「明日君がいない」×「スイス・アーミー・マン」

今秋、ネット心中に纏わる悲しい事件があった。連日の報道に辟易する中、今回は私が素人なりに真面目に「生きること」について考えて選んでみた2本である。


「明日君がいない」×「スイス・アーミー・マン」


「明日君がいない」は2006年公開のオーストラリア映画だ。

ある日の午後2:37。

高校の施錠された部屋で誰かが自殺した。

ドアの隙間から廊下に血が流れてきた事でその事が判明するのである。

では、亡くなったのは誰なのか。

優等生とその妹、先天性の障害がある転校生、ゲイであることを宣言している男子学生等、幸せな恋愛を欲しがる少女、体育会系の少年。この計6人の学生のその日の2:37に至るまでの行動とインタビューを中心に構成されている。

青春群像劇にドキュメンタリーテイストを加えた面白い試みの映画だ。

皆、それぞれ苦しみを抱えながら生きている。

誰かにそれを話せれば少しだけ楽になれるかもしれない。

しかしそれがなかなか上手くいかない事もある。

自分の苦しみと他人の苦しみ。

その両方がせめぎあっている時、どうすれば良いのか。

それを問い掛けて来る映画だ。

もっとあなたと話しておけば良かったのではないか。そう思ってしまう結末だ。


「スイス・アーミー・マン」日本では2017年に公開されたアメリカ映画で、ダニエル・ラドクリフが死体役を演じた事で話題となった。

無人島で絶望していたハンクという青年が、偶然目の前に流れてきた死体を利用して無人島を脱出。

その後の過酷な旅の中で死体と友情を育んでいく。

そんな荒唐無稽なストーリーをどこか美しくリリカルな映像で魅せてくれる。不思議な映画である。

ハンクは父との不和があり、報われぬ片想いをしていた。しかもとても過酷なサバイバルを強いられるのだ。それでも必死に前に進む。

最初、彼は無人島で余りの辛さに耐えかねて自殺しようとしていた。

しかし死体との出会いで無人島を抜け出せた事をきっかけに彼は変化するのだ。

コメディタッチのサバイバルを見ていると、生きて思考する事の面白さや強さについて考えさせられる。


生きることは時に辛い。

しかしこの2本の映画を見た後に、身近な人と会ったら。なんとなくいつもよりちょっとだけ一生懸命話をしたくなるかもしれない。

例え少し面倒でも辛くても。

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