第19話 覚悟が決まらない。【彼】

彼女から返信が来た。今度会おうと。ちょっと意外だった。今、その待ち合わせ場所に向かっている。フードファイターの彼女からのLINEがくる。夜は彼女と会う予定だ。メッセージを見ながら、嬉しい感情を再度確認した。今日は彼女にちゃんと別れを言わないといけないから。


「久しぶり!」


店の前で彼女に会った。去年も見たキャメルのコート。けれど、その表情ら去年と違ってスッキリしていた。


あれ?彼女こんなに綺麗だったっけ?


二カ月ぶりの彼女が何故かとても綺麗に見えた。キャメルのコートが秋の青空によく似合う。


席について少し話した。何気ない会話。何故か俺はそわそわしていた。いや、ちゃんとわかっている。俺は動揺している。急に、ひどく、彼女と別れることがもったいない様な気分になったのだ。コートを脱いで丁寧に置く仕草、俺の話をちゃんと聞いてくれる態度。そう、彼女は自分の意見を押し付けたりしない人だった。


こんな気持ちになるなんて思わなかった。好きだという思いで付き合ってたわけではないはずだ。なのに俺はフードファイターの彼女からのメッセージを見て何かを確認したい気がした。スマホを取り出すと彼女が言った。


「俺たち別れよう、でしょ。言いたいの。」


彼女から言わせてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る