アリ得ないほど強いアリ ⑤アリを飼う植物たち
※文末に今回の「まとめ」を掲載しています。
読みにくい文章に耐えられない方は、一番下まで画面をスクロールさせて下さい。
アリの秘密に迫る今回のシリーズ。
前回はアリと生活を共にする昆虫を紹介しました。
強いアリを頼っているのは、昆虫だけではありません。
植物の世界にも、彼等を利用しているものたちが存在します。
中米に生えるアリアカシアも、アリを活用する植物です。
アカシアはマメ
主に暖かい地域に生える木で、多くの
アリアカシアのトゲは特に大きく、長さは5㌢以上もあります。
そして彼等はこのトゲに、アカシアアリと言うアリを飼っています。
両者の奇妙な関係は、女王アリがアリアカシアに飛来するところから始まります。
彼女はトゲに穴を
続いて産卵を行い、働きアリの数を増やしていくそうです。
仲間が多くなり、「部屋」が手狭になると、アリは別のトゲにも移り住んでいきます。やがてアカシアアリは木全体に広がり、アリアカシアはそれ自体がアリの巣になります。
多くの植物にとって、アリは好ましいとは言えない存在です。
ヒアリのように植物を食べるアリ(正確には雑食ですが)は、葉や茎を傷付けます。
病気の原因となるアブラムシを守るのも、由々しき問題です。
とは言え、単純に害虫と言うことも出来ません。
肉食のアリは、植物を食べる虫を駆除してくれます。
殺虫剤が出来る以前は、害虫駆除にも利用されていたようです。
アカシアアリもまた、アリアカシアに来る害虫を補食します。
更には家主の生育が悪くならないように、周辺の植物を刈り取る活動まで行っています。草むしりの度に文句を言うのび太くんには、彼等を見習って欲しいところです。
アリアカシアはアリの働きに、甘い蜜で
咲く期間の限られた花とは異なり、
アリアカシアのようにアリを棲まわせている植物は、「アリ
残念ながら日本では見付かっていませんが、アリ
東南アジアに生えるアリノトリデも、アリ
彼等はアカネの仲間で、他の木の枝や幹にくっついて生活しています。
一見すると他の木から栄養を奪っているようですが、彼等は寄生植物ではありません。
彼等に栄養を提供しているのは、体内のアリです。
アリノトリデの茎は、底の部分がボール状に膨らんでいます。
大きさは最大60㌢程度で、小さなトゲが生えているのが特徴です。
ボールの中には迷路のような空洞があり、アリが暮らしています。
迷路はまさに天然のアリの巣で、部屋のように大きな空間も兼ね備えています。
アリの出した食べ残しやフンは、アリノトリデの栄養になります。
アリの側としても、
同じく東南アジアに生えるアリノスシダも、内部にアリを棲まわせています。
彼等はシダ植物の一種で、大きな木にくっついて生活しています。
やはり茎の下の部分が膨らんでいますが、トゲはありません。
またボール状ではなく、幾つもの玉を合体させたような形をしています。
正直、
アリノトリデ同様、茎の内部は迷路状で、アリの巣になっています。
さて5回に渡ってお届けした「アリ」シリーズ、お楽しみ頂けたでしょうか。
今回は紹介しきれませんでしたが、世界にはまだまだ面白いアリがいます。
機会があればまた取り上げたいと思いますので、期待せずにお待ち下さい。
◇今回のまとめ◇
☆中米に生えるアリアカシアは、トゲの中にアリを棲まわせている。
☆アリを棲まわせている植物は、「アリ
☆東南アジアには、アリノトリデと言うアリ
☆アリノトリデの内部は迷路状で、アリが暮らしている。彼等の栄養になるのは、アリのフンや食べ残し。
☆アリ
☆東南アジアには、アリノスシダと言うアリ
参考文献
アリの生態 ふしぎの見聞録
―60年の研究が解き明かすアリの素顔―
久保田政雄著 (株)技術評論社刊
徹底図解 昆虫の世界
岡島秀治監修 (株)新星出版社刊
トンデモない生き物たち
白石拓著 宝島社刊
おどろきの植物 不可思議プランツ図鑑
食虫植物、寄生植物、温室植物、アリ植物、多肉植物
木谷美咲著 (株)誠文堂新光社刊
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