第9話 本質が出る。【彼】

今日も調子があまり良くないようだ。隣にいるおっちゃんも渋い顔をしている。


「なんや〜!この新機種、とんだ暴れ馬やで!!」


確かに。ここ数日、この新機種の攻略に二人がかりで取り組んでいるが中々掴めない。


周りを見渡してもあたりが出ている人はあまりいない。この機種自体がハズレだろうか。


「ちょっと休憩しますね。」


ただお金を継ぎ足すことにあまり意味はない。コーヒーを買って飲みながら散策してみる。


一人、この機種で当たりを出している人がいた。金髪で黒のタンクトップから出た腕には龍の刺青が入っていた。足を台に乗せてかったるそうに打っている。


「すごい!この機種で、まだ俺は当たりを出したことないんですよ!」


あぁ?と男は睨むように見上げてきた。話しかけちゃいけなかったかな。


「俺、この機種で当たり出してみたくて。どうすればいいのかなと思ったんです。」


男は吸っていたタバコの煙をゆっくりとはいた。


「この機種さぁ、ちょっとしたやり方があるんだよぉ・・・」


舌足らずな喋り方だった。





「あんちゃん!いい情報がはいりましたよ!」


「おぉ・・・」


「どうしたんです?結構レアな情報だと思うんですけど?」


「見とったわ。」


「え?」


「にいちゃん、ちょっと警戒心がなさすぎちゃうか?俺でもようけ声かけへんで、あんな奴。あっちの人やったらどないすんねん。」


いつもはこれでもかってほどに声がでかいのに、急に声をひそめるから、俺はおっちゃんの近くに耳を傾けなければいけなかった。


「だって、この機種で当たりを出してる人初めてじゃないですか。それに、彼、あんなにかったるそうなのにタバコの煙は人がいないところに向かって吐いてましたよ?」


「ものすごいバカか、ものすごいお人好しか。ってどっちもバカやないか!!あーアホらしっ!!で!なんやねんその情報とやらは!!」


いつものおっちゃんに戻った。俺は意気揚々と彼から聞いた情報を伝えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る