「ドリーム・ホーム」×「箪笥」

ひとつ前の記事でアジアンホラーについて取り上げたので今回もアジアンホラーから2本選ぼうと思う。


「ドリーム・ホーム」と「箪笥」の2本だ。

なかなかパンチの効いた2本である。


「ドリーム・ホーム」はパン・ホーチョン監督による2010年の香港映画だ。日本では今は亡きシアターNというやたらホラーに強いミニシアターで公開された。

女性銀行員チェンが高級マンションの住人を片っ端から血に染めていくスプラッタ映画である。

Googleで検索すると「スラッシャー映画」とカテゴライズされている。

主役は殺人鬼。

チェンは兎に角躊躇い無くマンションの住人をガンガン殺していく。

夢と希望の詰まった高級マンションが血糊に汚されていくその様は、見ているだけで息が詰まりそうになる。ひたすらえげつない描写が続くけれど、この映画の良いところは短いという点です。

こういう映画に必要なのはスピード感だから。

気付いたらあなたも彼女と一緒に最後まで走り抜けたような気持ちに…ならないかもしれない。


「箪笥」はキム・ジウン監督による2003年の作品だ。

美しい姉妹が新しく引っ越した一軒家で体験する恐怖を描いていて、サスペンスやサイコホラーのテイストを含む。ヒステリックな雰囲気で見ている側の恐怖を煽ってくる。

解釈について、見た人とあれこれ意見を交換したくなる映画だ。

伏線のようなものがそこかしこに張り巡らされており、ある程度真剣に見ないとついていけなくなってしまう。むしろ真剣に見ていても最後には「えっ」となる人もいるかもしれない。

決して流し見を許さない、ひたすら人に緊張を強いる1本だ。


この2本の共通点は「家」だ。


かたやそれは器としての家、かたや家族という意味での家。


この2本を続けて見た後、恐怖に神経を擦り減らされつつもその一方で「人に取って住む場所の意味とはなんなのか」そういう事についても考えたくなるのではないだろうか。

「館モノ」という言葉があるように、家や建築を題材にしたホラーやミステリーは多い。日本映画なら呪怨が有名だが、海外映画なら死霊館やシャイニング、ドラマではあるがアメリカンホラーストーリー等が挙げられる。


家とは良くも悪くもその人のルーツ、基礎となる。家を題材にしたホラー映画はその人の基礎を揺さぶってくる。そしてその結果、夜中にトイレに行けなくなるのだ。

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