社のおかげでまた国内での上映が可能になった。

都内では先ず2月頃に渋谷ルシネマで公開され、3月末からキネカ大森での公開が始まった。デジタルリマスター版である。

私は敢えて4月1日、主演レスリー・チャンの命日に劇場に足を運んだ。

キネカ大森は以前、アジア映画専門館として香港映画をよく掛けてくれていた。

なんとなくその頃を思い出し、時間が巻き戻ったような、懐かしい気持ちで椅子に座った。

何度も何度も数えきれない位足を運んでいる映画館だけれど、香港映画が好きであの頃を知っている身としてはちょっと特別な思いがある瞬間であった。

その一方で私は欲望の翼はDVDでしか見ておらず実は映画館で見るのは初めてだったのである。

そのため懐かしい気持ちと新鮮な気持ちが混ざった不思議な感触で映画を見た。

女にだらしのない男ヨディ、彼に惹かれる2人の女、スーとミミ。

ミミに惹かれるヨディの親友、スーに惹かれる警察官…1960年代を舞台に彼らの恋模様と感情の揺らぎを描いている。


もし、この映画を名画座2本立てで見るのならどの映画とセットにするのが良いだろうか。やはりウォン・カーウァイ作品が無難だろうか。


私はやはり最近同じようにデジタルリマスター版が久しぶりに上映されたフルーツ・チャン監督の「メイド・イン・ホンコン」が良いなあ、とふと思った。

昨年、東京国際映画祭でやはり久しぶりに鑑賞して改めて良さを思い返していたところだ。

チンピラ崩れの青年チャウとその手下のロン、病弱な少女ペン。返還前の香港を舞台にとても切なく痛々しい青春を猛スピードで撮っている。


どちらの作品も「昔の香港」を舞台に、ある種の「喪失」を非常に独特な色合いで描いているのだ。

そしてどちらも時間を忘れる、色褪せない名作なのである。

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