第13話 すれ違う。【彼】

彼女からの連絡が途絶えた。具体的にいうと誕生日の「おめでとう」の文字から。


どう考えても原因はあの日だった。もしかしてブログに出たかったのだろうか。いや、彼女はそういうタイプではないはずだ。けれど、ほかに理由が見つからなかった。


「もしかして、ブログ出たかった?」と送ってみたけれど、まだ答えはない。


彼女のことがわからなくなっていた。まぁ、元々わかっていたのかと聞かれるのなんとも言えないけれど。会ってもつまらなさそうにしていることが、とても増えた。


「それでいいぞ。」


フードファイターの彼女がカルビをほうばりながら言った。二回目の打ち合わせ。今度二人である企画を撮影することになったのだ。


焼肉は食べ放題の店にした。一回目で懲りたからだ。彼女はカメラの前以外でもめちゃくちゃ食べる。フードファイターってこんなものなのだろうか。5人前くらいは食べるのに夕食だけで3軒回ったりするのだ。ただ奢ってはいない。奢るべきかと思ったけれど、「自分の食べる分は自分で稼ぐがモットーなんで。」と断られた


彼女はとても美味しそうに食べる。吸い込まれていくかのように食べるのに、撮ってない時はちゃんと味わっているそうだ。見ていると面白いくらい吸い込まれていく食事に楽しくなる。現に今も、彼女はご飯にひたすら集中してるが俺は飽きもせずそんな彼女をみていた。なぜ彼女の動画が人気なのかわかる。目のBGMのような気がする。popな。


「ごちそうさまでした。」


「あれ?まだいけますよね?」


「食べ放題の店では10人前までって決めてるんだ。ゴジラみたいに店を潰していきたいわけじゃないし。」


その言い方の素っ気なさに笑ってしまった。


「二軒目は行かれますか?」


「カレーが食べたい。焼肉の後って食べたくならない?」


「普通焼肉の後にさらにご飯は食べないですよ。でも頑張ってみます。」


「もう付き合わなくて大丈夫だよ?」


「見てるの楽しいんで。」


変わったやつだな、と言いながら彼女はそそくさと店を出ると支度を始めた。それを見ながら彼女がゴジラにならないくらい、ちゃんと稼ぎたいと何故か思っていた。

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