「メトロポリス」×「シン・ゴジラ」

※今回の記事はテーマの都合上、映画のラストシーンに触れている事を先にお断りしておきます。


以前新橋に新橋文化劇場という名画座があった。

新橋駅から浜松町側に少し歩いた高架下にピンク映画専門館と共にあったのだが、耐震工事を理由に2014年夏、閉館した。

上映中に劇場の真上を走る電車の音が響いてくる、とても古い映画館だった。

最後に新橋文化劇場で上映されたのは「タクシードライバー」と「デス・プルーフinグラインドハウス」の2本。

「タクシードライバー」は、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の名作映画のひとつである。

この映画を見たことがある人はイメージして欲しい。

あのラストシーン、夜の街と共に古い映画館が終わっていく姿を。とてつもないロマンと切なさを感じないだろうか。


そしてもうひとつ。名画座ではないが以前シネマート六本木という映画館がその名の通り六本木にあった。アジア映画中心の映画館で、最後の1ヶ月程はずっとアジア映画の過去作を中心にした特集上映をしていた。

最終日に上映された幾つかの作品のひとつが「さらば我が愛」であった。

あのラストシーンの刃物と共にひとつの映画館が終わる。

これもまた終焉にぴったりのセレクトだったように思う。


長い前置きになった。


今回は「閉館する名画座の最後に組みたい2本立て」というテーマで選んでみようと思う。

もし自分が本当に「閉館が決まった映画館のスタッフ」だったら。

長い歴史の中で客入りが良かった作品。

古い映画館の最後に相応しい名作。

ラストシーンが印象的な作品。

どういう基準で選ぶか色々と考えてみる。


私は「メトロポリス」×「シン・ゴジラ」の2本立てを組みたいと考えた。


「メトロポリス」は1927年公開のフリッツ・ラング監督によるドイツ映画だ。

未来都市での支配階級と労働者階級の落差を描いたディストピア映画である。


「シン・ゴジラ」は2016年公開の、庵野秀明監督による大ヒット映画だ。

ニッポン対ゴジラ。

このようなキャッチフレーズで以てゴジラに立ち向かう人々を描き切った。


この2本に共通点があるとするなら「都市の破壊と再生」である。


「メトロポリス」ではマリアという女性のアンドロイドに人々が振り回され、労働者階級の住む場所が水没するが最後には支配階級と労働者階級が「心」により和解する。


「シン・ゴジラ」も都市を破壊するゴジラと戦い、活動停止させる事に成功する、そんなストーリーだ。

竹野内豊演じる赤坂の「スクラップ&ビルドでこの国は成長してきた。また立ち直れる」という台詞に象徴されるように、破壊からの再生という希望を持たせた終わりになっている。


終焉と再生。


もし名画座の最後に立ち会うのなら、そんなテーマを含むこの2本を上映したい。

古い映画館がスクラップされる瞬間に立ち会ったお客さんには、他の映画館で新たな名作と出会って欲しい。

そんなメッセージをこめて。

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