「夜は短し歩けよ乙女」×「パイレーツ・ロック」

流石に今回はホラーから離れた2本を組んでみよう。


もし名画座の2本立てを組むとしたら。

またはオールナイトイベントを組むとしたら。

シリーズ物で縛る、監督で縛る、俳優で縛る、製作スタジオで縛る、ジャンルで縛る、テーマで縛る。

こういったところで組んでいくのがやはり安全である。

ライブハウスでロックバンドを集めたイベントをやるとしても、やはりジャンルや事務所、バンド同士の繋がり等を考えてブッキングするものだ。


しかし私は今回全く接点の無さそうなこの2本を組んでみたい。


「夜は短し歩けよ乙女」×「パイレーツ・ロック」だ。

敢えてこの2本を組みたい、それには理由がある。


「夜は短し歩けよ乙女」は2017年春に公開された湯浅政明監督によるアニメ映画である。

原作は森見登美彦の人気小説、星野源が声優を務めた。

お酒を愛する黒髪の乙女がひたすらカラフルな京都の街を歩き続ける、そんなポップなストーリーだ。


「パイレーツ・ロック」は2009年公開のイギリス・ドイツ合作の音楽映画だ。監督はリチャード・カーティス。

違法な海賊ラジオのDJ達と生活を共にすることとなったカールという少年の話である。なんと突然大きな船の上で暮らすのだ。


一見全く共通点の無い映画だが、どちらも青春映画として楽しく見ることが出来る。


丁度少年少女から青年になっていく年頃の若者が、自分の今いる環境と自我をコネクトさせ成長していく。


そしてどちらも「お酒」が印象的に使われている。

「夜は短し~」の黒髪の乙女はその見た目からは想像のつかない程の酒豪であり、沢山のお酒を飲み込みながらふわふわと夜の京都を歩いて行く。

「パイレーツ・ロック」も、少し短いシーンではあるが仲間の結婚祝いに船から降りて街中で一晩中飲み歩くシーンがある。

私はそのシーンがとても好きだ。

いい大人達が若者を連れてそれはそれは楽しそうに酔いどれながら夜の街を歩く。


黒髪の乙女もカールも、それぞれふんわりと自分のいる世界を生きている。

それは京都の街や、船の上という形の旅路である。


その旅路の中で、黒髪の乙女と先輩の関係、カールと未だ正体のわからぬ父親との関係がそれぞれどういう結末を迎えるのかをきちんと見届けたくなる映画だ。

見終えた後、どちらも決して暗い気持ちにはならない。

その点でも似た映画なのではないかと思う。

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